金曜日, 7月 18, 2025
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ホーム自動化第二次産業革命期が「大平等の時代」だったとすれば、コンピュータ革命が始まってからの現代は、「格差拡大・下をめざす競争の時代」の到来だ! - カール・B・フレイ・著『テクノロジーの世界経済史 ビル・ゲイツHalo Halo

第二次産業革命期が「大平等の時代」だったとすれば、コンピュータ革命が始まってからの現代は、「格差拡大・下をめざす競争の時代」の到来だ! – カール・B・フレイ・著『テクノロジーの世界経済史 ビル・ゲイツHalo Halo

🧠 概要:

概要

この記事では、カール・B・フレイの著書『テクノロジーの世界経済史』をもとに、テクノロジーの進歩が人間の仕事や社会経済に与える影響についての対話が紹介されています。特に、産業革命と現在のコンピュータ革命の違いや、それに伴う労働市場の変化、格差の拡大などについて論じられています。

要約(箇条書き)

  • テクノロジーと仕事の関係:

    • 技術の進歩は過去から現在にかけて、人間の働き方に影響を及ぼしてきた。
    • 「補完技術」(労働を助ける技術)と「置換技術」(労働を代替する技術)が存在する。
  • 産業革命の影響:

    • 産業革命時には「置換技術」が多く導入され、職人や中間所得層が仕事を失った。
    • 新しい職場はすぐに見つからず、低賃金の単純作業が多かった。
  • 第二次産業革命の「大平等」の時代:

    • 新しい産業が生まれ、賃金が上昇し、多くの人々が中流に移行した時期。
    • 生産性が向上し、労働者が利益を享受できる構図。
  • 現代の格差の拡大:

    • コンピュータ革命は「労働置換型」に変わり、所得格差が拡大している。
    • スキルのある人とない人での賃金差が顕著になり、低スキル職は減少。
  • 社会問題の浮上:

    • 所得減少が原因で、犯罪率上昇や健康問題が発生。
    • 自動化が進む中で「エンゲルスの休止」が再来している。
  • 未来への懸念と対策:

    • 技術が「労働補完型」か「労働置換型」になるかが鍵。
    • 教育の重要性と、新しいスキル習得の必要が強調される。
    • ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)などの提案が検討されているが、実現には政治的な課題がある。
  • 歴史からの教訓:
    • 過去の技術進歩の歴史を振り返ることで、現代の状況や未来の方向性を理解できる重要性を訴える。

第二次産業革命期が「大平等の時代」だったとすれば、コンピュータ革命が始まってからの現代は、「格差拡大・下をめざす競争の時代」の到来だ! - カール・B・フレイ・著『テクノロジーの世界経済史 ビル・ゲイツHalo Halo

奈美: ねえ、翔平くん。最近ニュースとかで「自動化で仕事がなくなる」とか「AIが人間より賢くなる」とか、ちょっと不安になる話を聞くんだけど、どういうことなのかな?

翔平: うん、奈美さん。まさに今読んでる本に、テクノロジーが社会や経済にどう影響してきたか、すごく詳しく書かれているんだ。 この本は「テクノロジーの世界経済史」っていうタイトルで、歴史を振り返りながら、今の状況を理解するためのヒントを与えてくれるんだよ。

奈美: 歴史から学ぶんだね。昔も今みたいなことがあったの?

翔平: そうなんだよ。 歴史を振り返ると、テクノロジーの進歩は、人口のかなりの部分が生計を脅かされるたびに、激しい抵抗に遭ってきたんだ。 この本の著者は、未来の歴史家が「なぜ人類は過去から学ばないのか」とふしぎに思うかもしれない、と書いているくらいだよ。 現代でも、人工知能(AI)やロボット工学、センサー技術なんかによって、コンピュータが幅広い仕事、それもほんの数年前までは人間でなければできなかったような仕事をこなせるようになってきていて、また抵抗が起きそうな気配になっているんだ。

奈美: へえ、そんなに昔から抵抗があったんだ。どうして抵抗が起きるんだろう?

翔平: それはね、技術が進歩する中で、人間の労働を「助ける技術」と、人間の労働に「置き換わる技術」があるからなんだ。 この本では前者を「補完技術」、後者を「置換技術」って呼んでるんだよ。 例えば、望遠鏡が発明されたとき、天文学者はこれまで不可能だと思ってた新しい研究ができるようになったけど、大勢の労働者から仕事を奪うようなことはしなかったよね。 こういうのが「補完技術」だ。

奈美: ふむふむ。

翔平: それに対して、自動織機なんかは、それまで手で織っていた織工にそのまま置き換わっちゃう「置換技術」なんだ。 やっぱり、自分の生計を脅かされる技術には激しく抵抗するよね。 だから、人間に置き換わるような資本財を生み出す技術は反発を招きやすいと考えるのは理に適っているんだ。 どんな技術も、普及するかどうかは人間の意思決定次第だから、自分の仕事が奪われると抵抗する集団がいれば、その技術の導入はスムーズには進まないんだ。

奈美: なるほど。じゃあ、産業革命のときも、そういう「置換技術」がたくさん出てきたの?

翔平: まさにそうなんだ。 この本によると、産業革命を誕生させた技術のほぼすべてが「労働置換型」だったんだって。 産業革命の本格的な始まりは綿織物だったんだけど、機械化された工場が、それまで職人たちが家でやっていた「家内手工業」に取って代わるにつれて、昔ながらの「中程度の賃金の仕事」はどんどんなくなっていったんだ。 それまで高いスキルを持っていたイギリスの職人たちは、まずまずの賃金を稼いでいたのに、工場が出現すると所得が消滅してしまったんだよ。

奈美: それは大変だね。新しい仕事はなかったの?

翔平: 工場に新しい働き口はあったんだけど、初期の工場でできた仕事は、ほとんどが紡績機の下を這い回って糸くず掃除をするような、子供でもできる単純な作業だったんだ。 子供は、大人の数分の一の賃金で働かせることができたから、労働人口に占める子供の比率が高まっていったんだよ。 この本では、産業革命においては子供が現代のロボットの役割を果たしたんだって指摘しているんだ。

奈美: 子供がロボット?

翔平: つまり、ごく小さいうちから働く子供たちは交渉力もなくて、経営者から見れば実に扱いやすい労働力だったということだね。 機械化が進むにつれて、職人のスキルは完全に時代遅れになって、成人男性の労働者は窮地に陥ったんだ。 所得が激減したり、低賃金の仕事への転職を強いられたり、最悪の場合は失業したりと、労働者階級に押しつけられた社会的費用は膨大だったらしいよ。

奈美: それを聞くと、ラッダイト運動みたいに、機械に抵抗したくなるのも分かる気がするね。

翔平: そうだよね。 産業革命初期のこの時期は、「エンゲルスの休止」として知られているんだ。 イギリス経済全体は飛躍を遂げたんだけど、多くの市民の家計の見通しは悪化して、経済成長の恩恵が一般の人々にはごくわずかしか滴り落ちてこなかったんだ。 中間所得層の職工の仕事が減る一方で、資本家の利益率が倍増したから、産業革命の果実は資本家の懐に入ったとも言われているんだよ。

奈美: やっぱり、技術の進歩って手放しで喜べるものじゃないんだね。

翔平: 難しいところだね。 ただ、技術への抵抗はイギリスの産業革命に限ったことじゃないんだ。 この本を読むと、古代ローマのウェスパシアヌス帝が労働置換技術の導入を拒んだり、中世ヨーロッパの多くの都市で自動織機が禁止されたり、中国でも輸入ミシンが打ち壊されたりした例が紹介されているよ。 こうした時代の支配階級は、労働者が困窮して暴動を起こし、反政府分子になることを恐れて、労働者のスキルを脅かすような技術、つまり「労働置換技術」の導入を阻み、ときには禁止したんだ。 政治権力者が技術の進歩から得るものより失うものが大きいと感じるこうした状況が、西洋を長い間「テクノロジーの罠」に閉じ込めていたんだと、この本では考えられているんだ。 千年にわたって経済成長が滞っていた理由の一つがこれだと言われているよ。

奈美: じゃあ、どうしてイギリスだけは産業革命を進めることができたの? 他の国は「テクノロジーの罠」から抜け出せなかったってこと?

翔平: その通り! そこがイギリスの特殊性なんだ。 この本によると、イギリス政府は、労働者ではなく機械化の側についた最初の政府だったんだ。 機械化に対する抵抗運動は例外なく鎮圧すると早期に決定したんだよ。 こういう決定が下されたのは、政治権力を持つ集団が変わったことが大きな原因だとされているんだ。 アメリカ大陸の発見で国際貿易が盛んになって、工場機械化で利益を得る商人階級が力をつけて、土地所有者に対抗するようになったんだ。 彼らは、工場機械化がイギリスが貿易で競争力を維持するうえで不可欠だと考えていたから、政府も彼らの利益を損ねることはしなかったんだ。

奈美: なるほど、政治的な力が技術の普及に大きく影響するんだね。

翔平: そうなんだ。 この本では、労働に置き換わる技術が抵抗され阻止されるかどうかは、その技術で利益を得るのが誰か、そして社会の中で政治的な力を持っているのが誰かによって決まる、というのを本書の第2のテーマとして挙げているんだよ。

奈美: じゃあ、産業革命の後は、ずっと労働者にとって厳しい時代が続いたの?

翔平: いや、そうじゃないんだ。 産業革命の後期になると、蒸気機関のような大型で複雑な機械が登場して、工場労働者にもより高度なスキルが要求されるようになるんだ。 技術革新が、だんだん「労働置換型」から「労働補完型」に変わっていって、労働者のスキルの価値が高まるにつれて、交渉力も強まったんだ。 そして特に、19世紀後半からアメリカで始まった「第二次産業革命」の時代になると、状況が大きく変わるんだ。

奈美: どう変わったの?

翔平: 自動車や電気といった巨大産業が新たに生まれて、労働者の賃金が引き上げられていったんだ。 この本では、20世紀の最初の75年間を「歴史上で最も平等化の進んだ時期」と呼んでいるんだよ。 労働者の賃金は職階を問わず上昇して、マルクスが言った「プロレタリアート」も中流階級に合流していったんだ。 これが「大平等」の時代だね。 多くの人が消費者としても恩恵を受けて、自分の仕事を奪うかもしれないテクノロジーに抵抗しなかった理由の一つに、ほとんどすべての人が消費者としても恩恵を受けたことがあるとされているんだ。

奈美: みんなが豊かになれた、良い時代だったんだね。

翔平: そうだね。 生産技術のおかげで生産性が上がった労働者たちは、よりよい賃金を手にするようになって、購買力が高まったんだ。 新しい産業が発展して、中程度のスキルを必要とする仕事があふれ返っていたから、機械化で仕事を失った労働者も、すぐに次の仕事を見つけることができたんだ。 農業も機械化が進んだけど、それは都市部に高賃金の仕事を求めて労働者が自分から出て行った後、つまり安い労働者がいなくなって必要に迫られた面が大きいんだよ。 労働者はだいたいにおいて売り手市場だったんだ。

奈美: じゃあ、今の「自動化時代」は、その第二次産業革命とは違うの?

翔平: 違うんだ。この本では、自動化時代は19世紀の機械化時代の延長線上にはない、むしろまったく逆だと述べているんだ。第二次産業革命期が「平等化資本主義の時代」だったとすれば、コンピュータ革命が始まってからは、また所得格差が拡大して、地域的な二極化も顕著になっているんだ。

奈美: えぇ、どうして?

翔平: コンピュータ制御の機械は、第二次産業革命で機械化によって誕生した、オフィスや工場にあった「中所得の仕事」を奪っているんだよ。 新しい仕事は、ソフトウェア・エンジニアとかデータベーススペシャリストみたいな、全く新しいスキルが必要な仕事で、しかも高度なスキルを持つ人材が集まる都市部に集中しているんだ。 その一方で、古い工業都市の仕事はひたすら自動化されている。

奈美: じゃあ、スキルのある人とない人で、どんどん差が開いちゃうってこと?

翔平: そうなんだ。 分析スキルがある労働者は多様化が進む高給職にキャリアアップしていくけど、価値のあるスキルを持たない労働者は、以前よりも賃金が安い低スキルサービス業で仕事を探すことになるんだ。 戦後の高度成長期なら、組み立てラインの労働者が失業しても、まだ同じようなスキルが必要な別の定型職を探すことができたんだけど、コンピュータ革命後は、そうした仕事自体が減っているんだ。 特に高卒以下の工員は求人が減って、「下をめざす」競争に身を落としている状況なんだ。 所得が減ることで、犯罪の増加、未婚率の増加、健康状態の悪化といった様々な社会問題も起きている地域もあるんだよ。

奈美: 最初の産業革命の「エンゲルスの休止」みたいだね。

翔平: まさにこの本では、自動化時代は「エンゲルスの休止」の再来だと指摘しているんだ。 大掛かりな調査によると、自動化が進むにつれて、生産された付加価値のうち労働者が報酬として受け取る比率である「労働分配率」は低下しているんだよ。 テクノロジーの変化が、労働者を不要にする「労働置換型」に転じたのは、1980年代にコンピュータの普及が進んでからで、特に2000年から2009年にかけて悪影響が顕著になったらしい。

奈美: 未来はどうなるんだろう? このまま仕事がなくなっていくの?

翔平: この本は、未来を予想するものではないと言っているけど、多くのことは、これから生まれる技術が「労働置換型」になるか「労働補完型」になるかのせめぎ合いにかかっているだろうと述べているんだ。ただ、ポランニーの洞察というものがあって、人間には直感的にできるけど、明確なルール化が難しくて自動化が困難な業務は山ほどあるんだ。 クリエイティブな発想や問題解決、判断、常識が必要とされる活動は、まだ自動化が難しいんだよ。 また、「モラベックのパラドックス」と呼ばれるように、コンピュータは知覚や運動といった、人間が楽にこなせる作業が苦手なんだ。 こうした仕事は、まだ人間が効率よくできるんだよ。 だから、低スキルの仕事がすぐになくなるわけではない。

奈美: 少し安心したような、そうでもないような…。

翔平: それでも、今後自動化の対象になりやすいのは、やっぱり低スキルの仕事なんだ。 将来、どんなスキルが必要になるかは分からないけど、新しいスキルを習得するためには教育が重要になるのは間違いないね。 ただ、家庭環境が不利な子供は学校の成績が悪い傾向があることや、所得が低い家庭では子供の教育にお金をかけにくいといった課題も指摘されているんだ。 AIには、いまの世代の仕事や賃金、貯蓄を減らすリスクだけでなく、結果的に将来世代の貧困を招くリスクもあると言われているよ。

奈美: うーん、格差が固定されちゃうのは怖いね。何か対策はないの?

翔平: 失業や格差への対策として、「ユニバーサル・ベーシックインカム」(UBI)が話題になることもあるね。 これは、働いても働かなくても最低限の所得を保障する制度なんだけど、自動化で仕事が減る状況への対応策として議論されることがあるんだ。 ただ、「困窮していない人に資源を移転するのはおかしい」と感じる有権者が大半だったから今の福祉国家ができたという背景があるし、UBIを実現するには有権者の態度と政治を大きく変える必要があると、この本では慎重な見方を示しているね。

奈美: そうなんだ。やっぱり政治の力も大切なんだね。

翔平: その通り。 この本でも、自動化は必ずしも必然だと言い切ることはできないと述べているんだ。政府は自動化がもたらすチャンスと課題を政治的に利用することが可能で、雇用を守りたいという強い政治的な意思があれば、生産性を犠牲にして雇用を優先する政策を導入することだってできるかもしれないと指摘しているよ。ただ、歴史が示すとおり、労働節約型の技術と生産性向上は、長期的な生活水準の向上に不可欠な前提条件だということも忘れてはいけないね。

奈美: そうかあ。歴史を学ぶと、今起きていることの意味が分かってくるだけじゃなくて、これからどうしていくかを考えるヒントにもなるんだね。

翔平: うん、まさにそれがこの本のテーマの一つだと思うよ。 過去を振り返ることで、未来を見通せるようになるんだ。

奈美: 今日は色々教えてくれてありがとう、翔平くん!すごく勉強になったよ。

翔平: どういたしまして、奈美さん。また何か聞きたいことがあったらいつでも聞いてね。



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