土曜日, 5月 24, 2025
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映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』渡辺一貴監督インタビュー、雰囲気満点の作品が「場所と露伴先生のツーショット」ぐらいの気持ちのオールヴェネツィアロケで誕生 – GIGAZINE



映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』渡辺一貴監督インタビュー、雰囲気満点の作品が「場所と露伴先生のツーショット」ぐらいの気持ちのオールヴェネツィアロケで誕生 - GIGAZINE


2025年5月23日(金)から映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』が公開されました。本作は、漫画家・荒木飛呂彦さんによる『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ作品『岸辺露伴は動かない』の実写化映画第2弾で、原作の最初のエピソードを映像化したものです。高橋一生さんが岸辺露伴を演じる実写版は、ドラマがこれまでに4シリーズ・全9話放送されているほか、2023年には映画第1作『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が公開されていますが、この「懺悔室」は原点としてタイトル通り岸辺露伴が「動かない」ため、映像化を熱望されつつも、どのような作品になるのか注目されてきました。果たして、監督はどのように作品に向き合ったのか、渡辺一貴監督にお話をうかがってきました。

映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』公式サイト
https://kishiberohan-movie.asmik-ace.co.jp/

GIGAZINE(以下、G):
本作の映画化発表時、渡辺監督は「この記念すべき大切なエピソードを、オールヴェネツィアロケで撮影できたなんて、クランクアップした今でも信じられない。」とコメントされていました。オールヴェネツィアロケというのは、企画のどの段階で決まったのですか?

渡辺一貴監督(以下、渡辺):
最初は、「日本で物語を始めてからヴェネツィアへ行こうか」とか「ヴェネツィア以外の別の都市も舞台にしようか」とか、妄想も含めて、みんなでいろいろな話をしていたんです。でも、「日本からヴェネツィアに行く」だと映画の前作『ルーヴルへ行く』と似た流れになってしまいますし、ヴェネツィアはフォトジェニックな場所がたくさんあるので、潔く「100%ヴェネツィアにしてみよう」ということになりました。


G:
全部ヴェネツィアロケと聞くと、予算もスケジュールも大変だったのではないかという印象なのですが、撮影はどれぐらいの時間をかけたのですか?

渡辺:
撮影は3週間だったので、ぎゅっと詰まっていました。

G:
それは失敗が許されないぐらいに予定が詰まった3週間なのでしょうか?それとも、ある程度の余裕を取った上での3週間だったのでしょうか?

渡辺:
そうですね……日曜日は絶対にお休みですし土曜日も撮影するのは半日ぐらいというのが、イタリアの撮影ルールでした。その中で撮りきらなければいけないという点ではあまり余裕はなく、プレッシャーもありましたが、おかげさまで撮りきることができました。

G:
3週間の予定は、うまく予定通りに進みましたか?それとも、後半はやはり焦るものなのでしょうか。

渡辺:
撮影はスケジュール通りに進みましたが、毎日が綱渡りという感じでもあったので、気を許すことはできなくて。今日がOKだからといって、明日もOKという保証はまったくありませんから、撮影が終わるとすぐに次の日のことを考え続ける毎日でした。

G:
スケジュール通りでも、綱渡り的なところもあったと。

渡辺:
やはり、天候の部分ですね。ヴェネツィアの11月は、一般的にはすごく雨が多いらしいんです。僕としては、『岸辺露伴』の世界は雨が似合うので、全部雨でもいいと思っていたんですが、すごく天気に恵まれて、雨に降られることはなかったんです。ポップコーン対決のシーンは絶対に雨が降ってはいけないので助かりました。


G:
確かに、あれは晴れじゃなければダメですね(笑)

渡辺:
ところが、撮影予定日は雨の予報で、撮影スケジュールをどう入れ替えるか、助監督やプロデューサーの皆さんと考えなければいけなくて。でも、撮影日を入れ替えるとなると、許可の関係も変わってきてしまう。

G:
ああー、なるほど。

渡辺:
世界遺産なので、そのあたりはシビアであまりスケジュールを動かすことができない部分もあって、どこを動かすか、どこで粘るか、すごく難しかったです。

G:
大変な部分も多いんですね。では、ヴェネツィアロケでうまくいったところ、よかったところはどうでしょうか。

渡辺:
結果的にあまり大きなトラブルもなく、全部うまくいったんですけれど(笑)、そういったところも含めて、イタリアのスタッフの方々が、思っていた以上に「僕達と一緒に作るぞ」という気持ちを持って積極的に参加してくださったことにはすごく助けられました。

G:
確かに、イタリアのスタッフについては、露伴役の高橋一生さんも「これまでご一緒してきたスタッフに加え、イタリアの陽気で真摯な素晴らしいスタッフが加わり、また新たな岸辺露伴の世界を作れたのではないか」とコメントされていました。

渡辺:
イタリアは「映画の国」で、皆さん本当にプロフェッショナルでした。仕事が優秀なのはもちろん、すごくポジティブで明るく、「楽しんで仕事をする」という空気がありました。日本人は、ちょっとマジメになりすぎてしまうところがあると思うんですが、1つ1つの作業を楽しんでやることの大切さを、改めて気づかせてもらいました。そういう空気は撮影現場全体に広がるので、たとえば「あと3分ぐらいで撮らなければいけない」という緊迫するような場面でも、現場には緊張感が走るというより「なんとかなるよ」という雰囲気があり、これはすごく大切なことだなと思いました。


G:
本作は漫画『岸辺露伴は動かない』の1作目『懺悔室』をもとにしていますが、原作をふまえつつも大きな展開を見せる作品となっています。脚本を作り上げていくにあたり苦労はありませんでしたか?

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渡辺:
原作の『懺悔室』は完成度が高く、換骨奪胎して組み立て直すのが難しいというか、あまり分解することができない作品です。また、原作だと、本当に岸辺露伴は懺悔室から動いていなくて、常識で考えればそこにドラマはないんです。でも、そこを1つのエピソードとしてしっかり描いた上で、後半、後日談を膨らませて露伴を活躍させることで大きな流れを作ろうと、脚本の小林靖子さんと話をしていきました。

G:
なるほど。

渡辺:
前半で原作のエピソードはしっかりやる、後半はそこから派生したオリジナルエピソードで盛り上げる、二段重ねの構成にしていったという感じです。

G:
両方やらなくっちゃあならないと(笑)。前作『ルーヴルへ行く』のときのインタビューで、映画にするにあたって、肉付けしたり前後の脈絡に一貫性を持たせたりする作業が必要で、小林さんと議論したという話があったのですが、今回、特に話し合った部分はどのあたりだったでしょうか。

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渡辺:
原作をあまり崩さずにしっかり描くというのは共通の理解があり、その部分でほとんど議論はなく一致していました。後半をどう肉付けしていくかについても、もちろんある程度の打ち合わせはしましたけれど、基本的には小林さんの世界の中で作っていただきました。

G:
ということは、脚本は最終稿までわりとすんなり進んだ感じでしょうか。

渡辺:
そうですね、この作品の場合、書き直しはそんなにありませんでした。私がロケハンした結果をフィードバックして脚本の設定に入れてもらうという作業はありましたけれど、初稿から大きく変わることはなかったです。

G:
ロケハン結果のフィードバックですか。

渡辺:
小林さんはヴェネツィアに行けなかったのでご自分のイメージで書いてもらったわけですが、僕は現場でいろいろな場所を見て「このシーンはこの場所でやると効果的だ」などがわかったので、お伝えしてアレンジして頂きました。


G:
ロケハン時に気をつけたこと、押さえたポイントというのはどういった点でしたか?

渡辺:
ロケハンって、最初にAに行って、そこからBやCに行って……という移動で、もちろんそれぞれの場所はちゃんと見るんですけれど、AからBに移動するまでの間も「何か面白いところはないか」というのはずっと気にしていました。案内してくださる人たちは気付いていなくて、僕だけが興味を持つような場所というのもあるので、集中してヴェネツィアの町を歩き回りました。


G:
そういうこともあるんですね。ちょっと作品から離れて監督自身のことについての質問です。渡辺監督は週刊少年ジャンプを子どものころから読んでいて、岸辺露伴が出てくる『ジョジョの奇妙な冒険』はリアルタイムで追いかけていたとのことなのですが、そのほか、どういった漫画を読んでいましたか?

渡辺:
当時はジャンプ全盛期だったんですが、周りは『ドラゴンボール』や『魁!男塾』などをメインで読んでいる人が多くて、あまりジョジョトークはできなかったんです。

G:
そうだったんですか。

渡辺:
そうなんです……。もちろん連載が始まったころから読んでいたんですが、ジョジョの話ができるようになったのは、大学や社会人になって周囲にジョジョ好きが増えてからですね。

G:
また、当時の特撮ドラマについて「(今から比べると)表現がつたないところもありましたが、そんなことは関係なく楽しめる面白さがあって、今でもそこは同じだと思っています」とインタビューで答えておられたのですが、どういった作品を見てきましたか?

渡辺:
ウルトラマンや仮面ライダーは再放送もあって初期体験にあります。

G:
こうして映像の仕事を始めるのは、そういった視聴体験で興味が膨らんだ結果なのでしょうか。それとも、何かこれというきっかけがあったりするのでしょうか。

渡辺:
僕も何がきっかけだったかはよくわからないですけれど(笑)、子どものころからの体験も大きく影響していると思います。こういう仕事をしようと思ったのは、就職活動をするときに初めて考えたぐらいで、一生の仕事になるとはまったく思っていなかったのですが、こうして『岸辺露伴は動かない』という作品を50歳をすぎてからやらせてもらって、改めて、自分が子どものころ特撮好きで夢中で見ていたのが原体験だったんだなと気付かされます。NHK時代からいろんな仕事をさせていただいて、幸せなことに隙間なく演出の仕事ができているので、すごく恵まれているなと思いますね。

G:
渡辺監督は一貫して「映画監督というより、いろんな映像を撮りたい、作りたい」と話しておられるのが印象的です。

渡辺:
確かにそうですね。出す先は、映画でもテレビでも配信でもなんでもよくて、とにかく、自分が面白いと思ったものを撮りたいです。

G:
出す先がなんでもOKというのはすごいですね。

渡辺:
今はみんな、どんなものでも最終的にはスマホで見ているじゃないですか。映画だとかそうじゃないとか、そこまで分けていないと思うんです。もちろん、大画面で見てほしいとか、音響のいいところで見てもらいたいという気持ちはありますが、見る側がそういう環境を求める人ばかりではないので、「どんな環境で見ても面白いと思えるもの」を作らなきゃいけないと思っています。自分が迷ってしまうと、それが画面に出てしまうこともあるので、そうならないように、楽しみながら思い切り良く撮るように努めています。

G:
本作は『岸辺露伴は動かない』の映画2作目となりますが、監督自身が見てきた好みの映画はどういったものですか?

渡辺:
小中学生のころ放送していた深夜映画で観たヒッチコックの作品は印象に残っています。その影響もあってか、ミステリーやスリラーといったジャンルのものがすごく好きです。

G:
映画には全体のトーンや雰囲気というのがありますが、本作では、なにかトーンをまとめる指針みたいなものはありましたか?

渡辺:
『岸辺露伴は動かない』のシリーズは、人の心のダークな面にスポットを当てる作品群で、光と影でいえば影の部分をちゃんと描くというのが全体の一貫したポリシーとしてあります。そういう意味では、ヴェネツィアも「きれい」「美しい」だけじゃなくて、歴史の重みや負の部分を感じるような質感の場所や、ヴェネツィアというイメージからすると、すこし廃れているような感じの場所で撮影するように心がけていました。

G:
1本の映画を作り上げるにあたって膨大な素材が撮影され、そこから編集でまとめていくわけですが、本作で編集時に気をつけた点、心がけたことはありますか?

渡辺:
登場人物のアップをたくさん使わないということでしょうか。


G:
「アップをたくさん使わない」、なるほど……。それはどういった意図なのでしょうか。

渡辺:
一生さんをはじめ、表現力の素晴らしい方ばかりなので、顔を撮らずに背中だけ撮っていても本当にすべてがわかるんです。もう、ずっと背中を撮っていたいと思わせるぐらいのお芝居をしてくださって(笑)


G:
それほどに(笑)

渡辺:
なので、自分が本当に欲しいと思うときまで顔を映さないようにして、ギリギリまで我慢してから顔を映すときアップにすると意味が出るなと。「顔をできるだけ見せないようにする」というと「なんだと!」と思う方もいるかもしれませんが、想像してもらう余地をできるだけ出したいということは考えています。

G:
なるほど……確かに、すごく雰囲気が出ているのはなぜなんだろうかと思っていたのですが、そういった見せ方が効果的だったんですね。

渡辺:
場所も登場人物の1人だと思っているので、「場所と露伴先生のツーショット」ぐらいのつもりで撮っています。


G:
ああー、わかります(笑)。最後に、ファンの方はもちろん必見の作品だと思いますが、本作で初めて『岸辺露伴は動かない』に触れる方もいると思います。監督からそういった方に向けての推しポイントなどあれば教えてください。

渡辺:
原作を知っている方も初めての方も、どちらでも楽しめるように作っているつもりですし、いわゆるエンターテインメント系映画ではあるんですけれど、役者さんの生身の芝居の底力、身体表現の力というのがみなぎっている、全身全霊で演じていただいている作品です。お芝居の凄みを感じながら、楽しんで見ていただけたら嬉しいです。

G:
ありがとうございました。

映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』は2025年5月23日(金)から公開中です。

映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』本予告60秒【5.23(金)公開】 – YouTube


入場者プレゼントとして、荒木飛呂彦さん描き下ろしのイラストカードが数量限定で配布されています。


なお、メインキャストと渡辺監督が本作を語る座談会映像も公開されているので、ぜひこちらも参考にしてください。

『岸辺露伴は動かない 懺悔室』キャスト&スタッフの心をヘブンズ・ドアー企画【5.23(金)公開】 – YouTube

© 2025『岸辺露伴は動かない 懺悔室』製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

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🧠 編集部の感想:
映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』は、独自の雰囲気を持った作品として期待が高まります。特にヴェネツィアロケーションにこだわった点が印象的で、舞台設定が物語に深みを与えそうです。監督の自信と意気込みが感じられ、原作ファンだけでなく初心者にも楽しめる内容に仕上がっているのではないかと期待しています。

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