残業地獄終了 ERPとkintoneを連携させたら、見積もりも在庫管理も爆速に

 今までアンタッチャブルだったERPをkintoneと連携させることで、ビジネスはどう変革されるのか? サイボウズ百目鬼 唯子氏とCData Software Japanの杉本和也氏との対談の後半。前半ではERPシステムはなぜ重厚長大になってしまうのか?をテーマにしたが、後編ではいよいよkintoneとERPの連携について深掘りする。読み終わった後は、きっとERPが身近な宝の山に見えるはずだ。

APIへのキャッチアップはシステム構築の本質ではない

大谷:前半を読んでもらえば、Fit to StandardというERPのトレンドの中で、kintoneとの連携「ありだな」と感じた方は多いと思います。とはいえ、一方でERPの連携は敷居が高いと感じる読者も多いはず。そんな方に向け、杉本さんにはERPとのAPI連携の課題を教えてほしいです。

杉本:これはERPに限らないのですが、APIで連携するにあたって意識しなければならない点が2つあると思っています。

CData Software Japan リードエンジニア 杉本和也氏

まず300以上のAPIを見てきた立場からすると、やはりAPIの仕様ってサービスによって全然違います。通信するプロトコル、メタデータ、データの構造、認証方式、APIの機能などがそれぞれ異なります。だから、kintoneのAPIを使えたからといって、SAPのAPIが使えるわけではない。特にSAPのAPIは根が深いというか、大変というか(笑)。

百目鬼:そうですね。逆もまた然りでSAPのプロがkintoneのAPIを自在に使えるかというと、そういうわけでもないです。

大谷:具体的にはどう違うんでしょうか?

杉本:SAPのAPIの場合、プロトコルはバージョンやサービスの種類ごとでも変わりますが、ODataやSOAPなどさまざまで、メタデータはダイナミックで、データ構造はリレーショナルライク。認証方式は古いものもありますし、機能としてもフィルターの一部が使えなかったりします。しかも、これはSAPに限らないですがERPのAPIはあまり仕様がオープンじゃない、難解なものが多いです。一方で、kintoneのAPIはRESTで、メタデータやデータ構造はダイナミックで、データ構造もNoSQLに近い。それぞれの仕様が大きく異なっています。

CRM / ERP データの統合ではじめるデータドリブン経営(CData Software Japan セミナー資料より)

だから、1つ1つのAPIをどのようにキャッチアップするのかが1つ目の壁になります。ただ、本来重要なのはどのようなデータを利用すればビジネスに貢献できるか考えるところ。APIの仕様をゼロからキャッチアップするのは、システム構築の本質ではありません。ここで時間をとってしまうのが、API連携の難しいところだと思います。

大谷:連携に時間をとるのは人手不足の昨今、理不尽でしかないですね。

杉本:もう1つは「APIに繋げば終わり」ではないという点です。kintoneでカスタマイズし、ERPと連携する場合は、その連携もカスタマイズしなければなりません。kintoneで項目を追加したら、ERPとの連携部分もどんどんカスタマイズしていく必要が出てきます。

さらにAPI自体がアップデートされたり、新しいAPIが出てきたり、さらに生産管理や購買管理など別のERPと連携する場合は、それらもキャッチアップしなければならない。API連携にあたっては、これらの課題を改めて認識するべきだと思っています。

「SAP対応」といっても実装はさまざま CDataは多くのコネクターを用意

大谷:そこでCData製品が出てくるわけですね。

杉本:はい。サービスごとに異なるAPIを扱う難しさもあり、APIのアップデート、新しいAPIに追従していく難しさがあるわけです。

これらの課題に対して、CData Softwareであれば、ERPの連携も、他のサービスの連携も、すべて同等なエクスペリエンスで扱うことができ、それらを柔軟に切り替えられます。これがkintoneとERPの連携開発、いわゆる「Side-by-Side」と呼ばれる領域において、CDataが提供できる価値になります。

大谷:具体的にはどの製品がオススメなのでしょうか?

杉本:弊社はさまざまな連携ツールを提供していますが、今回のようなkintoneとの連携であれば、CData Arcが最適だと思います。ノーコードで利用でき、APIが扱いやすくなります。

CData Arcとは?

ノーコードでデータ連携できるCData Arc

CData自体は300種類以上のAPIとの連携を行なえる強みを持っています。今回はSAPのERPにフォーカスしていますが、実はSAPにもいろいろなバージョンがあります。買収でSAPに取り込まれた製品も多いので、SAP内でAPIの仕様がけっこう違うのです。

大谷:SAP対応と言っても、他社製品では特定のバージョンや製品のみ対応というパターンがあるんですね。

杉本:はい。一方CDataは、最新のSAP S/4HANAはもちろんのこと、旧来のECC 6.0やSAP by Design、購買管理システムのAriba、経費精算システムのConcurなどにも対応しています。SAP連携のニーズにはグローバルでも強いので、12種類くらいのコネクターを揃えて、ビジネスを展開しています。

大谷:サイボウズとしては、CDataのようなパートナーはどう見えるんでしょうか?

百目鬼:メーカーとしては、よいAPIを提供するという方向には努力ができるのですが、設定は最終的にはユーザーや構築パートナー頼りになってしまうので、その体験を向上させてくれるCDataさんのようなパートナーの存在はありがたい限りです。

サイボウズ エンタープライズ事業本部 エンタープライズプロモーション部 百目鬼唯子氏

CData ArcでERPとkintoneを連携 営業改善した事例 

大谷:kintoneがERPや基幹システムと連携できるとどんなことが可能になるのか? 具体的な事例を教えてください。

杉本:ある食品製造業様の事例が良いケースとしてあります。この会社は、自社の直接販売が2割、小売店を介した間接販売が8割を締めており、ルート営業の担当は、スーパーに新商品を営業したり、在庫切れをチェックしていたります。

現在、営業担当は20人近くいるのですが、当然ながら日々客先に出向いており、会社にはいません。ただ、今までこの会社では客先で見積もりが出せませんでした。

大谷:なぜですかね。Excel等でササッと出せそうなものですが。

杉本:オンプレミスの基幹システムからデータを取得し、手動で見積もりを作っていたからです。バルクで購入する小売店ごとの価格表・見積もりカスタマイズも多く、原材料の変動にも対応しなければならないため、営業担当がExcelでさくっと見積もりを作るようなことが難しかったんです。

だから、お客さまから見積もりが欲しいと言われても、どうしても一営業日かかってしまっていました。しかも、小売店によっては、本社やセンターではなく、店舗ごとに見積もりを出すのですが、そうするとさらに手間がかかります。いくら需要があっても、タイムリーに答えられなかったんです。

大谷:機会利益の損失につながっていたんですね。

杉本:もちろん、基幹システム自体の刷新も検討していましたが、これまで作り込んできたカスタマイズとロジックがすでに「仕込み醸造」みたいになってしまい、もはや誰も触れられない状態。リプレースに何年かかるかわかりませんでした。

そもそも今動いている基幹システムも機能面ではそれほど不満はないので、営業が外出先でさくっと見積もりが早く出せればよかった。だから、まさにFit to Standardとして基幹システム自体はビジネスモデルとして変えず、kintoneで見積もりを早く出せるようにしようと考えました。

大谷:システムを無理にリプレースせず、現場の声にも応えようということでkintoneを導入することにしたわけですね。

杉本:はい。このオンプレミスの基幹システムとkintoneの連携で活用されたのが、CData Arcになります。基幹システムにある商品や価格のマスタデータをkintoneに取り込むことで、外出先からもフレキシブルに見積もりを作成できるようになりました。また、作成した見積もりデータは自動的に基幹システムに連携されるためデータの整合性も保たれます。

kintoneの使い方としてはとてもシンプルです。でも、一営業日かかっていた見積もり作成が5分で済むようになりました。

百目鬼:圧倒的な効率化ですね!

杉本:加えてkintoneはレコードの複製が容易なので、100店舗分の見積もりも外出先でまとめて5分で作成できるようになりました。

基幹系システムのFit to Standard とkintone によるSide-by-Side 開発事例・連携ポイント(CData Software Japan ホワイトペーパーより)

「データはERPにある」 死蔵していたデータをkintoneで活用

大谷:営業担当はわざわざ会社に帰って、泣く泣く見積作りという作業に追われることもなくなるわけで、ワークスタイルも変わりますね。まさに残業地獄からの脱却。

杉本:今までは需要があったのに、システムに足を引っ張られて、対応店舗数に限界があった。でも、ERPとkintoneの連携によって、オペレーションコストの低減につながり、営業利益の向上にも寄与したということです。

百目鬼:業務時間の短縮というのはkintoneでよく出てくる導入効果なのですが、kintone単体ではなく、複雑で手が出せないと思われていたERPからデータを引き出して、効果を出していただいたという点に価値を感じる事例ですね。このような使い方をまさに推して行きたいですね。

杉本:ERPの受発注データをkintoneに渡すことで営業も改善できたそうです。小売店で商品の在庫が切れても、先方から連絡が来るわけでもなく、他社の商品が棚を埋めてしまうだけ。だから、ルート営業はまめに小売店の棚をチェックしなければならないのですが、1人の営業が100店舗も担当していると、当然回りきれない。だから、勘と経験でなくなりそうな店を回っていたそうです。

そこでkintoneで納品した時期を見られるようにしました。ERPには前回の出荷実績があるので、これを引っ張ってきてkintoneで見られるだけなので、仕組みとしてはシンプルです。でも、営業はそのデータがあれば、1ヶ月前に出荷したのか、3ヶ月前に出荷したのかがすぐわかるので、訪問の優先順位を付けられます。

大谷:100店舗あっても、効率的にルート営業ができるわけですね。

杉本:ポイントは「データはERPにもともとあった」という点です。「もともとあったデータ」を、今までルート営業の人たちが見られなかっただけ。でも、このデータをERPから引っ張り出し、kintoneと連携させるだけで、オペレーション改善や売上につながるということが興味深いんです。

大谷:確かに使い方としてはシンプルですね。単にデータを持ってきただけではあるけど、現場のオペレーションに直接効きますね。ERPはじめとした基幹システムのデータを死蔵させるのでなく、現場データとして掛け合わせて利用するわけですね。

百目鬼:ERPは難しくて使えないが、kintoneなら使えるという方は多いですしね。マルチデバイスからアクセスできるという点も営業などの外回りをされている人たちからは好評だと聞きます。

杉本:そういった方にデータを武器として渡して、アクティビティを積み重ねいけば、ビジネスのやり方やお客さまへの提案の仕方が変わると思います。しかもそれらがアプリのカスタマイズも連携の処理もkintoneとCData Arcならノーコードで実現できるので、現場の人たちの声から内製のスピード感と合わせて提供していけるのが良い点です。

DX時代の基幹システム活用はkintoneで実現できる

大谷:サイボウズとして、基幹システムとの連携でまず提案できそうな勝ちパターンはありますか?

百目鬼:今、kintoneとERPの間でよく行われている連携パターンは調査中ではあるのですが、マスタデータの連携はニーズが高いです。基幹システムのマスタはどんな場合でも「正」にしておきたいという会社は多いので、マスタの参照はkintoneの使い方として多いと思っています。

あと、マスタを新たに追加申請する際に、日本企業では承認が必要になるのですが、グローバルのERPだと承認機能がないことが多い。であれば、kintoneで承認フローを回して、マスタ登録するという手段にも使えそうです。

杉本:先ほどの事例もマスタへの価格表の変更はkintoneで承認フローを回していますね。まさにそのパターンですね。

大谷:最後にCDataとサイボウズに今後の展開について聞きたいです。

杉本:kintoneとERP・基幹システムを組み合わせた「Side-by-Side開発」というアプローチ自体がまだまだ認識や価値として広がっていないかなと思っています。まずはこうしたアプローチを認知してもらう。その上でCDataとしては、kintoneとERPを連携させた「Fit to Standard」や「Side by Side開発」のホワイトペーパーを制作しましたので、こちらをまずは手に取ってもらい、理解を深めてもらおうと考えています。また、Fit to Company Standardをテーマとしたウェビナーも開催するので、具体的な連携例・デモなどでもイメージを掴んでもらえればと思っています。

百目鬼:DX時代に基幹システムをどう活用するのか、いろいろなやり方があります。その中で、今回ご紹介したkintoneとERPを組み合わせた「Fit to “Company” Standard」は一つの現実解として多方面にアプローチしていきたいです。CDataさんをはじめ、kintone、ERP双方と親和性高く連携できるツールも弊社パートナーに揃えていただいてますので、安心してご検討いただければと思います。

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