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概要
この記事では、AIの学習目的で著作物が無許可で利用されないようにするための手段として、データベースの著作物として販売することに着目しています。また、著作権法の関連条項やその実行方法についても説明されています。
要約の箇条書き
- 背景: AIによる無許可の著作物利用が増加している。
- 著作権法の引用: 法第30条の4は、著作権者の利益を不当に害する利用を規定。
- データベースの販売: データベースの著作物として販売することで、無許可の学習利用を法的に防止できる。
- 販売内容: 商品は分類名や画像ファイル、ライセンス内容を含むシンプルな構成。
- ライセンスの内容: 利用許諾内容に情報解析のための複製や禁止事項を設定。
- 技術的措置: robots.txtやID・パスワードでクローラによる収集を防ぐことが推奨。
- 明示的な販売表現: 利用規約や透かしを用いてデータベース販売の意図を公表。
- 具体的な例: 利用許諾の詳細や掲載すべき情報について具体的な例を示す。
この構造を通じて、著作権者が自身の権利と利益を守る方法を具体的に考えています。
※記事内で引用している「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方(令和元年10月24日)」「AIと著作権に関する考え方について(令和6年3月15日) 」「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス(令和6年7月31日)」
はAIと著作権についてからダウンロードできます。
前置き
問9 法第 30 条の4ただし書の「…著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に当たるか否かはどのように判断されるか。(略)
具体的な判断は最終的に司法の場でなされるものであるが,例えば,大量の情報を容易に情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物が販売されている場合に,当該データベースを情報解析目的で複製等する行為は,当該データベースの販売に関する市場と衝突するものとして「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当するものと考えられる。
デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方(令和元年10月24日)p.9
著作権法30条の4について上記の引用のように考えられていることから、著作権者が自身の著作物を許諾なく情報解析されることを自ら防ぐ方法として、データベースの著作物を販売することが挙げられる。
下記の引用のように、但し書きに該当しない場合もある、個々の著作物との関係で但し書きに該当するわけではない、という意見もあったが、
そのため、AI 学習のための著作物の複製等を防止する技術的な措置が講じられており、かつ、このような措置が講じられていることや、過去の実績(情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物の作成実績や、そのライセンス取引に関する実績等)といった事実から、当該ウェブサイト内のデータを含み、情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物が将来販売される予定があることが推認される場合には 、この措置を回避して、クローラにより当該ウェブサイト内に掲載されている多数のデータを収集することにより、AI学習のために当該データベースの著作物の複製等をする行為は、当該データベースの著作物の将来における潜在的販路を阻害する行為として、当該データベースの著作物との関係で、本ただし書に該当し、法第30条の4による権利制限の対象とはならないことが考えられる32 33。32 この点に関しては、この措置を回避して行う AI 学習のための複製等であっても、当該データベースの著作物の将来における潜在的販路を阻害する行為に当たるとは限らない、また、これに当たると評価される場合でも、本ただし書に該当すると解することは適切でないといった意見もあった。
33 当該データベースの著作物の将来における潜在的販路を阻害する行為に当たると評価される場合であっても、これに含まれる個々の著作物の将来における潜在的販路を阻害する行為に当たるとはいえず、当該個々の著作物との関係で本ただし書に該当するわけではない、とする指摘があった。
AIと著作権に関する考え方について(令和6年3月15日) p.26,27
「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」では、データベース著作物を販売することで、データベース内の個々の著作物が無許諾で学習されることを法的に防ぐことが可能である旨が示された。
そのため、権利者としては、インターネット上に自らの作品を公開する場合、その作品を含んだAI学習用データベース(データセット)を、AI学習等の情報解析目的で販売(ライセンス提供)するようにしておくことで、無許諾で学習されることを法的に防ぐことが可能です。
AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス(令和6年7月31日) p.40
データベースの著作物として販売するに当たってどうすればよいか、画像の
データベースを想定して考えてみる。全然詳しくないので参考程度に。
販売する内容
データベース├─分類名│ ├画像ファイル(jpgファイル)│ ├画像ファイル(jpgファイル)│ └…├─分類名│ └…
└ライセンス(txtファイル)
実際に渡すものはシンプルなものだと上記のような感じ?
内容(データ数、ディレクトリ構成)、ライセンス、料金等を示し、販売する。
ちなみに「AIと著作権に関する考え方について(令和6年3月15日) 」p.25では「データベースの著作物から容易に情報解析に活用できる形で整理されたデータを取得できる API が有償で提供されている場合」が示されている。
ライセンスの内容
データベースの著作物とデータベース内の個々の著作物、それぞれ混同しないように気をつけてライセンスを考える。
利用許諾内容
(例)情報解析の用に供するための複製のみ認める
(例)利用を許諾する期間を設定する
CCライセンス
クレジット表記義務の有無営利目的での利用可否改変の可否
(継承に関しては、有償販売であればそもそも二次配布を禁止するであろうことから考えなくてよいと思う。)
公衆送信
(例)二次配布の禁止
データベース内の個々の著作物の利用
(例)情報解析以外での利用禁止
(例)当データベースを利用して生成したAI生成物に、当データベース内の個々の著作物の全部又は一部の複製物が含まれていた場合、そのAI生成物の利用を禁止する。
禁止事項
(例)宗教、政治に関係する利用を禁止
(例)エロ、グロ画像を生成可能な生成AIモデルへの利用を禁止
義務
(例)当データベースを用いたAI生成物には、そのAI生成物内に必ず当データベースを利用したAI生成物であることを分かりやすく明記すること。
(例)当データベースを用いた生成AIを第三者に提供する者は、生成されるAI生成物に、当データベース内の個々の著作物の全部又は一部の複製物が含まれていないか確認し、含まれていた場合に第三者に利用させないようにする義務を負う。
著作権者の情報
著作権者の名前、連絡先、ホームページ等
AI 学習のための著作物の複製等を防止する技術的な措置
なお、このような販売を行う場合、先に紹介した“robots.txt”への記載や、ID・パスワード等による保護による、クローラによるAI学習データとしての収集の防止も、将来このような販売を行う予定があることを推認させる一要素となることから、合わせて行っておくことが望まれます。
AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス(令和6年7月31日) p.40
データベース著作物に含まれる(あるいは将来含める)著作物を公開している場合、クローラへの対策をすることが望まれる。
データベース著作物を販売することを示す
クローラ以外からのAI学習目的無許諾利用を抑止するため、データベース著作物を販売している(あるいは将来販売する)ことを明示する。
定型約款
(例)自身のホームページ等に、利用規約として「自身の著作物はデータベースの著作物としての販売を予定しているため、AI学習目的の利用も禁止」していることを明示した上で、著作物を公表しているページ等に利用規約へのリンクを貼る
透かし
(例)データセット著作物として販売している(あるいは将来販売する)ためAI学習目的の利用を禁止していることを画像内に透かしとして明記する
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