幸福とは何か。お金? 健康? それとも……。
世界の幸福度をランキング形式で発表する「世界幸福度報告書」。2025年版が公開され、意外な事実が明らかになった。幸福のカギは、私たちの身近なところにあるのかもしれない。
幸福大国フィンランド、8年連続1位!
報告書によると、フィンランドは7.736(10点満点)という高スコアで、8年連続の1位を獲得。ヨーロッパ諸国では、リトアニア(16位)、スロベニア(19位)、チェコ(20位)も幸福度を上昇させている。
いっぽう、アメリカは過去最低の24位、イギリスも2017年以来最低となる23位という結果に。ランキング上位の国と下位の国。その違いはどこにあるのか。
落とした財布、戻ってくる?
信頼と幸福度の意外な関係
同報告書は、幸福度を左右する要素として「他人への信頼」に着目。ある、興味深い実験結果が報告されていた。
「落とした財布が戻ってくると思うか?」という質問への回答と、実際の財布の返却率を比較したところ、人々は想像以上に他人を疑っていることが判明。実際の返却率は、人々の予想の約2倍にものぼるというから、私たちは、自分が思っている以上に親切な社会に生きているのかもしれない。
食卓を囲む幸せ
「孤独」は幸福度を下げる
さらに、同報告書は「誰かと一緒に食事をすること」と幸福度の関連性も指摘。世界的に見ると、4~5人家族の世帯がもっとも幸福度が高い傾向にあるという。
メキシコやヨーロッパでは、大家族で暮らす人々の幸福度が高い。いっぽう、ヨーロッパの一人暮らし世帯の増加や、アメリカにおける過去20年間での一人暮らし世帯の53%増加など、社会的なつながりの希薄化も課題に。
2023年には、世界の若年層の19%が「頼れる人がいない」と回答。これは2006年と比べて39%も増加している数値だ。オックスフォード大学Wellbeing Research Centre所長であり、「世界幸福度報告書」の編集者でもあるJan-Emmanuel De Neve氏は、大学の公式リリースのなかで次のように述べ、誰かと食卓を共にすることの重要性を説いている。
「社会的な孤立と政治的分極化が進む現代において、人々を再び食卓に集める方法を見つけることが重要。これは、個人と社会全体のウェルビーイングにとって不可欠である」。
真の幸福とは? コミュニティの力を取り戻すために
テクノロジーの発展で、私たちは便利で快適な生活を手に入れた。いっぽうで、人間関係の希薄化や社会の分断といった新たな問題にも直面している。
「世界幸福度報告書2025」は、私たちに真の幸福とは何かを問いかけている。他人への信頼、共に食事をする温かさ、社会とのつながり……それらを意識的に取り戻すことで、私たち一人ひとりの幸福度が高まるとしたら……。小さなコミュニティから世界まで、つながりを取り戻すための第一歩を、私たち一人ひとりが踏み出すときがきているのかもしれない。