木曜日, 6月 5, 2025
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川島雄三監督「女は二度生まれる」〜“不見転芸者“若尾文子はいかに生まれ変わるのかbowlane

🧠 あらすじと概要:

あらすじ

映画「女は二度生まれる」は、1961年に公開された川島雄三監督の作品で、若尾文子が主演する。物語は、売春防止法が施行された時代背景のもと、若い芸者・小えん(若尾文子)が様々な客と関わりを持ちながら生きる姿を描いている。小えんは不見転(みずてん)芸者としての生活を送りつつ、過去の悲劇や人間関係に悩みながら自らのアイデンティティを模索している。彼女は銀座のクラブで本名のとも子として再出発を試みるが、実際には何も変わっていない自分に気づく。

記事概要

この記事は映画「女は二度生まれる」についての感想文であり、主に若尾文子の演じる小えんのキャラクターを中心に物語のテーマや時代背景を考察している。著者は映画の中で描かれる小えんの強さと弱さ、そして彼女の生き方が、監督と女優の力によって品位を保っている点を評価している。小えんは芸者からクラブ嬢へと転身するが、本質的には何も変わらない皮肉を感じさせる結末が余韻を残す。また、映画を通じて彼女が本当に「二度生まれる」ことができるのかという問いが提起されている。

川島雄三監督「女は二度生まれる」〜“不見転芸者“若尾文子はいかに生まれ変わるのかbowlane

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「妻は告白する」(1961年 大映)に続いて、若尾文子主演映画を、もう一本。“不見転(みずてん)芸者“という言葉がある。

いくつか辞書にあたったが、明鏡国語辞典第三版が一番しっくりきた。見出しは、<みずてん[見ず転・《不見》転>である。

<芸者などが、金次第でどんな相手にも身をまかせること。また、その芸者など。「不見転芸者」>

先日書いた「妻は告白する」の公開が1961年10月、その3ヶ月前、1961年7月公開に公開されたのが川島雄三監督の「女は二度生まれる」(大映)である。(U-NEXT配信あり)

本作での若尾文子の役どころは、“不見転芸者“である。それを、「幕末太陽傳」(1957年 日活)の川島雄三が監督し、フランキー堺も出演する。これだけで見る価値があると思うではないか。

時代背景は、売春防止法が施行され、1958年公娼制度が廃止、赤線がなくなった。そんな東京である。芸者・小えん(若尾文子)と山村聰が演じる客。二つの布団が並べられた座敷で、小えんは電気を消してよいか尋ねる。枕元のスタンドをつけ、寝そべって煙草を吹かす二人。腹ばいで横たわる小えんを、足の方からカメラが撮る。映るのは、若尾文子の臀部と背中。上手い!小えんは、名刺をねだる。警察の取り調べを受けた時、恋人の名前を知らないと不味いと。小えんは、警察からたたかれる可能性のある“芸者“なのだ。ここからは、ネタバレである。小えんには、馴染みの客もいれば、一見もいる。馴染みの一人の矢島を演じるのは山茶花究、いかにもという男である。一方、スポンサーの旦那に連れられて、座敷を共にするのが、寿司屋の板前・野崎。これがフランキー堺。座敷で飲み食いした後、スポンサーの男は小えんを野崎に当てがう。小えんが身を置く置き屋は、靖国神社の近く。小えんの両親は空襲で死亡、長野の親戚の家にいたが、東京に戻り、今の商売に。戦争の影が少し感じられるのだが、小えんは、今の商売を楽しんでいるようにも見える。彼女の本性であるようにも。全編通じて、小えんという強さと弱さが同居している女性を、若尾文子が小気味よく演じていて、ウェットな感じがない。品の悪い世界を描きながらも、決して下卑た印象を与えないところが、監督と女優の力だろう。タイトルは「女は二度生まれる」。小えんは、芸者をやめ、本名のとも子という名で銀座のクラブで働く。ただし、本質はなにも変わらない。「これが二度目の“生“なの?」と思いながら観ていると、クラブにやってきた筒井(山村聰)と再開し、彼の二号になる。「これだと三度では?」。さらに、パトロンとなってくれた筒井が他界する。筒井は、小えんを一人前の女性にしようと援助してきたのだが、彼の墓参をする彼女は、蝋燭を口で吹いて消す。彼女の無知、筒井の努力が虚しく終わった象徴的な場面のように見えた。

小えんは、映画館で知り合った青年と上高地に向かうのだが、途上で変心する。青年一人が上高地に向かうバスに乗り、小えんは一人駅に残る。彼女は二度生まれることができるのか。余韻を残した、名シーンである

bowlane

1961年生まれ男性です。ロンドンに10年、香港に3年在住しました。仕事、海外経験、先人たちにも導かれた本、マンガ、映画、演芸や様々な舞台を、自分なりに吸収してきました。現在進行形の事柄も含め、アウトプットしています。読んでくださる方の日々が、少しでも潤えば幸いです



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