従来のマーケティングの終焉― 売り文句より、うさんくささが勝る日 ―出水堂

もう限界なんじゃないかと思う。この「マーケティング」ってやつ。売るための技術、売るための心理操作、売るための言葉選び――そういうの全部ひっくるめて、「ああ、これって結局、信用されなくなるやつだな」と思ったのだった。⸻売りたい顔が透けて見えると、人は引くあんまりにも「売ってます」感が濃いと、それだけで人はサッと引く。・「今だけ！」とか言われると、→じゃあ買わない。・「残りわずか！」とか言われると、→よけい冷める。かつては効いたその手のフレーズも、もうだいたいの人が「その手口、知ってます」って顔をしてる。⸻売ろうとしてない人から、なぜか買っちゃういまの時代、いちばん売れるのはたぶん「売ろうとしてない人」だ。ただ好きで紹介してる、みたいな。本当にうまいラーメン屋を教える友達みたいな。金の匂いがしないから、こっちも安心して財布を出せる。商売ってのは、なんとも皮肉なもんで、がんばって売ろうとすると売れなくて、気楽にしてる人のとこに人が集まってくる。⸻マーケティングが壊したのは信用だったかもしれん「どうやって売るか」ばっかり考えてたら、「この人、本当にいいと思ってるの？」って疑いが出てくる。ほんとはうまくないのに「これが最高です！」とか言われると、もう全部がうさんくさくなる。マーケティングって、売る道具のはずが、いつの間にか「警戒される道具」になってしまったんじゃないかと思う。⸻結局、誰が言ってるか、なんだよなどんなに良いコピーを書いても、どんなにテクニカルに仕掛けても、最後は「この人の言うことなら聞く」っていう信頼のほうが強い。好きな人が紹介してるから買う信用してる人が薦めてたから試すそういう流れって、数字じゃ測れないけど、でかい。⸻「売ること」が見えると、引かれるかつてのマーケターは、売るために人の感情を計算し、言葉を削って、演出して、熱量を仕掛けた。でも今は、その“努力”が見えた瞬間に引かれる時代だ。「うわ、そういう手口か」ってなる。むしろ、ラフで、ぐだぐだで、気負ってない方が信じられる。⸻売るより、信じられることこれはもうスローガンにしてもいい。売るな。信じられろ。この逆説が、いまの商売を物語ってる。⸻マーケティングよ、土に還れ別に「やめちまえ」と言いたいんじゃない。ただ、今のままじゃ使えないだけだ。信頼も、共感も、熱も、マーケティングが「持ってた」頃の何かが全部、使い古されたフレーズとともに風化していった。きれいに着飾った販促より、汚れたエプロンで「これ、うまいよ」と笑うおじさんの方が、今は強い。そういう時代なんだよな。