技術者減少で求められる技術の非属人化サイテックハブ合同会社

国内生産年齢人口（年齢15歳〜64歳に基づく統計）及び労働人口（働く意思のある人口統計）の減少に伴い、国内の基盤技術としての物質分析技術者人口の減少も確定的だ。団塊世代が労働人口の中心であった時代には、皆が食い扶持を失わないよう敢えて仕事口数や人手を費やす業務が歓迎された。それと真逆のことが起こる。人手のかかる業務から、自動無人化が導入される。それはスーパー、コンビニのレジ打ちからセルフレジやオートレジへの移行のほか、ルーチン作業に落とし込まれた物質分析の自動化を促す。
別の観点から、物質分析のプロセスのうち、これまで技術者個人の個人芸で成り立っていた部分は、技術イノベーションによって人手を機械化し、誰がやっても変わらぬクオリティーを維持しつつも、24時間分析実務を機械稼働させることでハイスループット化を実現させつつある。

労働者人口減に加え、人件費削減と属人的技術の個人間のばらつきを防ぐ為に、技術イノベーションは個人技を売りにする技術者の必要性を減じていくかのように思われる。このような状況で、現在ではかつて労働人口にあふれた時代にあった、人より抜きん出る為に個人技を磨くの技術者の競争圧力も発生しにくい。

そのような中、技術者とは何を以て、技術を働かせる労働者なのか改めて定義をシェアしたい。

物質分析プロセス

物質分析のプロセスを課題設定、分析結果取得（分析実働）、解釈に３分割した。まず、物質分析課題は、産業、学術、非営利官、ニーズそれぞれに存在する。課題は、内容こそ時代によるが、人間が考えるものであることは変わらない。課題に応じて、物質分析は実施される。物質分析の分析結果取得は、もはやOSに搭載されたアプリ内操作で実施することが一般的になった。実際に物質をハンドリングする分析試料の前処理も自動化されている。個人の技術による試料の処理の精密さのばらつき（属人的）は、自動化で非属人化したことにより同一精度を維持して多検体を処理できるようになった。また、人と異なり、機械であれば適切なメンテナンスを挟みつつも、24時間、年中無休で稼働し分析試料の処理から結果取得まで可能になる。物質分析の分析結果取得の要件は、いつでも、どこでも、誰でも機械でも再現できる結果を取得することである。これが叶わないうちは、機械化は意味をなさない。技術者の特定の誰かだけが分析結果を再現でき、他の人には再現できない、という分析結果取得も、あることはある。分析操作技術自体が属人的熟練や手技を要する場合だ。属人的要素が大きい限りは、ハイスループット化は困難だ。将来、継続的な技術の継承のために自動化は目指す方向ではあるが、ハイスループットのニーズが弱い物質分析領域では、自動化、非属人化への移行は遅れる傾向にある。さて、結果取得が済むと、その結果が、課題に対してどのような解釈を与えるか、という段階になる。この部分で、再度人間が考える必要が発生する。

もし、課題設定と解釈までをAIが行う未来が来ると、人間の存在必要性は変わる可能性はある。しかし、おそらく当面は、解釈に人間の判断は不可欠で、そこには属人的な経験、視点、知識が非常に重要となる。