エレコム 電源タップ 4個口 2m ホワイト T-S02N-2420WH
¥755 (2025年5月1日 13:12 GMT +09:00 時点 - 詳細はこちら価格および発送可能時期は表示された日付/時刻の時点のものであり、変更される場合があります。本商品の購入においては、購入の時点で当該の Amazon サイトに表示されている価格および発送可能時期の情報が適用されます。)
統計学の解説書ながら42万部超えの異例のロングセラーとなっている『統計学が最強の学問である』。そのメッセージと知見の重要性は、統計学に支えられるAIが広く使われるようになった今、さらに増しています。そしてこのたび、ついに同書をベースにした『マンガ 統計学が最強の学問である』が発売されました。第9回では、適切な比較を行なわない一面的な単純集計がどれだけ愚かか? を丁寧に解説します。(本記事は2013年に発行された『統計学が最強の学問である』を一部改変し公開しています。)

ツッコミどころが多すぎるグラフ
前節で統計解析は3つの問い、すなわち、
【問1】何かの要因が変化すれば利益は向上するのか?
【問2】そうした変化を起こすような行動は実際に可能なのか?
【問3】変化を起こす行動が可能だとしてその利益はコストを上回るのか?
のすべてに答えなければならないと述べた。
もちろんどんな状況においても、必ず統計解析結果の数字だけで3つすべての問いに答えられるというわけではなく、データからはどうしても判断しきれない部分について経験や勘が重要になることもある。
しかしながら、実際に達成可能で、投資するコストに対しての十分な見返りが期待できるアクションが何か、まったく明らかにすることができない統計解析をするぐらいなら、最初から経験と勘だけで物事を決めていたほうがよっぽどマシである。
たとえば以前会ったマーケターは「プロモーションキャンペーンの評価レポート」として図表11のようなグラフを提示した。

この結果をもってマーケターは「〈見た・たぶん見た〉を合わせると46%で約半数の高い認知率を獲得しました! おめでとうございます! キャンペーンは成功でした!」と主張したというのである。その割には自分の周りでそのキャンペーンの話なんか全然聞かない。
おめでたいのは彼の仕切ったキャンペーンの成果ではなく、彼自身の統計リテラシーのほうなのだ。
ツッコミどころが多すぎてどこから指摘していいか迷うところだが、最も大きな問題は、このデータの出所がキャンペーンの対象とした商品購入後のアンケートであった、というところにある。インターネットの通販にせよ、実店舗に行ったにせよ、商品購入者の多くはキャンペーン広告の掲載されたバナーやポスター、チラシなどに対して一般よりも見やすい環境にあった可能性が高い。
こうした偏りの大きいデータから示したキャンペーンの認知率が大きかったからといって、いったい何だと言うのだろうか。
よくわからないまま使われる指標たち
また、仮にキャンペーンの認知率を日本全体のランダムサンプルから正確に測定できたとしても、「だから何?」という話の域を出ない。キャンペーンの内容をどれだけ多くの人が知っていようが、実際に購買というアクションに繋がらなければ何の意味も持たないのである。
これは認知率だけに限らず、「延べ視聴者数」「キャンペーンサイトのアクセス数」「好感度」など多くのプロモーション評価に用いられる指標が、実際の売上に繋がるかどうかはよくわからないまま使われていることを示している。
みなさんにだって、「広告をよく見る気がするし、その広告自体は好きだが、その商品を買おうとは思わない」という経験はあるはずだ。たとえば私はアサヒスーパードライのCMをよく見かけるし、毎回とてもかっこいいとも思うが、自宅では主にキリンの商品ばかりを飲んでいる。それなのにマーケターたちは、今日も「何人が目にした」「何人が好きだと言っている」という調査結果の集計を「分析結果」としてプレゼンしているのだ。
極端な例で言えば、図表12のような回答結果が出た場合のことをしばしばマーケターたちは失念しているのかもしれない。

商品購入者に関する結果は先ほどとまったく同じ値を用いている。だから先ほどと同様に、商品購入者の半数近くがキャンペーン広告を目にしたという結果に違いはない。だが一方で、商品の非購入者を見てみると68%すなわち7割近くが広告を見たと回答している。この結果を踏まえると、「むしろ広告を目にした人のほうが商品を買っていないのではないか」ということになってしまうのだ。
こうなると、何か致命的な、広告を見たせいで買う気が失せるような内容が含まれていた可能性をも検討すべきだろう。
死者・犯罪・暴動を生み出す食べ物とは?
このように適切な比較を行なわない一面的な単純集計がどれだけ愚かなことかは、もう少し噛み砕いた事例について考えてみれば小学生にだってわかるのではないだろうか。
〈次の食べ物を禁止すべきかどうか考えてみましょう〉
・心筋梗塞で死亡した日本人の95%以上が生前ずっとこの食べ物を食べていた。
・強盗や殺人などの凶悪犯の70%以上が犯行前24時間以内にこの食べ物を口にしている。
・日本人に摂取を禁止すると、精神的なストレス状態が見られることもある。
・江戸時代以降日本で起こった暴動のほとんどは、この食べ物が原因である。
ちなみにこの食べ物とは「ごはん」だ。病人だろうが犯罪者だろうがほとんどの日本人はごはんを食べるし、禁止されると落ち着かなくなったりイライラすることもある。社会的抑圧によって食べることができないということであれば、普段温厚な日本人ですらお上に楯突きたくもなるだろう。
一面だけの単純集計だけを見ていては、「白米を食べることを禁止する」といったバカな結論にさえ至る。こんな「統計解析」しか見せられたことがなければ、「統計学なんかじゃ何もわからない」と思うのも当然だ。
私はわざわざ格別要領の悪い人や、不誠実なマーケターの例を挙げたわけではない。マーケティングの領域に限らず、こうした無意味な「分析」はこの世に溢れている。海外の一流ビジネススクールで読まされるような専門書にすら、こうした意味のない解析結果を根拠に「キャンペーンは成功した」と主張するようなものもある。
だが、「十分なデータ」をもとに「適切な比較」を行なう、という統計的因果推論の基礎さえ身につければ、経験や勘を超えてビジネスを飛躍させる裏ワザはもっと簡単に見つかるはずなのだ。
Views: 0