新型コロナウイルス感染症に伴うパンデミックで学校がオンライン授業に移行して以来、助成金が支給されるまで在籍し続けることを目的とした「ボット学生」が、主にコミュニティカレッジで増加傾向にあることが伝えられました。
As ‘Bot’ Students Continue to Flood In, Community Colleges Struggle to Respond | Voice of San Diego
https://voiceofsandiego.org/2025/04/14/as-bot-students-continue-to-flood-in-community-colleges-struggle-to-respond/
Financial aid fraud keeps climbing in CA community colleges- CalMatters
https://calmatters.org/education/higher-education/2025/04/financial-aid-fraud-2/
コミュニティカレッジの教員らによると、完全にオンライン授業へ移行している体制の下で、明らかにまともな人間ではやらないような受け答えをする「ボット学生」が急増しているそうです。その中身が完全に機械なのか、あるいは身元を隠している人間なのかは定かではありません。またその目的についても、もしかしたら楽に単位を取ることなのかもしれませんが、ニュースサイトのVoice of San Diegoは「その多くは助成金を受け取ることが目的だ」と推測しています。
コミュニティカレッジは公立の2年制大学で、4年制の「ユニバーシティ」と比べて学費が安価なことがほとんどです。地域のコミュニティ、つまり地元から入学する人が多く、州や政府の助成金が支給されることもあるのですが、この助成金こそボット学生が求めるものだというのがVoice of San Diegoの指摘です。
2021年、カリフォルニア州コミュニティカレッジ事務局は、コミュニティカレッジへの出願者の約20%が偽造である可能性が高いと報告し、願書から助成金の申請書に至るまで、すべて機械で生成されている状況が確認できると伝えました。コミュニティカレッジが標的となっている理由の1つは、出願料が無料だという点にあるといいます。
実際、とあるYouTuberは、コントラコスタ・カレッジの入学手続きをボットですべて自動化した処理で完了するという動画を作成し、ボットの入学が可能なことを実証しました。こうした行為が常態化し、2024年にはコミュニティカレッジの学生を名乗る者からの援助申請のうち、偽物が6万5000件に上るという事態に発展しました。
偽物を見抜けず助成金を渡してしまった例もあり、その額は2025年4月までの1年間で連邦政府から1000万ドル(約14億2000万円)以上、州政府から300万ドル(4億3000万円)以上になるとのこと。カリフォルニア州コミュニティカレッジ事務局は「全体の補助金が32億ドル(約4556億2000万円)に上るため、不正行為の規模は比較的小さい」と弁明していますが、一部の納税者は納得していません。
教員側もボットを見分けるのに苦労しています。サウスウェスタン・カレッジのエリザベス・スミス教授は、自分のクラスに登録していた104人の学生をわずか15人にまで絞り、残りをボットだと認定しているとのこと。スミス教授は「自分のクラスにたくさんの生徒が興味を持ってくれるんだと最初はワクワクしましたが、今はただ胸が張り裂ける思いです」と語りました。
ボットは、現代の学生には珍しい表現を文章中に使ったり、文字で自己紹介する時に「こんにちは。私は[都市名を入れてください]の学生です」といった明らかに機械じみた発言をしたりするため、ある程度は見分けが付くようですが、実際にはわからないこともあります。そのため、中には不審な学生に電話をかけて確かめる教員もいるとのことです。
あるケースでは、電話は通じたものの当人はカレッジに在籍すらしておらず、身分が勝手に使われただけだということが判明したといいます。
サウスウェスタン・カレッジで21年間教えてきたエリック・マーグ氏は、「以前は、学生たちが人間かどうかを判断する必要はありませんでした。彼らは皆、人間だったのです。しかし今では、『あなたは現実ですか?あなたの作品は現実ですか?』といった会話を交わさなければなりません」と語り、ボット学生の流入は教員であることの意味を変えたと心中を吐露しました。
コミュニティカレッジの運営側もリソースを投じてボットを排除しようと試みていますが、その努力は決して持続可能なものではないとの指摘もあります。コミュニティカレッジには働き盛りの高齢の学生が多いことから、オンライン授業の廃止が根本的な解決策になるわけではなく、技術的な解決策が求められているのが現状です。
サウスウェスタン・カレッジのマーク・サンチェス学長は、「進化するボットと戦うのはまるでもぐらたたきのようで、ボット危機を解決するための魔法の解決策を求める人々の気持ちは理解できるものの、それは不可能です」と語りました。
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