火曜日, 5月 20, 2025
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映画評 ガール・ウィズ・ニードル🇩🇰🇵🇱🇸🇪しゅうと

🧠 あらすじと概要:

映画『ガール・ウィズ・ニードル』あらすじ

『ガール・ウィズ・ニードル』は、第一次世界大戦後のデンマークを舞台に、実際に起きた犯罪をもとにしたサスペンス映画です。貧困に苦しむお針子のカロリーネは、恋人に裏切られ妊娠してしまいます。彼女はキャンディショップを営むダウマという女性と出会い、彼女のもとで乳母として働くことになりますが、そこには恐ろしい秘密が隠されています。作品は、子を育てることの過酷さと、当時の社会の背景に存在する問題を浮き彫りにします。

記事の要約

本作は、カロリーネの苦悩を通じて、子育ての厳しさや親子の関係に関する深いテーマを探求しています。また、モノクロ映像が彼女の心情を鮮やかに表現し、希望と絶望が交錯する様子が描かれています。特に、親の決断が子供の運命に影響を与える無情さが強調され、教育や支援の重要性が訴えられています。最終的に、作品は子供たちが最も大きな被害を受ける存在であることを示し、視聴者に深い考察を促す内容となっています。

映画評 ガール・ウィズ・ニードル🇩🇰🇵🇱🇸🇪しゅうと

(C)NORDISK FILM PRODUCTION / LAVA FILMS / NORDISK FILM PRODUCTION SVERIGE 2024

波紋』『スウェット』のマグヌス・フォン・ホーン監督による第1次世界大戦直後のデンマークで実際にあった犯罪を題材にしたサスペンス。第97回アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネート。

第1次世界大戦後のデンマーク。お針子として働きながら、貧困から抜け出そうと必死にもがく女性カロリーネは、恋人に裏切られたことで、お腹に赤ちゃんを抱えたまま取り残されてしまう。そんな中、彼女は表向きはキャンディショップを経営し、裏で秘密の養子縁組機関を運営しているダウマという女性と出会う。ダウマのもとで乳母として働くことになったカロリーネだが、恐ろしい真実を知ってしまう。

子供を育てることは綺麗事ではない。日本では出生数が70万人を割ったことは記憶に新しく、低下の要因としては経済的な負担の増加や子育て支援の不十分さが挙げられている。本作の舞台は約100年前のデンマークで、現代日本と異なる状況も多く一概には比較できないが、子育てはあらゆる面で身を削らなければならないのは時代が変われども共通の事実だ。

本作は16人の幼児を殺害(有罪判決を受けたのは9人の幼児殺害)したダウマ・オウアビューの事件をモチーフにしている。ダウマが多くの幼児を簡単に殺害できた背景には当時の社会構造が強く影響する。関心が向けられていなかった婚外子の存在、当たり前に横行する違法人身売買、シングルマザーへの迫害、身分制度と挙げればきりがない。

さらに戦争の影響も無視はできない。第一次世界大戦後、デンマークには夫が戦死したためにシングルマザーとなってしまった女性たちが多く存在していた。ダウマに幼児を預けることになったカロリーネもその一人。子育と仕事の両立が困難に陥らざる得ない憔悴し切った母親の気持ちと重荷を解放させてあげたいダウマの使命感が結果的に需要と供給を一致させることになる。

全編モノクロ映像で描かれる本作はカロリーネの心情を表現する。ボロい家に越さざる得なくなり、再婚が叶わず身籠った子を育てなければならなくなった時、画面一体は絶望に陥ったかのように黒く覆われる。反対に、再婚によって困窮を抜け出せそうになったり、産んだ子供をダウマに引き取ってもらった時、希望に満ちたかのような、肩の荷が降りたかのように明るくなる。それは子供を育てる一人の母親の心情とリンクする。

カロリーネが孤児院でとある子供を引き取るラストシーンは、1番の被害者は子供であると突きつける。子供は親を選ぶことはできない。親の思想や家庭環境で成長の仕方に大きく左右されるだけでなく、不可抗力にも大人の決断によって生死を決められてしまう無慈悲さが付きまとう。親が身を削らざる得ない状況と子供の生死、切っても切り離せない関係性であることを再認識させられた。



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