国内損害保険大手3社は今期(2026年3月期)に政策保有株式を時価ベースで合計1兆3735億円売却する計画だ。前期実績と比べると減少する見通しだが、高水準での売却を続ける。
各社が20日の決算発表で明らかにした。東京海上ホールディングスが6000億円、MS&ADインシュアランスグループホールディングスが5735億円、SOMPOホールディングスが2000億円の売却を計画。前期実績の合計額2兆598億円と合わせると2年間での売却額は3兆4000億円に上る。
23年に発覚した企業向け保険料の事前調整問題を受け、損保3社は競争をゆがめたとされる政策株をすべて売却する方針を打ち出した。物言わぬ安定株主として多くの持ち合い株を抱えた損保の売却動向は、日本企業のガバナンス(企業統治)改革の進展を測る上での物差しにもなる。
東京海上HDの岡田健司副社長は決算会見で「さまざまなお客さまから売却合意をいただけたことにより、実績として年初計画を大幅に上回った」と述べた。SOMPOの濵田昌宏副社長も「発行体にも大きな変化があり、順調に進んだ」と振り返った。今期以降についても「政策株はゼロに向けて可能な限り前倒しで売却している」とMS&ADの田村悟専務は語った。
前期の政策株売却は、想定以上に持ち合い先企業からの理解が得られたなどとして、各社の期初計画の合計1兆4750億円から約6000億円上振れた。多額の売却益計上と海外保険事業の好調を受けて、3社の純利益は各社とも2期連続で最高を更新。東京海上HDは初めて1兆円の大台に乗せた。
業績好調も背景に東京海上HDは今期、年間を通じて2200億円の自社株買いを行う方針を発表。まずは1100億円分の実施を決めた。
今期は前期と比べて政策株の売却減少を見込むことなどから、東京海上HDとMS&ADはともに減益を見込む。SOMPOは日本基準から国際会計基準(IFRS)に変更した影響で前期業績との比較はできないとしている。
また、足元の超長期国債の金利上昇による影響について、東京海上HDの岡田副社長は「純資産に対する影響は極めて軽微。現時点で運用方針を大きく変更する必要はない」と述べた。

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東京海上H:通期純利益予想、市場予想下回る MS&AD:通期純利益予想、市場予想下回る SOMPO:通期純利益予想、市場予想下回る |
🧠 編集部の感想:
損保3社が約1.4兆円の政策株売却を計画していることは、企業ガバナンス改革の進展を示す重要な一歩です。今後、持ち合い株の解消が進むことで、競争環境の改善が期待されます。利益増加が続く中、企業戦略の見直しが果たす役割はますます大きくなっています。
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