日曜日, 5月 4, 2025
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宇宙で一番大きな星は?壮大過ぎる星のサイズ


「宇宙で一番大きな星」と聞いて、あなたはどのくらいのサイズを思い浮かべますか?

広い宇宙でもっとも大きい星はどんな星なのか? というのはかなりロマンあふれる疑問です。

宇宙には、私たちの想像をはるかに超える、途方もない大きさをもった恒星が存在しています。

ただ、星は無限に大きくなれるわけではありません。

今回は素朴な疑問から、宇宙に形成される星の限界と観測されている想像を絶するほど巨大な恒星について解説していきます。

目次

  • 観測上最大の恒星――おおいぬ座VY星
  • 宇宙で一番大きい惑星はどのくらいなのか?
  • 地球型惑星の最大は?

観測上最大の恒星――おおいぬ座VY星

現在、観測で知られている中で最も巨大な恒星のひとつが、「おおいぬ座VY星(VY Canis Majoris)」です。

この星は、地球から約1,170光年の彼方に位置する赤色極超巨星(red hypergiant)で、その半径はなんと太陽の約1,420倍にも達します。

太陽とおおいぬ座VY星の比較
太陽とおおいぬ座VY星の比較 / Credit:Wikimedia Commons

もしこの星を太陽の位置に置き換えたとしたら、その表面は土星の軌道に達するという。つまり、太陽系のほとんどを飲み込むほどの大きさなのです。

この巨大な星が注目されるようになったのは、比較的古い時代にさかのぼります。

18世紀にはすでに変光星(variable star)として知られていましたが、そのサイズなど具体的なことがわかってきたのは現代に入ってから、ヨーロッパ南天天文台(ESO)のVLT干渉計(VLTI)を用いた高解像度の観測によって、より詳しいデータが得られるようになってからです。

特に近赤外線の分光干渉計(spectro-interferometry)による最新の研究では、おおいぬ座VY星が水蒸気や一酸化炭素などの分子層(molecular layers)をまとい、しかもそれが非対称に広がっている様子まで明らかになっています。

おおいぬ座VY星の周囲を囲む非対称星雲の画像。星本体の姿は星雲に阻まれて直接は見えない。/Credit:NASA, ESA, and R. Humphreys (University of Minnesota)

この観測によって測定されたのが、ロスランド平均直径(Rosseland-mean photospheric diameter)という指標です。

ロスランド平均直径とは、恒星の「表面」を光が自由に飛び出せる層の位置として定義したもので、さまざまな波長での光の通りやすさ(不透明度)を平均して算出しています。

太陽を含め恒星はガスでできているため、「ここからが表面」というはっきりした境界がありません。

太陽を見ていると星の表面らしきものがあるように見えますが、実際はそれはガスの層の1つに過ぎません。そのため特定の波長だけを見ているだけでは、それが正確に星の表面とは言えないため、内部から出てきた光が、ほぼ自由に外へ飛び出せるようになる層を、さまざまな波長をバランスよく平均することで計算し、「本当に代表的な表面」を決めているのです。

この方法を用いて、おおいぬ座VY星の直径は11.3ミリ秒角(mas)と高精度で測定され、物理的な大きさでは太陽の約1,420倍に相当すると算出されました。

人類が見つけていないだけで、理論上はもっと大きな星もあるのか?

観測されている星の中で最大のものは、この「おおいぬ座VY星」が代表的ですが、宇宙は広いため「じゃあ、人類の知らないもっと大きな星もあるのでは?」と考える人もいるかもしれません。

しかし、実は恒星の大きさには上限が存在します。

天の川銀河の中心近くに存在するアーチ星団(Arches Cluster)の観測に基づく研究によると、恒星の質量には上限があり、およそ150個分の太陽質量(solar mass)が限界だと考えられています。

この上限は、放射圧(radiation pressure)と呼ばれる現象が関係しています。恒星は核融合(nuclear fusion)によって内部から強いエネルギーを放ちますが、質量が大きくなりすぎると、中心部での核融合が加速して大量のエネルギーが生じ、これが強い放射圧となって周囲のガスを押しのけてしまうのです。

これにより、星が成長しようとしても、星に降り積もるガスを取り込むことができず、それ以上大きくなれなくなるのです。

この発見は、アーチ星団の星々を詳しく調べた結果に基づいています。

この星団は非常に多くの若くて重い星たちを抱えていますが、そこにも150太陽質量を超える星は見つかっていませんでした。これにより、「恒星の質量上限」という宇宙のルールが裏付けられています。

ただ、質量と直径はまた別問題です。

おおいぬ座VY星の質量はせいぜい太陽の20倍前後です。しかしその半径はなんと太陽の約1,420倍です。

太陽の20倍ほどの質量の星は、晩年になると中心部で核融合を行う燃料である水素が尽きて重力に反発するエネルギーを生み出せなくなり、自重で潰れだします。しかしその自重で潰れる圧力によって水素からヘリウムの核融合に切り替わり、再度核融合が点火し今度は膨張を始めます。

こうして晩年の恒星は、大きく膨らむ赤色超巨星という状態に鳴ります。おおいぬ座VY星はこの中でも特に大きく膨らんだ赤色極超巨星と呼ばれる分類で、とてつもなく大きく膨らんでいる状態です。

ただ、これ以上重い恒星(約太陽質量の30倍以上)だと、今度は膨らみづらくなり、外層を吹き飛ばして青色巨星という状態になります。

そのため宇宙最大の星は、理論上もだいたい「おおいぬ座VY星」のサイズが上限になるだろうと予想されるのです。

宇宙で一番大きい惑星はどのくらいなのか?

恒星について見てきましたが、では惑星の場合はどうなのでしょうか?

私たちが「星」と聞いたとき、頭に浮かべるものは人それぞれかもしれません。

太陽のように自ら光り輝く恒星を思い浮かべる人もいれば、私たちが住む地球などの惑星をイメージする人もいるでしょう。

では、宇宙で発見されている中で、最大の惑星とはどれほどの大きさなのでしょうか? また、地球のような岩石でできた星なら、どこまで大きなものが存在するのでしょうか?

まず、惑星という分類の中で現在知られている最大のものの1つが、地球からおよそ316光年離れた位置にあるHD 100546という若い恒星の周囲を回る「HD 100546 b」という惑星です。

この惑星は太陽系最大の惑星である木星と同じ巨大ガス惑星ですが、その大きさは木星の約7倍もあります。

HD 100546 bの想像図/Credit:ESO/L. Calçada

仮にこの惑星が太陽系にあったなら、私たちが知っている木星とは比べものにならない巨大な存在感を放っていたことでしょう。

HD 100546 bはまだ形成途中の若い惑星、いわば“生まれたての赤ん坊”のような状態にあり、周囲には惑星を生み出す材料でありガスと塵の円盤が広がっています。

2013年、スイスの研究者サシャ・クワンツらによってその存在が報告され、今も成長を続ける若い惑星として、貴重な観測で対象となっています。

そしてこうした惑星のサイズにも、恒星同様に上限が存在します。

ガス惑星は質量を増やしても、あるところから半径がほとんど大きくならなくなります。質量が増えればそのぶん重力も強くなり、内部のガスを圧縮してしまうため、直径はあまり変わらず、むしろ密度が高まる方向へ進むのです。たとえば木星の10倍の質量を持つ惑星でも、直径は木星とさほど変わらないか、やや小さくなることがわかっています。

つまり、惑星はどんどん巨大化できるわけではなく、質量と大きさには自然なバランスが存在しているのです。

HD 100546 bがこれほど巨大に見えるのは、まだ若く高温で、内部からの熱によってガスが膨張しているためだと考えられています。そのため時間が経ち、内部の熱が冷めていけば、現在よりもコンパクトな惑星へと収縮していく可能性が高いようです。

地球型惑星の最大は?

では、地球のような岩石でできた惑星ならどうでしょうか?

現在、観測によって知られている最大級の岩石惑星の1つは、Kepler-277cという星です。

この惑星の直径は、地球の3.36倍倍です。こうした巨大な地球型惑星(岩石惑星)を「スーパーアース(super-Earth)」と呼びます。

先程の恒星の例が極端だったため、直径が3倍と聞くと、思ったほどではないな、と思う人もいるかもしれませんが、体積に換算すれば、直径が3.36倍なら体積は3.36³、つまりおよそ38倍にもなります。

さらに驚くべきはその質量で、なんと地球の約64.2倍にも達しています。

Kepler-277cは見た目の大きさ以上に、非常に高密度の惑星で、平均密度はおよそ9.3 g/cm³にも達し、これは地球の密度(約5.5 g/cm³)を大きく上回ります。

そのためこの惑星の表面重力は、地球の約5.7倍になると予想されています。

この重さはKepler-277cが単なる岩石質ではなく、大量の金属成分(おそらく鉄やニッケル)を内部に含んでいることを示唆しています。

このような惑星が形成される理由は詳しくわかっていませんが、現在考えられている有力なシナリオは2つあります。

ひとつは、Kepler-277cは惑星形成の降着円盤が異常な高密度の固体物質でできており、それが集まって成長したからという説です。

もうひとつは、もともとガス惑星だったが、恒星からの強烈な放射によってガスを失い、中心のコアだけが残ったという可能性です。

恒星に近いガス惑星はガスを吹き飛ばされコアだけが残る可能性がある。/Credit:Wikimedia Commons

ただし、現在観測されているKepler-277cの非常に高い密度を説明するには、単なるガス喪失だけでは不十分な可能性も指摘されています。

系外惑星の観測は、太陽系内の惑星を観測するようにはっきりと見ることはできません。そのためまだこの惑星についてはわからないことが多いのです。

しかし、惑星の中心部も超高圧がかかっていると推測され、地球とはだいぶ異なる極端な環境であることは確かでしょう。

このように、Kepler-277cは単に「地球より少し大きい」などというスケールでは語れない、異常な重力と内部構造を持つ、超巨大な岩石惑星なのです。

宇宙にある天体には理論的な限界があり、無限に大きくなれるわけではありません。

それでも、巨大な天体の持つ極端さは、宇宙の壮大さを感じさせ我々を驚かせてくれます。

全ての画像を見る

参考文献

Stars can only grow so big
https://www.nature.com/news/2005/050307/full/news050307-11.html?utm_source=chatgpt.com

元論文

Fundamental properties and atmospheric structure of the red supergiant VY Canis Majoris based on VLTI/AMBER spectro-interferometry⋆,⋆⋆
https://doi.org/10.1051/0004-6361/201219126

CONFIRMATION AND CHARACTERIZATION OF THE PROTOPLANET HD 100546 b—DIRECT EVIDENCE FOR GAS GIANT PLANET FORMATION AT 50 AU
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/0004-637X/807/1/64

A remnant planetary core in the hot-Neptune desert
https://doi.org/10.1038/s41586-020-2421-7

KEPLER-277 b : A SUPERMASSIVE TERRESTRIAL EXOPLANET IN THE KEPLER-277 PLANETARY SYSTEM(PDF)
https://www.hou.usra.edu/meetings/lpsc2020/pdf/1055.pdf

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部

フラッグシティパートナーズ海外不動産投資セミナー 【DMM FX】入金

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