土曜日, 6月 7, 2025
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数字嫌いの決算入門伊藤園の2025年4月期本決算を図解アオヤギ

🧠 概要:

この記事の概要は、伊藤園の2025年4月期の通期決算について、数字に対する苦手意識を持たない読者向けに、シンプルな図解と説明で解説している内容です。特に、「増収減益」という状況について、損益計算書、バランスシート、キャッシュフロー計算書を用いてその要因を分析しています。

要約の箇条書き

  • 決算発表: 伊藤園(銘柄コード2593)の2025年4月期通期決算が2025年6月2日に発表された。
  • 基本情報: 伊藤園は日本の飲料メーカーで、特に緑茶飲料市場で国内トップのシェアを持つ。
  • 決算の結果:
    • 売上高は前年比+4%の4727億円で増収。
    • 営業利益は前年比▲8%の229億円で減益、純利益も前年比▲10%の141億円で減益。
  • 事業構造: 主力ブランド「お~いお茶」に加え、飲食関連事業(タリーズコーヒー)も展開。
  • コスト要因: コスト上昇(原材料、販管費)と競争激化によるリベートが減益に寄与。
  • バランスシート: 流動比率215%、自己資本比率50.6%で財務は健全。
  • キャッシュフロー: 営業キャッシュフローはプラス、安定型のキャッシュフローを維持。
  • 今後の展望: 次期予想ではコスト改善を進め、11%の営業増益を見込む。
  • 株価の動向: 現在の株価は安値圏にあり、コスト構造の見直しが成功するかがカギ。

数字嫌いの決算入門伊藤園の2025年4月期本決算を図解アオヤギ

アオヤギ

こんにちは、アオヤギです。

今回は2025年6月2日(月)に発表された伊藤園(銘柄コード2593)の2025年4月期通期決算(2024年5月~2025年4月)について解説していきます。

伊藤園の1年間チャート。株価は安値圏を推移中(出所:みんかぶ)

今期の伊藤園といえば、2024年7月から「お~いお茶」の大谷翔平選手パッケージを導入して話題になりました。手に取った方も多いのではないでしょうか。 

この記事では、伊藤園の最新決算資料の要点をシンプルな図解で読み解きます。決算書を読んだことがなくても8割型理解でき、「決算書ってこう読めばよかったんだ!」と思ってもらえる内容を目指しています。

タイトルにあるように数字が嫌いでも、またはアレルギーがあっても、ド文系でも嫌な気持ちにならないよう、できるだけ小難しい数字っぽいものは排除しました。

伊藤園はこんな会社

伊藤園は、昨年2024年に創業60周年を迎えた日本の飲料メーカーで、特に緑茶飲料市場において国内トップのシェアを誇ります。時価総額は2,891億円の大型株です。主力ブランド「お~いお茶」は、1989年の発売以来、累計販売本数が400億本超え。他にも「健康ミネラル麦茶」や「濃い茶」、「チチヤス」なども伊藤園製品です。

2024年6月には、2025年4月期~2029年4月期の5年間を見据えた「新・中期経営計画」を発表していて、国内基盤の拡大と盤石化、「お~いお茶」ブランドの積極的な海外進出を掲げています。

売上の柱は

●「お~いお茶」をはじめとする飲料や茶葉の販売=「リーフ(茶葉)・ドリンク関連事業」セグメント
●子会社であるタリーズコーヒージャパン(株)の「飲食関連事業」セグメント

の2つです。

まずはこれらの事業からなる伊藤園の収益の構造を見るために、損益計算書(P/L)を読んでいきましょう。

#1 損益計算書(P/L)で収益構造をつかむ

決算資料の損益計算書(P/L)を以下に変形してみました。
図の左側から売上が発生して、右に行くにつれて原価などのコスト、税金が引かれていき、純利益が出来上がるイメージ。

伊藤園の収益構造はこのようになっています。

純利益プラスの黒字企業なので、売上→利益に繋がる一連のチャートを緑で表しています。
(赤字の企業を表すときは、赤字になった時点から赤くすることにしています)

伊藤園の2025年4月期通期決算(2024年5月~2025年4月)は、売上高が前年比+4%の4727億円と増収したものの、営業利益は前年比▲8%の229億円で減益、なので【増収減益】となりました。
【増収増益】がイケてるとするならば、【増収減益】は要はイマイチです。

当期純利益も前年比▲10%の141億円と【減益】しています。

9割を占める「茶葉・ドリンク事業」の状況

伊藤園の売上の9割を占めるのが「リーフ(茶葉)・ドリンク関連セグメント」です。

伊藤園は国内緑茶ブランドの中で売上シェア1位をすでに獲得。

主力の「お~いお茶」は、国内でのさらなるブランド強化+海外売上を伸ばすためのグローバルマーケティングに力を入れていて、その一環で2024年4月にメジャーリーグの大谷翔平選手と広告契約を結びました。

その大谷選手の「お~いお茶」パッケージが発売されたのは2024年7月から。本2025年4月期(2024年5月~2025年4月)は、「大谷効果」について決算資料で以下のように説明されています。

大谷選手の広告起用効果として

●「お~いお茶」の売上が5%アップ●「緑茶飲料といえば?」と聞いたときに「お~いお茶」と答える人の割合が26.8%→35%にアップ

●ヘビーユーザー数が5.1%アップ

などが紹介されています。
結果として「リーフ・ドリンク事業」単体の売上高は4,203億円、前期比+4%の【増収】になりました。

しかし、「リーフ・ドリンク事業」単体の営業利益は190億 円と、前期比マイナス13.9%の【減益】。あれ?

改めてP/Lを見ると、売上の増加よりも売上原価と販管費が昨年対比(カッコ内の数字)で増加しています。何が起きたのでしょうか?

決算短信の中で、
「リーフ・ドリンク事業」については原材料など各種コスト上昇や、競争激化によるリベート(小売店に対する販売促進の支援金のようなもの)が増加したこと、広告宣伝費の先行投資がかさんだことが減益につながったと説明されていました。

ちなみに、売上高の1割弱を占める「飲食関連事業(タリーズコーヒー)」だけで見ると【増収増益】と好調。

ですが、いかんせん売上の9割を占める「リーフ・ドリンク事業」でのコスト増&減益が伊藤園のP/L全体に響いています。

今回の決算説明資料には、
今期2026年4月期(2025年5月~2026年4月)では原料・資材等の高騰によるコスト増は続くと見込んでいるものの、「容器構成・製品構成」コストを改善することで利益率を高めたいとする方針が書いてあります。

会社予想通りにいけば、今期は前期比+11%の営業増益となる見込みです。

今後の四半期決算では、P/Lはこのあたりにひとまず注目したいところです。

#2 バランスシート(B/S)で安全性を診断

続いて伊藤園のバランスシートを見てみましょう。

濃い赤で表示した「流動負債」の2倍以上、濃い青の「流動資産」があります。正確な数字でいうと、濃い青は濃い赤に対して215%です。

これらは、

●濃い青→短期的に現金化できる資産&現金
●濃い赤→短期的に返さないといけない借金

を表していて、この215%というのは「流動比率=すぐ返さないといけない借金に対し、すぐ現金化できる(または現金の)資産を何倍もっているか」を表します。

一般的にこの流動比率は150%あれば優良と言われているので、伊藤園の215%は優等生です。

また、グレーの「純資産」は、左側の「資産の部(濃い青+薄い青)」のちょうど半分くらいあります。

グレーの純資産の部/左側の資産の部=50.6%、つまり自己資本比率は50.6%です。

この自己資本比率は「企業が保有する資産を、負債(=借金)に頼らない自分の金(純資産)でどれだけまかなえているか」を表す指標です。
一般的に30%はほしい、50%あれば優等生と言われます。

流動比率、自己資本比率どちらを見ても、バランスシートは健康、ピカピカの優等生です。

ところで、伊藤園のバランスシートは固定資産(薄い青)の割合が低めです。なぜでしょうか?

理由は、
伊藤園は原料の仕入れ・加工・販売を手掛けていますが、飲料化(ボトリング)については飲料製造企業に委託する「ファブレス方式」をとっているからです。

そのため伊藤園はボトリング部分をコストパフォーマンスのよい外部の専門業者に委託する代わりに、新商品やマーケティング企画などに社内の資源を集中させることができている、と見てとれます。

#3 キャッシュフロー計算書(C/S)で金銭感覚を把握

続いて、キャッシュフロー計算書で現金の流れをざっとつかみます。

伊藤園のキャッシュフロー計算書を図にしました。

●営業キャッシュフローは+18,038●投資キャッシュフローは▲13,333

●財務キャッシュフローは▲23,236

とパッと見てもへぇ・・・とはならないので、キャッシュフロー計算書の「8分類」に当てはめてみましょう。

キャッシュフロー計算書は実は、

●営業キャッシュフローがプラスマイナス
●投資キャッシュフローがプラスマイナス
●財務キャッシュフローがプラスマイナス

2×2×2=8通りしかありません。

そしてこの8通りのどれに当てはまるかで、企業のスタイルが見えてきます。

伊藤園のキャッシュフローは「①安定型」です。

①の安定型の特徴は、
本業で十分なキャッシュを稼げていて、その稼ぎの範囲内外で追加の投資をしたり、債権者に対する借入金の弁済、株主への配当支払いを行っている、読んで字のごとく「安定」のお手本のような企業です。

#2のバランスシート(B/S)と同様、キャッシュフロー計算書上でも伊藤園は安定性を発揮していることがわかりました。

伊藤園の「新・中期経営計画(2024年5月~2029年4月)」の中でも、キャッシュフローの計画はこのように記されています。
向こう5年間はこの「①安定型」の形を保ったまま、成長投資をおこなっていく姿勢のようです。

#4 まとめ

最後に、この記事をまとめて終わりにします。

●伊藤園の2025年4月期通期決算(2024年5月〜2025年4月)は【増収減益】。売上高は前年比+4%の4727億円と増収、一方営業利益はコストがかさみ前年比▲8%の229億円で減益となった●会社予想によると、今期2026年4月期(2025年5月〜2026年4月)はコスト改善を進め、11%の営業増益となる見込み●伊藤園のバランスシートは流動比率215%、自己資本比率50.6%と優等生。製品生産の中でボトリング部分は外注する「ファブレス方式」をとることで、新商品開発などに社内リソースを集中できている

●伊藤園のキャッシュフロー計算書は「①安定型」。向こう5年間の「新・中期経営計画」でも、キャッシュフローの安定感は崩さずに成長投資をおこなう方針

株価は現在安値圏を推移していますが、前期で営業減益の原因となっていたコスト構造の見直しが予定通りうまくいくのか、中期経営計画に沿った(それを上回る)業績を上げることができるのかがカギとなりそう。

今後も伊藤園の動向に注目です。

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アオヤギ

【数字アレルギーが株で勝つための決算入門】 「決算書ってこう読めばよかったんだ!」と思えるを書いてます。 有名企業の決算・財務諸表をできるだけシンプルに図解して解説。



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