木曜日, 5月 22, 2025
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応答せよ。あの時のわたし~映画『わたしの頭はいつもうるさい』(第18回田辺·弁慶映画祭にて俳優賞受賞作)~アンマchan

🧠 あらすじと概要:

あらすじ

映画『わたしの頭はいつもうるさい』は、25歳の主人公・古川のぞみが、小説家を目指して上京するも現実に直面し、思春期の終わりを迎える物語です。彼女は、18歳の自分・ノゾミから問いかけられ、自身の選択や夢を振り返ります。現実の厳しさや挫折に悩む中、彼女は自分が本当にやりたかったことを見つけ出そうと奮闘します。映画は、彼女の内面的な葛藤や成長を描き、思春期の苦悩をリアルに反映しています。

記事の要約

本作は、自分の夢に挑戦する25歳の女性が、18歳の自分と向き合う過程での成長を描いています。過去の自分を問い直しながら現実に抗う姿が印象的で、特に「思春期をどう終わらせるか」というテーマが深く掘り下げられています。彼女の内面的な葛藤は、多くの人が共感できるもので、成長の過程で見つけるべき真実を探求するストーリーは感動的です。映画は、過去と現在のつながりをテーマにしたユニークな構造で描かれており、その終わり方には感動が詰まっています。

応答せよ。あの時のわたし~映画『わたしの頭はいつもうるさい』(第18回田辺·弁慶映画祭にて俳優賞受賞作)~アンマchan

アンマchan

そうか、「思春期」って、こう終わらせるのか……

映画『わたしの頭はいつもうるさい』(2025年。以下、本作)のラストシーンにじんわり感動し、その後のトークイベントに登壇した宮森玲実監督の言葉を聞いて、そう思った。

25歳の“のぞみ”は小説家を目指し上京したが鳴かず飛ばず。そんな時に18歳の“ノゾミ”から問い詰められる。「ちゃんとやったか? 有言実行、東京でパァーっとひと花咲かせたか?」

18歳の自分と対峙していく中で25歳は向き合わなかった様々な事柄に気がついていく。

本作公式サイト「Story」

昔から「東京で一旗揚げる」と言う言葉があり、昔どころか今だって、その気概で「花の都大東京」にやって来る人は、それなりにいるのではないか。本作でも、主人公の古川のぞみ(宮森玲実)は大作家を夢見て、ではなく、当然なれると自信満々で、前途洋々とばかりに意気揚々と上京してきた。

しかし、現実は、そんなに甘くない……ということを、いつの時代の物語も紡いできた。

しかし本作が特異なのは、『18歳の“ノゾミ”』がそれを悔いたり、甘くなかった現実に埋もれかけている『25歳の“のぞみ”』を責めたりしないことだ。さらに言えば、今、現実の厳しさにさらされている『25歳の“のぞみ”』は、そのことを他人-具体的には『18歳の“ノゾミ”』時代から腐れ縁のクズ彼氏・晋平(細井じゅん)-や、それまでの人生で経験してきたことのせいにして逃げない。かといって、自身をストイックに責めたりもしない。常に、現状に抗う自身を肯定しながら、同時に、抗えきれずに流されてしまう自分も肯定する。しかし、それも25歳-”アラサー”-までが限界というのが世界の相場らしい(パンフレットに掲載された、映画評論家の松崎健夫氏の寄稿文で知ったのだが、そういうのを『クウォーター・ライフ・クライシス』と呼ぶのだそうだ)。『25歳の“のぞみ”』も御多分に洩れず、弱気になり、『芥川賞を獲るまで帰らない』と啖呵を切って出てきた実家に戻ることを決意する。

そのタイミングで再会した、高校時代の親友・ゆうこ(笠松七海。唯一田舎に残った彼女が”世間的”に見れば、一番成功しているところが皮肉だ)に『実家に帰るまでにやりたいことを10個挙げて実行する』ことを勧められる。

本当にやりたかったことって何だっけ?

『25歳の“のぞみ”』は考える。考えれば考えるほど、頭のなかがうるさくなる。
あまりのうるささに『25歳の“のぞみ”』は混乱し、衝動的に走る、走る、走る。

古川のぞみ25歳、私には何もない(略)古川のぞみ、25歳、それだけ!まだなにもわからない、答えもない! 応答せよ、こちら25歳、応答せよ!私……

応答した『18歳の“ノゾミ”』が並走して、走る、走る、走る。
その切実な心の叫びに私は圧倒され、そしてスクリーンの中の『25歳の“のぞみ”』の姿は、上京したてで慣れない都会と慣れない仕事、田舎とは違う人付き合いなどに疲れ切った『25歳の“わたし”』も『まだなにもわからな』かった。そんな『25歳の“わたし”』を思い出して、どうしようもなく切なくなった。

古川のぞみ25歳!私にはまだ何にも無い!何にも無いけどいいじゃないかそれで!

走りながら叫ぶその『まだ何にもない』は、『何も得られなかった』という後悔にもとれるし、『まだ何者でもない』という希望にもとれる。

その二つのを”あわい”を行き来するうち、『25歳の“のぞみ”』は見つけた。
本当にやりたかったこと、いや、やらなければならないこと。

そう、それこそが、この”こじらせ”た「思春期」を終わらせることだった。

どうやって終わらせたか。本作を観てほしい。
観ればわかる。

そうか、「思春期」って、こう終わらせるのか……

メモ

映画『わたしの頭はいつもうるさい』
2025年5月21日。@テアトル新宿(アフタートークあり)

『18歳の“ノゾミ”』の『応答せよ』の呼びかけに、『25歳の“のぞみ”』の応え、互いに交信しながら進む物語構造は少し複雑で、現実と『頭のなか』の境界が曖昧になっている。その極限が、これが計算ずくだったら最高に凄いのだが、劇中で俳優を目指す晋平に付き合って受けたオーディションに、『25歳の“のぞみ”』だけが受かってしまうというエピソードだ。『え、でも私、女優は、ムリ』と言う『25歳の“のぞみ”』を演じているのは、本作の脚本・監督を務めた宮森玲実さん自身であり、本作は『第18回田辺·弁慶映画祭にて俳優賞』を受賞したのである。

まさに、現実と映画の境界が曖昧になっている。

上映後のアフタートークに登壇したのは、宮森監督同様、女優であり監督でもある、秋葉美希さん、村田唯さんと、急遽登壇が決定した今泉力哉監督(表題写真順)。

細井じゅんさん監督・出演作

鈴木卓爾さん出演作

アンマchan



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