「いってきます」「いってらっしゃい」「ただいま」「おかえり」を繰り返して、夫婦は一緒に歳を重ねていく。ドラマ『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)第4話は、自分の帰りを待ってくれている人がいる、その事実が人を生かすのだと思わされた回だった。
瀧昌(本田響矢)が任務で長期不在の中、なつ美(芳根京子)のもとに妹のふゆ子(小川彩)と幼なじみの瀬田(小宮璃央)が訪ねてくる。夫婦の愛の巣に高揚するふゆ子とは対照的に、子供の頃からなつ美に恋心を寄せる瀬田は意気消沈。外の空気を吸おうと玄関に向かったところ、なつ美に会えるのが嬉しくてウキウキで帰ってきた瀧昌と鉢合わせる。満面の笑みから一転、鬼の形相で瀬田を投げ飛ばす瀧昌。間男より先に泥棒を疑い、なつ美を心配するところに愛が溢れていた。

それにしても、瀬田の不憫なことよ。いきなり恋敵に投げ飛ばされた挙句、夫マウントでボコボコにされる瀬田。負けじと幼なじみマウントで応戦するが、そのせいで2人の会話が弾んでいるように見えたなつ美からヤキモチを焼かれる。好きな人に全く恋愛対象として意識されていないばかりか、逆に対抗意識を向けられ、しまいには他の男に恋してる顔を見せつけられるとは……。「もうやめて! とっくに彼のライフはもうゼロよ!」と同情しつつ、当て馬としてお手本のような仕事ぶりに感心させられる。
なかでも瀬田に感謝しても感謝しきれなかったのが、瀧昌が嫉妬心をむき出しにする場面だ。なつ美が瀬田と内緒話しているのを見た瀧昌は気が気でない様子。すると2人きりになった瞬間、壁ドンならぬ机ドンでなつ美を逃げられない状態にした上で話の内容を聞き出す。その時の瀧昌は嫉妬に燃える男の顔をしており、怒っているようにすら見えた。だが、心配するようなことは何もないと知り、安心で体の力が抜けた瀧昌は「あまり他の男と仲良くしないで」となつ美に乞うのだ。

不意打ちのタメ口と小さな子供のような顔は破壊力抜群で、思わず声が出た。2人が初めて出会った時、こんな瀧昌を見られる日が来るなんて誰が予想しただろう。
最初は何を考えているかわからなかった瀧昌の表情が今やどの瞬間を切り取っても一つとして同じものがないほど豊かになったのは、なつ美に恋をしたから。それはなつ美も同じだ。少し前は赤の他人で、勝手に決められた結婚相手に過ぎない人とこんなにも強く惹かれ合えるなんて奇跡に近いのではないだろうか。
ページ2
一方で、まだまだお互い知らないことも多い。海軍士官の妻が集まる「花筏の会」で出会った潤子(小島藤子)に「夫の生い立ちや過去を知ることも大事」と言われて以来、瀧昌の過去が気になっていたなつ美はその夜、両親についての話題を振る。瀧昌が同じく海軍士官だった父親を訓練中の事故で亡くしているということは前話で視聴者にのみ明かされたが、以降のことは伏せられたままだった。瀧昌はなつ美に心配をかけぬよう、父の死因は隠した上で自身の生い立ちを語り始める。

父が亡くなったわずか2ヶ月後に母が心労で他界。残された瀧昌は父方の親戚の家に引き取られたが、厄介者扱いされ、まともな食事にもあり付けない日々を送っていた。そんな中、父と生前親しかった柴原中佐(小木茂光)から親戚が父の恩給を横領していることを知らされ、逃げ出したという。おそらくその後、柴原家でお世話になることになったのだろう。郁子(和久井映見)曰く、なつ美と出会う前は休みなく働き、上海の陸上部隊に転属することも考えていたという瀧昌。もしかしたら、その頃の彼は自分を愛してくれた人たちを失ったことで生きる気力をなくし、死んでも構わないとすら思っていたのかもしれない。
でも、今はなつ美がいる。自分と離れるのが寂しいと泣いてくれて、帰るのを心待ちにしてくれている人がいる。それが嬉しいと同時に申し訳なく、「他の人と結婚した方が幸せだったんじゃないか」という気持ちが拭えない瀧昌だが、なつ美にはもう他の人など考えられなかった。確かに会えない時間は苦しいけれど、それも全部チャラになるくらいの幸せを瀧昌は与えてくれる。そんなかけがえのない存在である瀧昌の「帰る場所」になると誓ったなつ美。

だが、とっくに瀧昌にとってはなつ美が「帰る場所」になっていた。離れている時もなつ美を思い、僅かでも休みができれば真っ先に家に帰る。会いたくてはやる気持ちも、会えたことが嬉しくて堪らない気持ちも、今を生きる私たちはどれだけ持てているだろう。「ただいま」「おかえり」と言い合えるのは決して当たり前じゃないということを突きつけてくるのが、ラストで潤子からなつ美に告げられる「嵐の大波で船が横転して沈んだの」という言葉だ。そこに、なつ美宛ての手紙を書いていた瀧昌が船の揺れで倒れ込む場面がインサートされる。どうか無事であってほしい。第5話の放送まで、誰もがそう願う1週間になりそうだ。
■放送情報
『波うららかに、めおと日和』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:芳根京子、本田響矢、山本舞香、小関裕太、小宮璃央、咲妃みゆ、小川彩(乃木坂46)、戸塚純貴、森カンナ、高橋努、紺野まひる、生瀬勝久、和久井映見ほか
原作:西香はち『波うららかに、めおと日和』(講談社『コミックDAYS』連載)
脚本:泉澤陽子
音楽:植田能平
主題歌:BE:FIRST「夢中」
プロデュース:宋ハナ
演出:平野眞
制作協力:FILM
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/meotobiyori/
公式X(旧Twitter):https://x.com/meotobiyori
公式Instagram:https://www.instagram.com/meotobiyori/
公公式tiktik、
編集部の感想:
本田響矢の「嫉妬の机ドン」は、愛の強さを象徴していて面白かったです。瀧昌と瀬田のマウント合戦の中で、嫉妬がもたらす人間らしさが際立ち、視聴者として心が惹かれます。夫婦の絆を描く中で、思いやりや過去の影が深く感じられ、感動的な展開でした。
Views: 4