🔸内容:
キャメロン・クロウの著書「ワイルダーならどうする?」を読んだ後に、ビリー・ワイルダー監督の映画「翼よ!あれが巴里の灯だ」を鑑賞しました。この映画は、チャールズ・リンドバーグが1927年に大西洋を無着陸で横断する実話を元にしています。リンドバーグの愛機「スピリット・オブ・セント・ルイス」とその冒険を描いた本作は、前半は飛行機の製造やスポンサー探しの苦労を、後半は孤独な飛行の中の困難を回想も交えて表現しています。
主演のジェームズ・スチュアートは、リンドバーグの内面的な葛藤を「座ったまま」の演技で巧妙に表現し、観客を引き付けました。彼の演技は、庶民的で自然体なヒーロー像を際立たせています。また、リンドバーグの飛行成功の瞬間は、圧倒的な歓声の中でも彼の内面の動揺を見せる表現が光ります。このように、ワイルダー監督の演出とスチュアートの演技が見事に調和しています。
ただし、映画はリンドバーグの複雑なバックグラウンドに触れられず、彼の反ユダヤ的発言やナチスとの関係、安全上の理由から家族の事件などに言及していませんでした。リンドバーグの人生には様々な影があることが、その後の名声に影響を与え、特に愛児誘拐事件が彼の評価を大きく揺るがしました。彼は「世紀の犯罪」と称される事件を経て、国家的英雄から物議を醸す存在に変わってしまいました。
結局、この映画は単なる成功物語ではなく、リンドバーグの偉業とその後の暗い面を理解しながら見るべき作品であり、ワイルダー監督の深い感受性とユーモアを感じることができる佳作と言えます。
🧠 編集部の見解:
この記事が取り上げるビリー・ワイルダーの「翼よ!あれが巴里の灯だ」について、映画のテーマやキャラクター、さらには監督の視点からの考察はとても興味深いですね。特に、実在の英雄チャールズ・リンドバーグを描く中で、彼の内面的な葛藤や、抑えた演技を求めるワイルダーのスタイルが際立っています。
リンドバーグは、無着陸で大西洋を横断した英雄でありながら、その後の人生には暗い影がつきまといました。特に彼の政治的立場や発言が後の社会に与えた影響は大きいです。彼が反戦的立場を取る一方で、ナチスを称賛する言動が議論を呼び、結果的にアメリカにおける「英雄」の概念に疑問を投げかけました。
また、ワイルダー自身のユーモアセンスが、映画を通じてどのように表現されているのか、特に抑制の効いた演技と組み合わさることで生まれる緊張感は本作の魅力の一つです。ワイルダーがリンドバーグとの交流を背景に、彼の英雄的イメージを意識しつつも、そのダークサイドをあえて排除したことは、現代の視点から見ると一層興味深いですね。
映画の中で描かれる孤独や挑戦、そして成功と失望に至るまで、これらの要素がどのようにリンドバーグという人物を形作っているのか、またそれが私たち現代人にとってどのようなメッセージをもたらすのか考えさせられます。リンドバーグが人々からどのように見られていたのか、また彼の行動が自由や名声といったテーマと如何に絡むのか、両面からの視点が映画をより深く味わわせてくれるものです。
最後に、映画が描く感動的なラストシーンでのリンドバーグの戸惑いに対する表現は、彼が抱える内面的な葛藤を象徴しているように思います。ワイルダーが扱うテーマの幅広さと、彼自身の独特な切り口からくる鋭い視線が、この作品に奥行きを与えていますね。
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映画「翼よ!あれが巴里の灯だ」についてのレビューでは、ビリー・ワイルダー監督が描いた、チャールズ・リンドバーグの大西洋横断飛行の物語が紹介されています。ジェームズ・スチュアートの主演による孤独な挑戦の様子や、ワイルダーならではの演出が光る一作として評価されています。特に、リンドバーグの英雄像を庶民的な視点で描写した点が強調され、彼の内面的葛藤や逆境を受け入れる姿勢が際立っています。
キーワード: リンドバーグ
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