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概要
この記事では、プロジェクトマネージャー(PjM)やプロダクトマネージャー(PdM)が転職時にどのように年収を交渉すべきか、企業側の視点から詳しく解説しています。具体的には、企業が年収をどのように設定しているか、応募者はどのように希望年収を伝えるべきか、そして企業との年収交渉で注意すべき点について述べられています。
要約(箇条書き)
- 人事制度の理解: 企業の人事制度に基づく等級設定があり、職種ごとに給与が定義されている。
- 求人の年収設定: 求人の年収はスキル要件に基づいて、下限と上限が設定されている。上限は可能性の最大値。
- 希望年収の伝え方: 希望年収は現職年収を下回らないように設定しつつ、上昇幅を考慮して提案するのが鍵。
- 交渉術:
- 物価上昇を理由にする。
- 現職が小規模企業ならば、その立場を説明する。
- 高需要スキルをアピールする。
- 企業の年収決定要因:
- 現職年収の確認から、能力、経験、採用予算に基づいて年収を決定する。
- 交渉における注意点:
- 嘘をつかず、オープンにコミュニケーションを行うことが重要。
- 過剰な要求は逆効果になる可能性がある。
- 内定時の交渉: 他社からの提示を利用し、説得力を持たせることが有効。
この記事を通じて、PjMやPdMの転職希望者が有利な形で年収の交渉を進めるための具体的なアドバイスが提供されています。
こんにちは。このではプロジェクトマネージャー(PjM)やプロダクトマネージャー(PdM)の転職に役立つ情報をお届けしています。
実際にPjMとPdMとしてキャリアを積み、今は採用する立場にいる現職PMだからこそ知っている、採る側の内情に基づいて発信しています(詳細は自己紹介を見てね)。
さて、いざ転職しようと思った時、転職エージェントや応募企業から、結構早いタイミングで希望年収を聞かれて金額を悩んだり、どうやって交渉したらいいのか悩む方も多いのではないでしょうか。
今回は「採用する企業側が、採用候補者の年収をどうやって決めているか?」という件を企業側の事情と共にお伝えし、少しでも高い年収で入社するための具体的な交渉方法と注意点を説明しますね。
1. (前提知識)人事制度の事情
本題をお伝えする前に、企業の業務に対する待遇の定義についてざっと説明させてください。(重要な知識になります)
ほとんどの会社には人事制度がありそれぞれの職種に対して、業務内容と待遇を定義しています。1つの職種に対して縦に区切った単位を等級やグレード(このでは以降、等級とします)とし、それぞれの等級に対して、スキル要件と給与額を幅値(月給43万〜48万円/年収750〜800万円など)で設定しています。
多くの企業が階段式の定義になっていて、低い等級にいる人より、高い等級にいる人の方が高い給与が設定されている状況になります。昇級したら給与が上がっていきますので、レベルと待遇は綺麗な階段式になっているところが多いです。(下の図の左側のイメージ)
一方で、メガベンチャーや外資などでは、あえて上下の等級で給与の幅値を重複した形で定義している企業があります。(下の図の右側のイメージ)このパターンが待遇の交渉に与える影響については後で説明します。
同一職種に対する、給与額と業務レベルの定義のイメージ
現職でどのようなルールで給与が定義されているか特に意識してこなかった方も、転職先の等級や給与テーブルが想像しやすくなるので、今の人事制度がどうなっているかを一度見ておくといいでしょう。
2. 求人の想定年収はどう決まっているか?
求人に掲載される給与額は、基本的に600万円〜1000万円のような幅値になっていることが多いですが、下限額と上限額をどのように決めているかも簡単に説明します。
上限額について、応募する側からすると「本当はそこまで高くならないのに、希望を持たせるために(嘘で)高めに書かれているのではないか?」と不安になることもあると思います。
企業側の実情としては、昨今はコンプライアンスがかなり厳しくなってきているし、テキトーに高くしても管理がしづらくなってしまいます。ほとんどの企業が実際の人事制度に基づいて、等級の定義に合わせた額面で正確に記載していると思います。
ただし、上限が高めの金額の方が見栄えが良いので、下限額は業務レベルをクリアするボーダーラインの待遇に、上限額は可能性として取りうる最大額を記載している、と言うパターンが多いです。
例えば、下記のような等級と年収の定義だったとします。
PMの等級の定義
G1:年収500〜600万 上長の支援を受けながらプロジェクトの進行管理ができるG2:年収600万〜700万
自力で5人程度のチームのプロジェクトの進行管理ができる《《 省略 》》
E1:年収1,100万〜1,300万
10億円規模以上のプロジェクトを全体責任者としてマネジメントができる
企業側で「5〜10人くらいのプロジェクトが多いから、G2の等級に相当するPMに入って欲しいな〜」と考えていたとします。
この時の求人では、下限値は等級の定義通りで「600万円」に、上限値は今後出世したら取りうる最高額として「1,300万円」と記載します。
企業によっては、「E1:1,300万円」と言う上限値が、本当に1-2人しかなれないCPOやCTOや、エグゼクティブの待遇だったりすることもあります。気になる場合は面接で聞いてみると良いでしょう。(年収の上限の立場がどんな人なのか質問を受けることはままあるので、それ自体がネガティブな印象になはならないでしょう)
3. 応募時に希望年収をいくらで伝えるべきか?
企業側は早いタイミングで、応募者の現職の年収に加えて希望年収を確認することが多いです。それは想定年収を考慮すると、どの等級になるかを早く見定めたいからです。その等級のスキル要件を前提にして、面接でスキルや経験を確認します。
「希望年収はいくらですか?」と聞かれた際に、明確な理由がなく現職の年収よりもべらぼうに高い金額が伝えてしまうと、企業側にこの人は客観的な評価ができていない人なのかしら?と思われてしまうリスクがあります。
一方で、「今と同等以上であれば・・」と遠慮がちになってしまう人が多いですが、せっかく収入を上げるチャンスを逃すことになるので非常に勿体無いです。
現年収にプラスいくらまで積んで許されるか?
これまでわたしのキャリアで経験した4社の給与テーブルと、人事システムの開発で常駐していた3社の企業と、わたし自身が現在採用する立場をやっている経験を踏まえてお伝えしますが、現年収に対して、次の金額までなら、上げたいと伝えても大丈夫(ネガティブに捉えられることはない)と思います。
年収 600万円まで ▶︎ MAX 30万円くらい年収 800万円まで ▶︎ MAX 50万円くらい年収 1100万円まで ▶︎ MAX 50〜80万円
年収 1200万円まで ▶︎ MAX 100万円
どういうセリフで伝えると良いか?
なぜその金額が妥当なのか、説明が重要です。わたしが企業側としてこれまで面接してきた中で、実際に違和感がなく受け止められた説明の例をお教えします。
① 昨今の物価高を利用する
最近の物価高で全社員を一律昇級させる企業が多いので、このタイミングで転職活動をしている方は、絶対にこの物価高を理由に交渉した方がいいです。というか、もし本当に現職で一律の待遇アップが予定されている場合には、ここで交渉しないと損になってしまいます。
具体的な伝え方の例:
いまの年収は800万円ですが、現職では物価高を考慮して次の期から給与が一律上がると周知がありました。その昇給額を踏まえて、850万円以上でご相談させていただきたいです。
②スタートアップや中小企業にいる場合はその立場を利用する
スタートアップやベンチャーなどの中小企業は、PMでも平均的な給与額は大手企業よりも低い場合が多いです。(もちろん例外もありますが)
現職が大手でない方の「スタートアップにいるので市場平均よりは低い認識なので・・・」と言う説明は、特に違和感はありません。なので、そういった企業にいて給与が低めだと自覚がある方は、それを率直に伝えることは全然マイナスにはならないです。
加えてあなたがもし過去に大手にいて、年収を下げてスタートアップに行き、改めて大手に転職しようとしているという場合も遠慮は全く不要です。(なんなら大手の給与の実態を知っているので、より説得力があります)
具体的な伝え方の例:
現職がそこまで大きくない企業ですので、市場平均よりも待遇が低い認識をしております。ですので、現在600万円ですが、650万円以上でご相談させていただきたいです。
③ ニーズが高いスキルを利用する
AIやセキュリティやデータ分析など、いまニーズが高いスキルを持っている場合には、それを理由にするのも良いです。伝え方は②と同じように市場価値を背景にするといいと思います。
具体的な伝え方の例:
AIを使った開発で、XXXという具体的な成果があります。AI実装ができるPMに対して、現職の待遇は他の企業よりも低い認識をしております。
ですので、今は年収940万ですが1000万円以上でご相談させていただきたいです。
4. 企業側が最終的にどのように年収を決めるのか?
では次に、企業側がどうやってあなたの年収を決めるか?という点をお伝えします。
まず企業側では前提として、(あなたの希望がどうであれ)最低でも現職の年収以上で提示せねば!という暗黙の了解があります。それは最低現職くらいの金額で提示できないと、辞退されてしまうだろうと考えているからです。
その前提の上で、次の流れで年収を検討します。
①現年収がうちの等級だとどこに該当するか?
まず現職の年収が、給与テーブルに当てはめてどこに該当するかを確認します。応募のあった求人の等級の給与幅に収まる・もしくはそれよりも低い額面だった場合は、特に問題ないので次に進みます。
もしあなたの現職が外資などで比較的高い給与をもらっていて、等級で定義している幅値の上限よりも高かった場合は、企業側は非常に悩みます。後述の②③も通して検討し、なるべく調整しつつも、「あなたの能力は高く認めていて、めいいっぱい調整がんばった結果ですが、この金額になります」と現年収よりも低い金額を提示することもあります。
希望年収が現職の年収より高い場合には、希望年収に対しても同じ確認をして、等級と給与テーブル上での該当位置を確認します。
②確認した能力や経験値が該当する等級はどこか?
これまでの面接や診断テストなどの採用フローの中で確認したあなたの能力や経験の情報ももちろん参考にします。
前述の例を使うと、G2のグレードを採りたいとした時に、G2の業務レベルの定義に見合う能力があるか、ある場合にはその中でも低めなのか高めなのかを考えます。
③該当する等級で、今いる社員と比べてどうか?
すでにその等級で働いている人と不公平にならないように、いまいるPMの能力と比較も行います。例えば、「G2の真ん中で630万にしているAさんと比べると高いけど、680万のBさんより優秀ではなさそうだから650万前後が妥当なラインかなぁ〜」と言う感じです。
④ 採用予算はまだ残っているか?
転職エージェントを経由して採用する場合の採用手数料や、採用した後の給与を支払うために、採用予算というものが存在します。なので、この人を採っても予算的に大丈夫か?という確認も行われます。
給与を高く提示すればするほど、ご本人が入社してくれる確率が上がりますが、イタズラに金額を高くできない事情は予算の枠が限られているから、という事情もあるのです。(転職エージェントに払う手数料が最近高いですからね・・)
ということで、まとめると、現職の年収を下限値としておきつつ、あなたの能力や経験を、等級の定義に加え今いるPMの能力との相対で決めていくという流れで、予算の事情もあるということです。
5. (失敗例)企業側の年収の決め方の例外パターン
わたしがメガベンチャーに転職した際に、後で実態を知り「もう少し高く年収交渉すればよかった・・」と後悔したパターンがあるので説明しておきます。
※例外パターンの説明なので、早く交渉の仕方を知りたい方はスキップしてください
説明するのは前述した図の右側のパターンです。
初めての転職だったので、希望年収を「現職と同等以上であれば・・」と遠慮がちに伝えてしまいました。その結果「はい、その金額で!」と年収アップに失敗しました。
入社後に同僚のPMと会話していたら、自分より等級が低いPMが、自分より高い給与をもらっていることを知り大きなショックを受けました・・・!
何が起きていたかというと、給与の幅値が重なるように人事制度が設計されているという、転職する立場から見るとずるいパターンです。
つまり、図にするとこんな感じ。
外国人を採用しているような多様性の高い企業でこのような制度を見かけます。企業がこうする理由は、前職の待遇を考慮したり、本人が他の外資などへ今後の転職を想定していることに配慮しているからです。スキルのレベルが低くても必要に応じて高めの給与が提示できるようにする目的です。どうしても綺麗な階段状で等級の定義をすることが難しいのでこうなります。
つまり、現職が800万の人は800万を下回る待遇で入社してくれないので、800万でスキルが高くなければG1で入れる、800万でスキルが高かったらG2で入れるという感じです。
幅広い年収で採用できるようにし、在籍期間中もじわじわ上げることで満足度を維持すると言う仕組みです。同僚と不公平感が出ないようにすることよりも、採用できることを優先していると言えます。
これを後で知った私は、もうちょっと年収高く伝えてもよかったなぁと激しく後悔しました。入社前にこのような情報を入手することは難しいですが、もし知り合いにそこで働く人がいたらぜひ聞いてみることをおすすめします。では、ここから、最終的な年収交渉の仕方をお伝えします。
6. 内定オファー時の上手な交渉の仕方
最終的な給与額の提示は、オファーレターという書面で内定の連絡と共にメールで伝えた後に、オファー面談で直接説明を受ける場合が多いです。
給与額の交渉というのは、企業側からしてもセンシティブなので、慎重に行う必要があります。一方で、PMはかなりの売り手市場である(候補者が有利である)状況を踏まえると、そこまで遠慮をする必要はないです。
提示された年収を上げる交渉をするシーンでは、最も企業側に効く(再検討せざるを得ない)セリフはずばり「他社からXXX万円で提示をいただいたのですが、御社でもご検討いただけないでしょうか?」です。これ一択です。
他社も内定が出ているという状況と、他者からも客観的に評価をされている金額を盾にされると、こちらも少しでも高い給与額で提示できるよう調整を行わざるを得ません。採用フローの中で評価が高い人なら、本当に真剣な調整が行われます。
ただ、交渉の仕方によっては、「あぁ、もうこの人いいや。穏便に不採用に持って行こう。」という判断になることもあるので要注意です。次のような場合にそういった判断になります。
明らかに嘘をついている場合
あなたが「A社から900万の提示があったので〜」と具体的な嘘をついたとしましょう。そのA社がどのくらいの給与額でPMを採っているか、採用側が知っている場合があります。SIerなのか事業会社なのか、コンサル寄りなのか、どのグループ会社かなど会社の種類で一定推測できたり、採用に関わっている担当者の前職がそのA社だったりする可能性も無きにしもあらずです。
ですので、他の内定がなかったり、望む給与額を提示しれくれた企業がないいが、それでもどうしても交渉したい場合は「他社でXXX万円の提示があり〜」と企業名はぼやかすようにしましょう。ただ何百人も面接している面接官は、嘘を見抜く力がすごいので、ポーカーフェイスに自信がある人のみにしましょう。
高すぎる金額で、ひたすらゴネる場合
これまでの説明通り、企業側ではすでにあなたのスキルや経験を評価して、等級の想定をしています。そしてその等級に対しては、すでに制度で給与の金額幅が決まっています。
あまりにも高い金額の要望は、あなたが面接で評価された等級よりも、もっと高い等級にしろ!俺は優秀だ!と伝えているのと同等になってしまいます。
この例の場合、企業側で提示できるのは、頑張ってもG2の上限額までです。誠実に再検討した金額を伝えても、納得できないと長期間ゴネられたり、評価に対してあまりにも高い給与額で強気で交渉してきた場合には、オファーしたものの穏便に不採用に会話を持っていきます。率直に言うと「ああ、この人はもういいや」となると言うことです。
この判断は割と早くて少しシビアです。なので、給与額についてはMAXでも3回までの交渉で合意しないと、今度は不採用になるリスクが出てしまうと覚えておいてください。
「早くてシビア」を少し説明すると、PMはチームを牽引してビジネスをリードする立場なので、客観的な評価の受け止めと、このに書いているような企業側の給与テーブルの事情があって無碍に高くはできないという事情は、少し考えればわかるだろうと思っているからです。ゴネればいけるかもしれない!としつこい言動をしてしまう人は、視座が低くビジネスが分かっていないと評価せざるを得ません。ゴネればゴネるほど評価は下がっていき、PMにふさわしくない人間性と評価が下がることに繋がるので気をつけましょう。
今回は以上です。転職活動をされているPMのみなさんに少しでも参考になれば幸いです。お読みいただきありがとうございました。
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