金曜日, 6月 6, 2025
- Advertisment -
ホームレビュー映画映画レビュー:『ミークス・カットオフ』~エデンの近道かなり悪いオヤジ

映画レビュー:『ミークス・カットオフ』~エデンの近道かなり悪いオヤジ

🧠 あらすじと概要:

映画『ミークス・カットオフ』のあらすじ

『ミークス・カットオフ』は、1845年のアメリカ西部、オレゴントレイルを舞台に、幌馬車隊からはぐれた3組の家族が、水を求めて荒野をさまよう物語です。ガイドとして登場するミークという男性は、水のある場所を目指すものの、彼らは様々な困難に直面します。映画全体を通して、ミークをはじめとする男性キャラクターと、テローズ夫人(ミシェル・ウィリアムズ)を中心とした女性キャラクターとの対立や葛藤が描かれており、フェミニズム的な側面も取り込まれています。

記事の要約

この記事では、映画『ミークス・カットオフ』がケリー・ライカートによる作品であること、そしてその特異なストーリーテリングが観客に与える体験について考察されています。映画は、伝統的なシナリオの起承転結が欠けていることから、観客に不安感とともに心地よい漂流感を与えます。特に、セリフのないネイティブキャラクターや、映画中の乾いた音の描写が、観客の主観的感覚に影響を与え、リラクセーションを促すとされています。

さらに、映画のテーマは男性と女性の対立に焦点を当て、知識による優位性と柔軟な感性との闘争を示唆しています。ラストシーンの解釈には、聖書の『創世記』が関連づけられており、登場するネイティブキャラクターが原始的存在や、もしくはそれを超越した存在である可能性について言及されています。

結論として、この記事はライカートの独自の映画作りを評価し、その深層的なメッセージを考察しています。オススメ度は★★★☆☆とされています。

映画レビュー:『ミークス・カットオフ』~エデンの近道かなり悪いオヤジ

記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

見出し画像

かなり悪いオヤジ

えっ~ここで終わるのマジで….起承転結を映画シナリオの基本とするならば、ケリー・ライカートの作品は常に“結”がすっぽりと抜けて落ちている。それゆえ、観客は映画の中に放り出されたままふわふわといつまでも漂流しているような錯覚に襲われるのである。何事もきっちりおさまりがついていないと気がすまない几帳面な観客の皆さんはなんとも言えない不安に苛まれ、私のような万事いい加減な人間は他にたとえようもない癒しを覚えられるのである。幌馬車隊からはぐれた3組の家族が、ミークという男のガイドに案内され、水を求めて荒野をひたすらさ迷う脈絡のないストーリー。そこのどこが“癒し”かって?途中で現れた英語を全くしゃべれないネイティブの現地言葉(もちろん字幕はつかない)、たて付けの悪い幌馬車の車輪がキコキコときしみ、荷台に積まれた鍋が時折カランコロンと乾いた音をたてる時、あなたの脳波はβ波→σ波に変調し心地よい眠りへと導かれることだろう。それじゃ寝落ちしてんのと変わらないじゃん?そう、その心地よさこそがライカート作品最大の魅力なのだが、この人今やフェミニズム監督としても大注目されているのである。フェミニスト女優ミシェル・ウィリアムズが彼女の作品に出演するために直談判したというのは有名な話。ミーク→マチズモvsテローズ夫人(ウィリアムズ)→フェミニズムのメタファーとして観れば、がぜん深みをます作品でもあるのだ。映画タイトルの“cut off”には、近道や分かれ道という以外に“どん詰まり”という意味もあるらしく、知識を武器にここまで優位性を築いてきた男性と、柔軟な感性を楯に新世界確立を目指す女性との対立で、にっちもさっちもいかなくなっている“どん詰まり”状態のアメリカのアレゴリーにもなっているのである。じゃあ、あの得体のしれないネイティブはというと….映画冒頭に少年が読み上げる『創世記』がその答えのヒントになっている気がする。聖書によれば、知恵の実を食べ神と同じ善悪の知識を得たことによって、人間は原罪を背負う羽目になったとされている。ならば、白人の皆さんが考えるような善も悪もないあのネイティブは、知恵の実を食べる以前の原始の人間の姿、もしくはそれを超越した〈何か〉が投影されていたのではないだろうか。

荒野の中に生えていた一本の木は、テローズたち一向を水場へと導く道標だったのか。それとも、その実を食べることによって永遠の命を授かることができるという“生命の樹”だったのだろうか。後者の方だとするならばあのネイティブ、神が“生命の樹”を守るためにつかわしたという智天使ケルビムだったのではないだろうか。オチてないようでしっかりオチていた、ライカートらしからぬ1本なのである。

ミークス・カットオフ監督 ケリー・ライカート(2010年)

オススメ度:★★★☆☆

かなり悪いオヤジ

ネタバレごめんの映画レビューです。gooブログが閉まると聞いて引っ越してきました。4946



続きをみる


Views: 0

RELATED ARTICLES

返事を書く

あなたのコメントを入力してください。
ここにあなたの名前を入力してください

- Advertisment -