地球の長い歴史では、幾度となく地上の覇者たる種の入れ替えが起きてきました。

我々人類を含む哺乳類の繁栄もいずれ終わるときがします。しかし、それは一体いつなのでしょうか?

英国ブリストル大学の気候学者であるアレクサンダー・ファーンズワース博士らが2023年に報告した、スーパーコンピューターのシミュレーションによると、約2億5000万年後に形成される超大陸では哺乳類が適応できないほど気温が高くなる可能性があるといいます。

よく知られている通り、地球上の大陸はプレートテクトニクスの活動によってゆっくりと移動しており、定期的に陸地の統合と離散が繰り返されています。

約3億年前、地球にはパンゲアという超大陸が形成されていましたが、その陸地は現在離散しています。そして約2億5000万年後、再び主要な大陸が一つに集まってパンゲア・ウルティマと呼ばれる超大陸が形成されると考えられています。

そのパンゲア・ウルティマには哺乳類の居場所はないかもしれないというのです。

この研究は、2023年9月25日付で、学術誌『nature geoscience』に掲載されました。

目次

  • 超大陸パンゲア・ウルティマの環境をシミュレーションで予測
  • 気温上昇に哺乳類は適応できない

超大陸パンゲア・ウルティマの環境をシミュレーションで予測

ドイツの気象学者アルフレート・ヴェーゲナーが1912年に提唱した大陸移動説によれば、地球上の広大な陸地は、およそ4億年から5億年の周期で超大陸の形成と離散を繰り返すとされています。

地球が生まれてから約46億年という長い年月の中で、小規模なものもあわせると20以上の大陸が形成されてきました

プレートテクトニクスの移動を示した動画。
プレートテクトニクスの移動を示した動画。 / Credit: Dr Andrew Merdith, University of Lyon

そして、今現在も地球上の大陸は、年間に数センチ程度の速さで移動しています。

つまり、今はバラバラになっている大陸たちも、いずれはまた一つになり、超大陸を形成すると考えられます。

次の超大陸として、科学者たちは約2億5千万年後、今の大陸たちが赤道上で衝突して、超大陸パンゲア・ウルティマを形成すると予想しています。

そして今回、ファーンズワース博士ら研究チームは、この超大陸パンゲア・ウルティマの形成がもたらす、地表温度の変化、太陽からの放射強度の増加、大気中の二酸化炭素の増加などを考慮した気候モデルを用いて、地球の環境の変化を予測しました。

高温になる新超大陸

研究チームの予測では、約2億5千万年後に形成される超大陸パンゲア・ウルティマは、そのほとんどの場所が40度以上という非常に高温になると考えられています。

これはパンゲア・ウルティマが赤道上で衝突して形成されると予測されていることが理由の1つで、ほとんどの地域が熱帯の圏内に入ってしまうためです。

またもう1つの理由が、大陸が集合することで、ほとんどの地域が海からの冷却効果を受けることができなくなることです。

しかし超大陸の温暖化のもっとも大きな要因は、超大陸の形成に伴って活発化した大規模な火山活動で引き起こされる可能性があります。

地殻の変動、特にプレートが衝突することによって地球の地下では大規模な変動が起こり、これが大規模な噴火を引き起こすと考えられるのです。

これらの噴火は大量の溶岩を噴出させ、その溶岩が積み重なって火成岩地帯と呼ばれる地域を形成します。

この溶岩には炭素が含まれているため、その炭素が燃焼したり、化学反応を起こすことで大気中に大量の二酸化炭素(CO2)を放出し、気温上昇の一因となるのです。

超大陸パンゲア・ウルティマのほとんどの場所は40度を超え、陸地の92%は哺乳類が住めない環境になることが予想されています
超大陸パンゲア・ウルティマのほとんどの場所は40度を超え、陸地の92%は哺乳類が住めない環境になることが予想されています / Credit:Alexander Farnsworthet al.,nature geoscience(2023) / ナゾロジー編集部

気温上昇に哺乳類は適応できない

このような気温の上昇に対して、おそらく哺乳類は適応することができないでしょう。

哺乳類は体温を調節する機能、例えば汗腺や循環系を持っているため、寒さへの耐性が高く、また高温にも比較的容易に適応することが可能です。

しかし、気温が40度を超え湿度が高い環境になると、体温調節機能はうまく機能せず、体から余分な熱を放出することが困難になります。

今回研究チームは、新しい超大陸パンゲア・ウルティマ全体の気温と湿度を予測するため、新しいスーパーコンピューターを利用した気候モデルでシミュレーションを行いました。

その結果、太陽からの放射強度が2.5%増加し、大気中の二酸化炭素濃度が現在の1.5倍に増えると、新しい大陸のうち、哺乳類が生きていけるのはわずか8%の広さにしか過ぎないことが明らかになったのです。

この結果は、高温になった地球がどれほど生物にとって厳しい環境になるかを示しており、今後の地球環境を考える上でも重要な指標となっています。

いずれ超大陸は必ずまた形成されます
いずれ超大陸は必ずまた形成されます / Credit:canva

現在では、サハラ砂漠のような地域でも生息できる特殊な哺乳類がいることが知られています。

しかし、未来の超大陸パンゲア・ウルティマが形成された場合、これらの哺乳類が生き残れるかはわかりません。

実際には爬虫類の方が新しい環境に適応できるかもしれませんし、環境に適応した全く新しい種類の生物が現れる可能性も考えられます。

ファーンズワース博士は、「超大陸の形成は、地質学的に過去5回の大量絶滅のうち、4回と一致している」とし、超大陸パンゲア・ウルティマの形成は、現在の陸上の全ての生命にとって終焉をもたらす可能性があると警告しています。

しかし、パンゲア・ウルティマとは別に、現在の東アジアを中心にユーラシア、オーストラリア、アメリカが衝突するアメイジア大陸が形成されるという説もあり、未来に形成される超大陸がパンゲア・ウルティマとならない可能性もあります。

もしパンゲア・ウルティマ以外の超大陸が形成された場合、哺乳類が生き残るチャンスもあるのかもしれません。

かつて繁栄した恐竜たちは、現在の私達よりも遥かに長い年月を地上の覇者として過ごしてきました。

しかし、彼らの時代も結局は終りを迎えました。

そのため私たち哺乳類の時代はいつ終わるのだろうと、想像したことのある人は多いでしょう。

それはまだ遥か未来のことですが、超大陸パンゲア・ウルティマが形成されるとき、哺乳類の時代は終わるのかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

Mammals may be driven to extinction by volcanic new supercontinent Pangaea Ultima
https://www.livescience.com/planet-earth/mammals-may-be-driven-to-extinction-by-volcanic-new-supercontinent-pangaea-ultima

元論文

Climate extremes likely to drive land mammal extinction during next supercontinent assembly
https://www.nature.com/articles/s41561-023-01259-3?utm_medium=affiliate&utm_source=commission_junction&utm_campaign=CONR_PF018_ECOM_GL_PHSS_ALWYS_DEEPLINK&utm_content=textlink&utm_term=PID100052172&CJEVENT=93959e185c0a11ee82bc513d0a1cb828

ライター

榊田純: (さかきだ じゅん)動物、歴史・考古学、地球科学など、身近な疑問からロマン溢れる話題まで広く興味があります。どなたにでもわかりやすい記事を書くのが目標。趣味は映画、ゲーム、ウォーキング、ホットヨガ。とにかく猫が好き。

編集者

ナゾロジー 編集部

フラッグシティパートナーズ海外不動産投資セミナー 【DMM FX】入金

Source link