
日本製鉄は9日、USスチールについて引き続き完全子会社化を目指していることを明らかにした。
日鉄の今井正社長は東京本社で開いた決算会見で、USスチールの完全子会社化が交渉の出発点であるのは変わっていないと話した。ただ、その点は「トランプ大統領との交渉になるので、われわれとしてもどこまで許されるのかというところを真摯(しんし)に詰めながらさまざまな提案ややり取りをしている最中だ」とした。
トランプ氏は日鉄によるUSスチール完全子会社化については難色を示してきたものの、バイデン前大統領が禁止命令を出した買収計画について4月に対米外国投資委員会(CFIUS)に再審査を命じた。ただ、トランプ氏はその後も同買収について否定的な発言を繰り返しており、計画の成否は予断を許さない状況だ。
ただトランプ氏の賛成を得るために日鉄が投資額を積み上げ過ぎれば割高な買い物となってしまう恐れがある。USスチール買収を巡っては日鉄は141億ドル(約2兆円)で同案件が実行された場合、追加で70億ドルの投資を行うと提案したと報じられている。
SMBC日興証券のアナリスト、山口敦氏と前田拓也氏は4月のリポートで、増額された投資額などを基にUSスチールの粗鋼生産能力1トン当たりの買収関連コストは1134ドルになると試算。一般的に鉄鋼の新設設備投資や買収に関しては1000ドル以下に抑制するのが望ましいとされているとして、仮に買収が成立した場合は割高なディールと資本市場から判断されると思われると述べた。
米関税政策や中国からの鉄鋼輸出増加といった厳しい環境を踏まえ、今井社長はインドや米国といった成長市場での事業拡大の重要性が明確になってきていると強調。USスチール買収は「当社にとって重要な成長戦略になる」と述べ、引き続き取引完了に向けて取り組んでいく姿勢を明確にした。
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