水曜日, 5月 7, 2025
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潜ったら戻れない?世界一危険な泉「ヤコブの井戸」とは?


米テキサス州の中央部にある丘陵地帯(テキサス・ヒル・カントリー)を流れる一本の川。

その川の途中に、直径約4メートルの穴がぽっかりと口を開けている場所があります。

「ヤコブの井戸(Jacob’s Well)」の名で知られる泉です。

まるで魔界への入り口のようなこの穴は、10メートル以上も深く続いており、その先は真っ暗な水中洞窟につながっています。

ここは洞窟探検をするダイバーの人気スポットになっている一方、入り組んだヤコブの井戸の底で、何人ものダイバーが命を落としているという。

それゆえ、「世界で最も危険なダイビングスポット(The most dangerous diving spots in the world)」と呼ばれています。

目次

  • 「ヤコブの井戸」の由来とは?
  • 井戸の中はどうなっている?

「ヤコブの井戸」の由来とは?

ヤコブの井戸は、周辺地域に広がるトリニティ帯水層(地下水で満たされた地層)の水が地表に押し出される圧力によって湧き上がる自噴泉です。

なので、単純に川の流れの水が穴に溜まり込んだものではありません。

帯水層は降雨や地表水によって補充されており、地球史的にはおそらく、数百万年前から水が湧き上がり続けていると言われています。

「ヤコブの井戸」と周辺の景観
「ヤコブの井戸」と周辺の景観 / Credit: Jacob’s Well Exploration Project

この泉が最初に文字として記録されたのは、井戸の名前の由来にもなったとされる人物、ヤコブ・デ・コルドバ(Jacob de Cordova、1808〜1868)が書いた19世紀の本です。

彼は1839年にイギリスからテキサス州へと移住し、この地域で最初の不動産業者の一人になりました。

ヤコブ・デ・コルドバ
ヤコブ・デ・コルドバ / Credit: en.wikipedia

彼の本には「井戸は完全に丸く、あたかも熟練した芸術家が固い岩から切り出したかのようで、水はとても澄んでおり、針のような小さなものを落としても肉眼で見える」と書かれています。

ただこれは、ヤコブが移住者たちに対して、井戸のある当地に引っ越すよう宣伝する意味合いもあったようです。

一方で彼以前に、ヤコブの井戸は数千年もの間、地元のアメリカ先住民たちによって崇められてきたことが知られています。

それから、もう一つの名前の由来としては、旧約聖書の『創世記』に登場するヘブライ人の族長ヤコブが涸れることのない井戸を掘ったことに由来する説があるという。

「ヤコブの井戸」に潜るスイマー
「ヤコブの井戸」に潜るスイマー / Credit: ja.wikipedia

記録によると、20世紀初めのヤコブの井戸では、まるで噴水のように勢いよく水が湧き出しており、今日のように潜ることは困難だったそうです。

しかしその後、湧出量がかなり落ち着いたことで、人々や野生動物が水浴びに訪れるようになりました。

大抵は井戸の縁でくつろいだり、涼むだけでしたが、やはりと言うべきか、ヤコブの井戸の中に飛び込んだり、潜っていく命知らずが現れはじめます。

では、ヤコブの井戸の奥は一体どうなっており、どれほど危険なのでしょうか?

井戸の中はどうなっている?

泉の内部は、ヤコブの井戸探査プロジェクト(Jacob’s Well Exploration Project)の調査により、かなり多くのことが分かっています。

まず、川底の直径約4メートルの開口部から垂直に10メートルほど降りていくと、そこから横に水中洞窟が広がっています

洞窟内は2本の主要な通路からなっており、1本目は約1300メートル2本目は約300メートルの長さがあるとのこと。

ただその通路の途中には、分岐点や細い通路、小さな空間が入り乱れており、地下迷宮のような様相を呈しているといいます。

そのため現在は、ライセンスを持ったプロのダイバーだけが穴の先の水中洞窟の探検を許可されています。

こちらはダイバーが穴から洞窟付近まで降りていったときの様子。

これを見れば、井戸の中のおおよその概観がつかめるでしょう。

しかしこれ以前には、ヤコブの井戸に入ったダイバーが命を落とす事例がいくつも報告されていました。

公式に知られている限りでは、1964年から1984年の間に9人(男性8人と女性1人)が死亡しており、2000年までに他にも死亡者や行方不明者が出ているという。

この地域を訪れる人の割合からすると非常に多いため、いつしか「世界で最も危険なダイビングスポット」と呼ばれるようになりました。

死亡者の中には、洞窟内の隙間から出られなくなったり、狭い空間に閉じ込められた状態で見つかった例もあります。

水中洞窟の一画の様子
水中洞窟の一画の様子 / Credit: Jacob’s Well Exploration Project

実際、ヤコブの井戸の中で命を落としかけて、九死に一生を得た映像が残されていました。

こちらのビデオは、テキサス州サンアントニオ出身の男性(21)が井戸の中ででフリーダイビングをしたときのものです。

映像内では、洞窟内で片方のフィンを落としてしまい、水面に戻るためウエイトベルトを切り離す瞬間が記録されています。

焦りと息切れから来る呼吸音の乱れが、とても生々しく録音されています。

男性は当時を振り返って「一瞬、死が自分の眼前に迫っているのを感じた」と話しています。

全ての画像を見る

参考文献

Jacob’s Well — one of the most dangerous diving spots in the world
https://www.zmescience.com/other/feature-post/jacobs-well-texas-dangerous-diving/

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。
他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。
趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

フラッグシティパートナーズ海外不動産投資セミナー 【DMM FX】入金

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