金曜日, 5月 23, 2025
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大森元貴×菊池風磨のW主演で贈る“体験型映画”「#真相をお話しします」あなたも当事者?ヒットの真相を紐解く – 映画ナタリー 特集・インタビュー


大森元貴(Mrs. GREEN APPLE)と菊池風磨(timelesz)がダブル主演を務める映画「#真相をお話しします」が現在公開中だ。結城真一郎の同名小説をもとにした本作は、あらゆるゴシップの真相を暴く生配信チャンネル「#真相をお話しします」で展開されるミステリー。スピーカー(話し手)に選ばれた者が、真相の暴露と引き換えに観衆からの投げ銭を獲得するため、一世一代の大勝負を繰り広げるさまが描かれる。謎めいた男・鈴木を大森、過去に秘密を抱える警備員・桐山を菊池が演じ、中条あやみ、岡山天音、福本莉子、伊藤健太郎、栁俊太郎、綱啓永、田中美久、齊藤京子、原嘉孝(timelesz)、桜井ユキ、伊藤英明もキャストに名を連ねた。

4月25日の封切りから多くの観客を“当事者”へといざない、映画を“観るもの”から“体験するもの”にアップデートさせた本作。観客動員数120万人を突破し、公開18日間での興行成績は2025年邦画実写作品の1位を記録した。映画ナタリーではヒットの真相を紐解くため、宣伝施策の数々や、作品に込められたメッセージに迫る特集を展開する。情報解禁前にキャストが行った“ひみつぽーず”、「ふるはうす★デイズ」を用いた戦略について解説した。また配給の東宝は初めて作品公式YouTubeチャンネルを開設。同チャンネルで仕掛けられた“2択”の意図とは?

文 / 大畑渡瑠

「昨今の若い人は本を読まなくなったが、届かせるためには果たしてどうすればよいか?」作家・結城真一郎のそんな思いから2022年に短編集「#真相をお話しします」が刊行され、およそ3年後に映画として生まれ変わった。製作の前提にあったのは、デジタルネイティブと呼ばれる世代が匿名で発信することを“当たり前”だと認識していること。短編集だった原作を“生配信チャンネルで真相を告白する”という基軸で1つに集約し、“SNSの闇”をテーマとした新たな世界観を作り上げた。本作の試写を観たある学生は「(個人情報を)さらされるのは、殺されるよりも怖い……」と吐露。制作の段階からターゲットを10~20代の若者世代に限定し、「生配信でのコメントが流れる速度は絶対に落とさない」「『“投げ��”とは〇〇のこと』などの説明セリフは極力排除する」と、ある種“不親切”に制作することによって、逆に若者たちが物語に入り込みやすい構造を作っていたのだ。

「#真相をお話しします」より、大森元貴演じる鈴木

「#真相をお話しします」より、菊池風磨演じる桐山

「#真相をお話しします」より、菊池風磨演じる桐山

最初に注目を集めたのは、キャスト陣が唇に人差し指を当てた“ひみつぽーず”の写真を自身のSNSに投稿したこと。まだキャスト解禁前である2024年秋頃に行われたこの行為によって「もしかしたら何かの共通点があるのでは?」とファンの期待を生む効果も果たした。このアイデアは、なんと大森元貴によるものだという。大森の「あえて映画の衣装を着て(各々が)写真を撮り、新作映画の告知だと言わずに投稿したら面白いのではないか?」という発案を受け、キャスト陣は11月18日から12月9日まで順番に意味深げな投稿を行う。するとSNSでは「ひみつぽーずの意味はなんなんだ」「なぜこんなに思わせぶりなの」「早く情報解禁して!」という声であふれた。

出演情報解禁前に“ひみつぽーず”をした写真を投稿したキャスト陣

出演情報解禁前に“ひみつぽーず”をした写真を投稿したキャスト陣

その後、12月10日に大森、菊池風磨の出演が解禁されたが、ファンはその時点で「私、実は共演者を知っているんだよね」と“プチ自慢”を開始。キャストが“真相”をリークし、観客がSNSで盛り上がるという構造は双方を“当事者”にすることにつながり、劇中ともリンクしていた。

特に力が入っていたのは、作品の公式YouTubeチャンネル「#真相の部屋」の運用。配給を担った東宝では、作品単体のチャンネルを立ち上げるのが史上初だった。そんな前代未聞の試みとして、#1の動画が投稿されたのは2024年12月。大森は動画内で「僕らずっと最後までやるってことですか?」などと言っていたが、その後5カ月間にわたって「ジングル作り」「互いにプロフィール帳を制作する」「写真を撮りながらNGワード対決」といった独自コンテンツを届けてきた。もはや映画とは関係なく、大森・菊池の新番組を観ているような気分で動画を楽しむことができる。

「#真相の部屋」のサムネイル(#6)

「#真相の部屋」のサムネイル(#6)

#22では「よにのちゃんねる」とのコラボが実現。二宮和也の“サプライズ好きすぎ問題”を語ったり、山田涼介に映画の魅力をプレゼンするコーナーも展開された

#22では「よにのちゃんねる」とのコラボが実現。二宮和也の“サプライズ好きすぎ問題”を語ったり、山田涼介に映画の魅力をプレゼンするコーナーも展開された

意外にもYouTubeチャンネルの開設は映画製作当初から構想されていたことだったという。本作のコンセプトである“体験型映画”を体現する施策だ。生配信チャンネル「#真相をお話しします」に多くの人々が参加していた状況と同じく「#真相の部屋」を視聴者が消費することで、「この動画を観る行為自体が映画とリンクしているのかも」「『つまらない』と気軽にコメントしちゃったけど、その行動って映画に登場する“視聴者”と同じ?」と、その行為自体が映画体験の一部となった。

「#真相の部屋」では「チャンネル名」「どのパブグッズを制作するか」「完成披露試写会のタイトル」など、たびたび視聴者に2択で回答を募る様子も見られた。劇中の終盤では「#真相をお話しします」の参加者が、いかに自分の1票が重いかを思い知らされる“命の選択”を行う場面が展開される。同シーンとも連動するこの施策は、まさに「体験型映画」というテーマの具現化で、映画内の状況を観客が現実世界で経験させられる企画だった。なんてことのない質問も全部2択にし、「なんで(この問題まで)2択にされているのか」と視聴者が不思議になる状態まで持ち込めれば、映画を最後まで観たときに気付くのではないか。2択から選ばせることによって視聴者の“理想”を形にしていく一方、「あなたたちが選んだんですよ?」と“責任”も感じさせるこの取り組みは、実に“体験型映画”のあるべきプロモーションである。

チャンネル名の2択アンケートを実施した「#真相の部屋」サムネイル(#2)

チャンネル名の2択アンケートを実施した「#真相の部屋」サムネイル(#2)

パブグッズデザインの2択アンケートを実施した「#真相の部屋」サムネイル(#9)

パブグッズデザインの2択アンケートを実施した「#真相の部屋」サムネイル(#9)

そのほか「#真相の部屋」ではゲームの勝者に“ご褒美”が用意されていることで劇中の“投げ銭”をイメージさせたり、「リアル『#真相の部屋』コーナー」では背景に設置された時計の針が劇中で犯行が行われた疑惑の時間である16時に合わせられている工夫が。同企画でトーク時間に5分の制限が設けられていたことも、映画の終盤における“選択”のシーンを想起させる。さらに劇中に登場するYouTubeチャンネル「ふるはうす★デイズ」の存在が解禁される前から、大森と菊池の背後に関連アイテムがしれっと置かれているなど、「映画鑑賞後に観ると……」という伏線も張り巡らされている。

公開日から3日間に配られた入場者プレゼントのクリアカードにも“2択”が……。鈴木と桐山の2ショットにファンは大歓喜だったはずだが、ラストシーンを観たあとだと「“殺す”か“さらす”か、私たちも問われている?」と、まったく違う見え方になる。実際の反響として「映画を観終わったら(特典を)直視できない」「もう……怖すぎる」「自戒の念を込めてスマホケースに入れました」という感想も届いたようだ。

入場者プレゼントのクリアカード。スマホに描かれている高評価 / 低評価ボタンは劇中の終盤で大きな意味を持つ

入場者プレゼントのクリアカード。スマホに描かれている高評価 / 低評価ボタンは劇中の終盤で大きな意味を持つ

忘れてはならない。本作のプロモーションにおいて重要人物であったのは、東宝宣伝部として参加した“イトウヒロシ”だ。一社員でありながら「#真相の部屋」の進行役を担い、そのゆるやかなキャラクターから大森や菊池の“いじられ役”にも。「はい、締まりましたー」という決めゼリフもできあがり、いつしか作品の顔として人気キャラクターになっていた。街でも声を掛けられるようになったというヒロシは、まだ注目されている現状を理解しきれていないのだとか。単なる進行役だったヒロシ自身にファンが付いたり、「(大森、菊池と)3人の雰囲気が好き」という視聴者が出てきたのは予想外の展開で、ヒロシも「自分はSNSが生んだもの」と自己分析。コメントでは「ヒロシをこんなにもてはやしているのは映画の構造そのものだね」という意見も見られた。“イトウヒロシ”は「#真相をお話しします」の化身だったのだろうか?

「#真相の部屋」番外編でポップアップストアのPRを行ったイトウヒロシ

「#真相の部屋」番外編でポップアップストアのPRを行ったイトウヒロシ

「#真相の部屋」#18でキャストに2択クイズを仕掛けたイトウヒロシ

「#真相の部屋」#18でキャストに2択クイズを仕掛けたイトウヒロシ

映画の中のみで存在していた動画配信チャンネル「ふるはうす★デイズ」。離島を舞台にした3人の子供たちの田舎暮らしが捉えられ、劇中では動画が“大バズり”を記録したことから関連グッズが飛ぶように売れる様子も映し出されていく。宣伝では「ふるはうす★デイズ」がさも実在しているかのように公式サイトが立ち上げられ、メンバーを紹介するページや、劇中に登場したグッズを実際に購入できるページも。

「ふるはうす★デイズ」のメンバー。左からルージュ、チョモ、サテツ

「ふるはうす★デイズ」のメンバー。左からルージュ、チョモ、サテツ

「ふるはうす★デイズ」動画での1コマ

「ふるはうす★デイズ」動画での1コマ

映画には3人のキャラクターがかわいいイラストとしても登場したが、キャラデザインは美術スタッフではなくグッズ向けに専門のデザイナーが担当した。映画製作時点からキャラクタービジネスを見据えていたというわけだ。きっと映画を観る前のファンは東京・渋谷モディに設置されたポップアップストアに足を運び、「かわいい」と言いながらグッズを手にしただろう。ただ映画でも自分たちと同じような“ファン”が商品を買っていたと考えると……現実世界のファンも“当事者”だと言えるのではないだろうか?

「#真相をお話しします」渋谷モディでのポップストア準備の様子

「#真相をお話しします」渋谷モディでのポップストア準備の様子

実はこの映画、10代の子供を持つ親の世代からは「子供に見せたい」という声が多い。その背景にあるのは「SNSで知らない人と連絡を取らないように」「不用意に個人情報や誹謗中傷を書き込まないように」と子供にストレートに伝えても「ウザい」と拒否されてしまう現状。この映画を観た親たちが「子供と一緒にこれを観に行けば、自然に理解してくれる!」と気付くパターンが多いのだという。10~20代をターゲットにする製作の思惑は結果的にピタリとハマったが、「親世代から子供へ」というアプローチになることは意外な展開だったのではないか。

「#真相をお話しします」より、配信を観る鈴木と桐山

「#真相をお話しします」より、配信を観る鈴木と桐山

そういった現象が起こるのは、本作がエンタテインメントという立場を貫き、観客を“没入”させることを最優先に考えて作られたからだろう。映画内で伝えたいメッセージを押し付けられると、“道徳の教科書”のように説教臭くもなる。あくまでも本作の主題は1個1個のミステリであり、包括するように配信チャンネルの「#真相をお話しします」があること。それを“体験”させることに特化しているからこそ、親が子に「見せたい」と思えるようになったのではないか。なお大森は「この作品はエンタメなようでエンタメじゃないようで……茶番のようで現実のようでもある。そのバランスが大事」と提言していたそう。「これはエンタメか? それとも現実か?」と考えること自体がエンタメになるということだ。

「#真相をお話しします」より、岡山天音演じるチャンネル管理人

「#真相をお話しします」より、岡山天音演じるチャンネル管理人

そして物語の説得力をより強固にしたのは、メインキャストの大森と菊池だった。2人は考えていることを常に発信し続けていて、自分を“さらす”という仕事を選択した人。“誰かを傷付けていないか”に考えを巡らせながらSNS投稿することを長年続けている2人だからこそ、まさに“当事者”として本作の物語を語るべき立場にあった。現実でも「炎上」「誹謗中傷」と向き合い続ける彼らが劇中で同じ題材に向き合っている姿を見ていると「なるべく多くの人がこの映画を観て、傷付けるような発言を思いとどまってくれたら」と祈るような気持ちになる。そういう意味も込めて、映画と現実世界をつなげるような“体験型”というテーマが設けられたのだろう。

「#真相をお話しします」撮影現場での1コマ

「#真相をお話しします」撮影現場での1コマ

「#真相をお話しします」撮影現場より、菊池風磨(右)に演出を付ける監督の豊島圭介(左)

「#真相をお話しします」撮影現場より、菊池風磨(右)に演出を付ける監督の豊島圭介(左)

ただ最後に伝えておきたいのは、「#真相をお話しします」は決して“アンチSNS”な物語ではないし、「全員が“いいこと”しか書き込まなくなる未来」など大きな願望を訴えるものでもないということ。あくまでもこの映画は“世界を1mmだけ美しくする”作品なのかもしれない。投稿ボタンを押す前に、1秒だけ読み直すことでも変わる未来がある。自分1人の影響力は決して軽いものではないし、誰かを傷付けようとしているのか、そうでないのかを認識せず“無自覚”であることが一番の問題だ。配信チャンネル「#真相をお話しします」の参加者は我々1人ひとりかもしれない……。リアルと限りなく地続きにあるエンタメが、映画「#真相をお話しします」である。

「#真相をお話しします」場面写真

「#真相をお話しします」場面写真



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編集部の感想:
この映画はSNSの影響を巧みに扱い、観客を“当事者”として引き込むユニークなアプローチが印象的です。大森元貴と菊池風磨のキャスティングもさることながら、体験型の要素が新しい視点を提供しています。現代社会における情報発信の重みを考えさせられる良作だと感じました。

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