2023年度末時点で、楽天モバイルにおける5G基地局の90%がMassive MIMO対応になるなど、通信トラフィック対策の切り札の1つとして注目されているMassive MIMO。今回は、携帯キャリア各社の取り組みについて取り上げたい。
キャリアごとに異なるMassive MIMOの展開状況
現在、楽天モバイルはLTE周波数のNR化を導入しておらず、5G基地局数そのものが5G専用周波数帯(3.7G/28GHz帯)の基地局数となる。
そうした中、楽天モバイルは2023年度末時点で3万4209局の5G基地局数のうち、3万817局がMassive MIMO対応になっている。一方、大手キャリアは軒並み8000局規模のMassive MIMO対応であり、楽天モバイルの局数が際立つ。
Massive MIMOは従来のアンテナ本数(FD-LTEはアンテナ2本、TD-LTE(AXGP)が同4本もしくは8本)とは大きく異なり、最大128本の圧倒的なアンテナ数で高度なビームフォーミングや空間多重などの技術を実現し、1人1人に専用の電波を割り当てることができる。
そのため、通信速度が遅くなりがちであった駅や繁華街など、人が多く集まる場所でも快適なモバイル通信を実現する。このように通信の安定化や高速化が期待できる反面、従来の無線機よりも高額になる点はデメリットといえるかもしれない。
次に大手キャリアのMassive MIMO展開をみてみたい。大手キャリアの中では、ソフトバンクが最もMassive MIMO比率が高い。
ただ、ソフトバンクは5G専用基地局数が他キャリアよりも少ないため、5G専用周波数帯におけるMassive MIMO比率は50.3%とNTTドコモやKDDI(au)よりも高くなっている。NTTドコモは3万6815局の5G基地局数のうち、8543局がMassive MIMO対応で、5G専用周波数帯におけるMassive MIMO比率は23.2%となる。
KDDI(au)は2023年度に旺盛な5G展開を行ったが、Massive MIMOが大幅に拡大した訳ではなく、通常の基地局を設置した格好になっており、5G専用周波数帯におけるMassive MIMO比率は15.3%と4社の中で最も低い。総じて、現在のところ、大手キャリアはMassive MIMOに消極的といわざるを得ない。
なお、楽天モバイルのMassive MIMOが多い背景として、楽天モバイルは1.7GHz帯以外に5G専用周波数帯しか保有しておらず、Massive MIMOで効率的にトラフィックを収容するしかないという点が考えられる。
その点、大手キャリアはさまざまな周波数帯を保有しており、それらの周波数帯でトラフィックを収容することができる。そのため、現時点では、あえて、Massive MIMOに頼っていないともいえ、5Gをフル活用せざるを得ない楽天モバイル、5G以外でトラフィックを収容できる大手3社という構図が見て取れる。
現状、楽天モバイルは保有している周波数帯が少なく、5G周波数帯もMassive MIMOで効率的にトラフィック対策を行わざるを得ない。しかし、ユーザ数の増加に伴い、楽天モバイルへの新たな周波数帯割当は避けられない状況になる。
すでに700MHz帯狭帯域を割り当てられているものの、今後は帯域幅のあるプラチナバンドの割り当てが望まれる。楽天モバイルは過去に大手キャリアからプラチナバンドを奪おうとしたこともあり、再び、このようなことが行われないよう、総務省主導による楽天モバイルへのプラチナバンド割り当てを期待したい。
🧠 編集部の感想:
楽天モバイルのMassive MIMO導入が進んでおり、特に基地局数が圧倒的に多い点が興味深いです。これにより通信の安定性が向上し、混雑したエリアでも快適な利用が期待できます。しかし、大手キャリアの消極的な取り組みは将来的な競争に影響を与える可能性があり、今後の動向が注目されます。
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