睡眠は、毎晩7時間から9時間ほど取るのが推奨されています。
しかし、世間一般において、毎晩の睡眠時間が7時間未満であることが、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の調査で明らかになりました。
「睡眠は、心身を休め、新たな活力を得るための大事な時間です」と話すのは、睡眠と不眠症を専門とする「The Sleep Expert」のコーチ Elina Winnel氏です。
睡眠不足が長期間にわたって続くと、いわゆる思考力だけでなく、物事をさまざまな視点から捉える水平思考力(ラテラルシンキング)も低下します。
さらに、ストレスレベルが上昇し、気分に影響を及ぼし、不安障害やうつ症状の一因になることもあります。
何よりも重要だと思われるのが、身体的な健康が大きく損なわれることです。
自分が「慢性的に睡眠不足な人」の1人だと思ったなら「それを解消するにはどうすればいいのだろうか?」と疑問を抱くことでしょう。
これは複雑な疑問であり、それに対する答えもひと言では済みません。
しかし、睡眠を改善することは可能であり、心身の健康や幸福に数々のメリットをもたらしてくれます。
「重要なのは、睡眠不足を我慢する必要はないのだと知ることです」とWinnel氏は言います。
睡眠不足が招く、健康への長期的な影響
慢性の睡眠不足は、高血圧や糖尿病、肥満、心疾患、脳卒中といった、さまざまな慢性疾患のリスク上昇と関連があるとされています。
睡眠が十分に眠れていないと、短期記憶や長期記憶にも影響が及び、免疫システムの働きが低下し、気分も左右されるほか、事故に遭うリスクも高くなります。
「食生活に気を配ったり、運動に時間を費やしたりする人はたくさんいます。けれども、健康を維持するうえでもうひとつの柱となる睡眠には、十分な注意が払われていません」とWinnel氏は指摘します。
睡眠は、健康とウェルビーイングを最高の状態に保つための柱のなかで、もっとも過小評価される傾向にあります
「睡眠負債」は、必ずしも解消できない
睡眠不足が長期にわたって続いている場合には、足りていない分を完全に取り戻すことはできません。
「解消できるのは睡眠負債のごく一部、一般的にはおよそ10日分だけです」とWinnel氏は言います。
睡眠負債が10日を過ぎてしまうと、加齢につながってしまいます
しかし、睡眠を優先させる決断は、けっして遅すぎることはありません。睡眠を何よりも重視すれば、健康面で数々の有益な効果が得られるからです。
うれしいことに、実際によく眠れるようになると、その効果をすぐに実感できるようになります。
睡眠が十分にとれていれば、病気になる頻度も下がり、適度な体重を維持しやすくなります。
慢性疾患にかかるリスクも低下しますし、思考がより明晰になり、気分も改善するのです。
睡眠の質を上げるには
とはいえ、睡眠はそう簡単には改善できません。ひっきりなしに邪魔が入り、ストレスレベルも高い現代社会であれば、なおさら大変です。
本当に眠れない場合や、睡眠時無呼吸症候群などの病気が疑われる場合は、医師に相談して、必要な検査や治療などを受けることが大切です。
一方で、よく眠れない原因がむしろ、ストレスやカフェイン、睡眠環境のまずさにある場合には、何が問題なのかをじっくり検討することが非常に重要となってきます。
「まずは、睡眠の重要性を理解し、眠ることを優先させるのが第一歩です」とWinnel氏は助言しています。
考えられる対策として、睡眠改善を目的としたさまざまなテック機器やツールを試してみるのも手です。
また、寝つきを良くし、熟睡しやすいような夜のルーティンを習慣づけたり、寝る前に、不安をかき立てるような悩みを考えないようにしたり、睡眠コーチに相談して、自分の睡眠習慣を評価してもらったりするのもいいでしょう。
1つの対策がうまくいかなければ、別の方法を試してみてください。そうすればいつか、良質の睡眠がもたらしてくれる多くのメリットを実感できる日が来るかもしれません。
──2022年1月29日の記事を再編集のうえ、再掲しています。
訳:遠藤康子(ガリレオ)
Source: CDC, The Sleep Expert, Healthline, My Health Finder