🧠 あらすじと概要:
映画「教皇選挙」のあらすじと記事の要約
あらすじ
映画「教皇選挙」は、カトリック教会の重要な儀式であるコンクラーベを舞台に描かれます。数つの枢機卿たちが次期教皇を選ぶために集まり、様々な意見や思想の対立が繰り広げられる中、主人公である首席枢機卿トマス・ローレンスがその進行役を担うこととなります。サスペンスフルな展開の中で、彼らの間に広がる人間関係や信仰の問題が掘り下げられます。
記事の要約
この記事は、映画「教皇選挙」を観た感想をまとめたものです。著者はこの映画が現在の時代背景に非常にマッチしていると述べ、特に最近のコンクラーベに関連して時宜を得た内容であると強調しています。映画の中では、登場人物が多く、特に高齢の男性枢機卿が中心であるため、観客は登場人物を把握する必要があるとアドバイスしています。
また、映画の音響や映像美についても触れ、静寂の中に挿入される音響効果が作品の雰囲気を高めていると称賛しています。現代の枢機卿たちの行動が描かれ、バス移動やスマホを使用する様子など、教会の伝統と現代が交差するギャップが興味深いと感じています。
著者は特に映画のテーマについて、現代社会の多様性を反映している点を挙げ、上下関係や権力の選出が持つ意味について考察しています。総評として、サスペンス要素には若干の物足りなさを感じたものの、それでもコンクラーベの描写や人間ドラマは非常に秀逸で、現代人が見るべき内容であると結論づけています。

今は噂の映画、教皇選挙を見てきましたのでその感想でも。
●なぜ今教皇選挙
前評判の良さもあり、色々な著名人が推している映画という事もあり気になっていたのですが、サスペンス系ってあんまり積極的に映画館で見てはいないなぁというのが自分の今までだったこともあり、まぁ、アマプラとかに来たらで良いかな、という感じでいました。事情が変わったのが先日のリアルコンクラーベ。これによって教皇選挙はただ面白い映画というだけではなく、あまりにもタイムリーな内容の映画となり、初めてコンクラーベに臨む枢機卿が教材に利用するなどの側面すら得て瞬く間に時代の映画となったわけで、監督もまさかこんなことになるとはと思っていたかもしれません。
まぁそんなこんなでロングラン上映となり、であれば見に行くべきであろう、となったのが最近の話で先日映画館へ向かいました。
●純レビュー、これから見る人まだ見てない人へ
教皇選挙、コンクラーベを扱った作品です。描写などの真偽などはキリスト教圏ですらない私には判断のしようもないですが、ある程度参考としてリアル枢機卿が見ていたこともありそれなりに正しい物であるのかなぁと感じています。枢機卿の方が実際のコンクラーベはもっと和気あいあいとしていたという話に合った通り、あくまでもこれはサスペンスであり、一種のフィクションコンクラーベであることは事実だとは思います。一方ですがそこに描写される数々は決してフィクションと茶化したものではなく、一種の聖性を感じさせそれが役者が行っているものであることを忘れさせるような没入感を生み出しています。勿論ですがアクションなどはなく、基本会話劇がベースとなる作品となりますので間違いなく万人が見て面白いというモノではありませんが、少なくとも映画好きを自称できるような方であれば、多くの見どころは確保されているんじゃないかと思います。
単純な見るうえでの注意となりますが、登場人物の服が同じものが多く女性は非常に少なく高齢の男性ばかりが出てくる作品なので登場人物をしっかりと把握しておくことは大切です。
公式サイトに記載されている関係図が非常にわかりやすくメインの登場人物が出ているので参考にしてください。またこれも良くある注意ですが、フルネームの紹介が少ないわりに作中では姓で呼んだり名で呼んだりが混在するので有力候補者のフルネームを覚えておくと誰のことを言っているのか進行が解りやすいです。・トマス・ローレンス:主人公、首席枢機卿←かっこいい。コンクラーベの進行役。実は前もっての調査を全然してなくてこの人が主人公であることが最序盤解ってなかった。・アルド・ベリーニ:リベラル枢機卿、2番目に出番が多い。ローレンスと顔の作りの傾向や髪型がちょっと似ている上に二人とも眼鏡をかけるシーンが多いので顔の判別の苦手な私はどっちがどっちか結構解んなくなってた。最終的に眉毛がしっかりしている方がアルドと見分ける。・ジョー・トランブレ:穏健派枢機卿、顔が解りやすいし名前もトランブレとしか出てこない。・ゴッフレ―ド・テデスコ:保守派、トランプっぽい。顔も演技も目立つので解りやすい。ゴッフレ―ドの名前も一回ぐらい。・ジョシュア・アデイエミ:アフリカ系枢機卿、はじめあんまり出てこないから主要キャラか解りにくい人、黒人系だしアデイエミって呼んでくれるので良く出てくるようになってからは解りやすい。・ヴィンセント・ベニテス:カブールの枢機卿、主要候補ではないがこの人も基本的にはベニテスって呼ばれるし比較的若いので解りやすい。・レイ:ローレンスの秘書で紫の人。主要候補ではない完全な脇役だが頻繁に出てくる重要な役。たぶんだいたいレイって呼ばれてた。
●映画として、作品の見どころ
・SE
いきなりSEの話をするか、って感じなんですが作品自体がアクション性の低い迫力を求めない作品であり、言ってみれば映画館で見るメリットの薄い物に見えるのですが、ことその環境に置いてこの作品の要所要所にぶち込まれるギラギラとしたSEの扱い方は非常に耳に残り、映画館で見た高揚感を感じさせます。あまり映画音響に詳しいわけではないので何がどうなっているというのは言語化できないのですが、BGMのない静寂の中、非常にクリアな音で象徴的にSEの多くが入ります。あれです、耳で楽しむ料理動画見たいな感じのあれですね。
題材が題材なのでそのSEは時に心地よさ、時に教皇が無くなるという事の衝撃、時に厳かな聖性を演出する手段として非常に映画のクオリティを高めているように見えました。
・挿入されるワンカット
この作品には多くの場面で一瞬のカットで象徴的な絵作りをしている場面が多く見られます。……って言っても何がなんやらなんですが、とにかく例を挙げれば黄色い壁の前で煙草を吸う人のカット、あるいは雨の中同色の傘を広げ歩く枢機卿たちのカット、あるいは青い座席シートに並ぶ赤い服の枢機卿たちのコントラストカット、それら一つ一つが写真的、映像的な構図、色彩、演出をもって彩られ頻繁に挿入されます。それが、もうただ美しい。さらに言えばその多くがこの教皇選挙という映画でしかなしえないような題材をモチーフに作られる絵となりますのでそのすばらしさってのはまぁ、少なくとも言葉で表現できるものではありません。見ろ、としか。
・現代の教皇選挙
この教皇選挙は現代、ほぼ現代がモチーフの作品です。なので色々と面白いギャップと言いますかとにかく列挙すればキリがないですが、大勢でバスに乗って移動する枢機卿、スマホをいじる枢機卿、電波妨害を気にする枢機卿、ストレッチャーで運ばれる教皇の亡骸、思ったより機械的でハイテクなコンクラーベ白黒煙の排煙システムなどなど現代にいたるまで変化を続けてきたコンクラーベというシステムが今はどのような仕組みで運行されているのかが画として見れるのも良さかなと思います。
同時にそれは教皇も枢機卿も人間であり、その人間性を示すものでもあることが面白いなと思います。
●リアルコンクラーベとその舞台
折角のリアルコンクラーベなのでその舞台となった実際の事物にもちょっとフォーカスしてみましょう。まず選挙の舞台として映画、実際のコンクラーベともに登場したシスティナ礼拝堂。
何とグーグルアースでその舞台である涙の部屋を見れる様子。
ミケランジェロの天井画でも有名な場所ですね。
詳細に関してはリアルコンクラーベもあったこともあって各メディアがいろいろ取り上げているのでそういうのを調べても面白いと思います。
特定の宗教を強く信仰しているわけではないのでなのでいろいろ前提を確認するとローマ教皇とはカトリックの最高指導者であり、一応キリストの後継者であるペトロ、の後継者という立場になるそうです。なので教皇不在の期間を使途座空位(セーデ・ヴァカンテ)というそうな、作中でも一度だけ出てきた言葉でなぜ使途なのかと言われたらそういう経緯なんですね。でそのシスティナ礼拝堂はご存じバチカン市国に存在する礼拝堂。
バチカン市国ってなんか言われるとあれなんですが、所在地はイタリアローマの市内にあるバチカン、いわゆる都市国家というやつなんですがこのバチカンの定義がちょっと曖昧……というか宗教観が無いと若干つかみにくく、バチカンという言葉自体には教皇庁や教皇などの概念も含まれているそうです。
もう一つ物語の主要な舞台となった枢機卿ホテル・マルタの家ことサン・マルタ館。
ストリートビューでは正面には出れなさそうなのですがかろうじて後方外観のようなものは見れました。
ウィキペディアによるとおおむね映画の通りコンクラーベの際の枢機卿の宿泊施設として機能するとのこと。ひとつ面白いのが同wikiの項目となっている教皇フランシスコの住居としてという項目、劇中で亡くなった前教皇もなぜかマルタの家でなくなっていたように見えたのですが、どうも先日亡くなった前フランシスコ教皇もこのマルタの家の201号室、自身選出時の枢機卿が宿泊したその残りの最初の番号の部屋に住んでいたとの事。おそらくはこのエピソードをもとにしているのかなと思われます。
いや、面白い。
あとはニュースにもなった煙突でしょうか。
作中でも行っていたように教皇が決定すると白い煙、決定しなかった場合は黒い煙を投票用紙を燃やし、なんか装置を使って排煙している様子。コンクラーベの度に工事をして取り付けてるようですね。
煙突の位置はサンピエトロ広場。
おそらく、ここです。
ここ
ちなみに投票用紙。教皇選挙の劇場パンフレットにおまけの様についてきますので興味があればぜひ。本物と紙質などは違うでしょうが。新教皇が決まった時点で次のコンクラーベの話をするのはアレですが、教皇に任期はなく辞任するか死去することによってコンクラーベは開催されるとの事らしいので、まぁまだ普通に生きていれば数回はコンクラーベにぶち当たる可能性はありますので、その時の知った顔をして迎えようかと思います。
普通に忘れてるかもしれませんが。
●教皇選挙のテーマ(以下重要なネタバレを含む
この映画が具体的にどういったメッセージ性を持っているかというモノは何とも言い難い作品です。様々な要素が入り混じっていますし、そこに一貫した芯を貫くようなテーマがあるかと問われるとそうではないと感じる作品だったとも思います。ただ一つに感じられることは現代の縮図的な構図でしょうか、非常に多様な人間がいる枢機卿、話題となった日本人枢機卿が実際に居るように作中でも黄色人種っぽい感じの人もいましたし、見ようによってはドナルドトランプのようにも見える振る舞いをする保守派枢機卿テデスコもいました。その中から一人の人物を選出する。そこには多くの人の意図が入り混じる形になりますし現実ではドナルドトランプが勝利したようにリベラルさ、寛容さが勝利するとは限りません。ただ、同時にこの映画は保守的に他者を攻撃したり、一種の利益を追求するような姿を良くないものと断じている作品かと言えばそうでもないようにももいます。この作品のテーマ……とは少し違うかもしれないのですが、この作品の最も象徴的なシーンは、と問われると多くの人が答えるであろうシーンがローレンスによる説教のシーンでしょう。そこに登場する「もっとも気を付けるべき罪である確信」これは本当に平たく言えばコンクラーベやキリスト教、宗教に限らず何事にも当てはまるようなことであり「絶対と言うべきではない」そういった事ではないでしょうか。絶対に正しい選挙結果はないですし、絶対これが良いという選択も無い。トランプを選んだ現実社会も、少なくとも外部の人間である私にしても絶対にそれが間違っていたとは現段階では言えず、同時に絶対に正しいとも言えない。絶対という専門家は信用するなとよく言います。科学の定理ですら絶対ではなく時にそれが覆される時もあります。絶対は無く、絶対は時に罪となる。これが「もっとも気を付けるべき罪である確信」なのではないでしょうか。ベニテスという一見の人格者を最終的に選出した劇中の教皇選挙ですが、彼もまた絶対の存在ではなく、また前教皇の言葉を拒否し自身の体にメスを入れることを避けました。ベニテスの選出は一つの変化である一方で確実な明るい未来ではなく、同時にそこには大きなスキャンダルや激動の始まりの可能性も秘めています。確信はどこにもありません。最後のシーン、窓の外を見るローレンスの姿は個人的には少し所在無げで不安げな様子にも感じられます。未来は解らない、確信はない。
だからこそその不安に抗い、救いを求めるために宗教はあるのでしょう。
●総評
個人的にはこの作品むちゃくちゃ好きでした。コンクラーベの描写や聖職者の人間性などなどどこを切り取っても味がする良い映画です。ただあえて必要ないのでは……?ってなってしまった部分が実はサスペンス部分だったりして個人的にこの作品の面白さはサスペンスにしなくても成立したと感じています。サスペンスって言っちゃうとすごい広大な範囲になっちゃうんですが、具体的に言えばアデイエミとトランブレに関する部分ですね。他者を陥れようとする具体的な謀略やそれを暴く過程などの作為的な行為が無くても純粋な人同士のぶつかり合い教皇を目指す人々の主張とその軋轢や人間関係、信仰へのあり方とその失墜など、そしてクライマックスのオチに至るまでこの作品が魅せてくる部分は十分にあり、それだけでも緊張感あふれる教皇選挙の内側はしっかりと描写出来ていたんじゃないかなーって言うのがまぁ個人感かなと思います。とは言え別にそこがあったから悪くなったという話でもなくて、言い方を変えるとそこだけが本編の中で普通の作品だったんですよね。相手を陥れようと謀略をしたりそれを暴いたりってのはどの作品にもあるんで、最初っからもうずっと見たことない物が続いていたコンクラーベという異次元的な作品において少し平凡に感じた部分がそこだったという話です。思わぬ形で話題性が急速に加速した本作ですが、そこにはその面白さだけではなくまさに現代の縮図があり、現代の人が見るべき内容が含まれているからこそだと思います。その作品が描かんとした世界の側面がまさにコンクラーベの似姿となり、時を同じくして偶然にも現実のコンクラーベが行われた。激動の時代を生きる中、偶然か必然か全ての事象がかみ合う形で世に出てきた映画、教皇選挙。ぜひ今、このタイミングに見てもらいたい作品であったと言えるかなと思います。なのでまぁ、急いでこの記事を書いたんですよ。
見てほしいので。
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