土曜日, 5月 17, 2025
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哺乳類が「恐竜を捕食する瞬間」を捉えた完璧な化石!


恐竜と哺乳類はともに約2億3000万年前の三畳紀に出現しています。

しかしその後、長期にわたり覇権を握ったのは体格や攻撃力に優る恐竜たちでした。

哺乳類はどう猛な恐竜の陰で肩身の狭い思いをしていたでしょう。

ところが哺乳類たちも常にやられっぱなしではなかったようです。

カナダ自然博物館(CMN)、中国・海南科技職業大学(HVUST)は2023年に、オポッサムのような哺乳類が自分の倍もある恐竜を捕食していた化石証拠の発見を報告しました。

完璧に保存されたバトル真っ最中の化石を見ると、きっと驚きますよ。

研究の詳細は、2023年7月18日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。

目次

  • 保存状態が完璧すぎる白亜紀の化石
  • レペノマムスの「勝利の瞬間」が化石化したもの

保存状態が完璧すぎる白亜紀の化石

調査された化石は2012年に、中国東北部・遼寧(りょうねい)省にある約1億2500万年前の白亜紀地層で発見されたものです。

この地域は白秋に噴火した火砕流によって急速に埋没し、恐竜の多くが完璧な状態で保存されていることから「中国の恐竜ポンペイ(China’s dinosaur Pompeii)」と呼ばれています。

(ポンペイとは西暦79年のヴェスヴィオ山の噴火で埋没した古代ローマ時代の都市のこと)

しかし今回の化石は発見以来ずっと保管されたままであり、今日まで詳しく研究されていませんでした。

それがこちらです。

白亜紀の哺乳類と恐竜の化石 / Credit: CMN – Fossil: Mammal attacks dinosaur(2023)

骨格の全体が見事なまでに保存されているのが分かるでしょう。

ここには白亜紀に存在した2種の古生物が絡み合う状態で写されています。

1つは「プシッタコサウルス・ルジアトゥネンシス(Psittacosaurus lujiatunensis)」という草食恐竜です。

プシッタコサウルス属は約1億2500万〜1億100万年前に、現在のモンゴル、中国、タイに広く分布していました。

体長は1〜2メートルほどで、オウムのような硬いクチバシを持ち、後脚の二足で歩き、前手には鋭い鉤爪があります。

もう1つは「レペノマムス・ロブストゥス(Repenomamus robustus)」という現代のオポッサムに似た哺乳類です。

レペノマムスは白亜紀前期の中国に存在し、小型と大型の2種がいました。

R. ロブストゥスは小型種の方で、大人でも体長50センチほどしかなく、プシッタコサウルスの半分以下だったと見られます。

それでも当時の世界では、世界最大級の哺乳類のひとつでした。

では、この化石は具体的にどのような状態を示していたのでしょうか?

レペノマムスの「勝利の瞬間」が化石化したもの

時間を白亜紀まで戻して、この化石を分かりやすく復元してみるとこうなります。

化石の復元イメージ
化石の復元イメージ / Credit: Gang Han et al., Scientific Reports(2023)

チームが化石を詳しく分析してみると、うつ伏せになったプシッタコサウルスの上にレペノマムスが乗っかり、左前脚でプシッタコサウルスのクチバシを、左後脚でプシッタコサウルスの脛をつかみ、そして鋭い牙で肩当たりにガッチリ噛み付いていることが分かりました。

研究主任のジョーダン・マロン(Jordan Mallon)氏は「これは明らかにレペノマムスによる積極的な攻撃が行われていたことを示している」と話します。

当初は死骸を漁っているだけの可能性も考えられましたが、その場合なら普通、死骸の骨により多くの噛み傷がついたり、骨格がバラバラにされるはずだという。

加えて、レペノマムスが全身を駆使して相手をロックする必要もありませんし、2体がここまで絡み合うこともないといいます。

単なる死骸漁りであれば、ここまでロックする必要はない
単なる死骸漁りであれば、ここまでロックする必要はない / Credit: CMN – Fossil: Mammal attacks dinosaur(2023)

よって、この化石は両者が争った末にレペノマムスがマウントを取り、プシッタコサウルスを仕留めにかかっていた最中であると結論されました。

ただ残念ながら、勝利のごちそうにありつく暇もなく、火砕流に飲み込まれて両者ノックアウトとなったようです。

実はこれまでの研究で、レペノマムスがプシッタコサウルスの赤ちゃんを捕食した事実は知られていました。

しかし、自分の倍もある大人のプシッタコサウルスを捕食しようとした化石証拠は初めてだといいます。

こんな感じでバトルしていた?(背後には噴火直前の火山も)
こんな感じでバトルしていた?(背後には噴火直前の火山も) / Credit: CMN – Fossil: Mammal attacks dinosaur(2023)

これは恐竜全盛の時代に、哺乳類が恐竜の脅威となり得たことを示す貴重な証拠です。

しかし今のところ、レペノマムスによるジャイアントキリングの化石証拠はこれしか見つかっておらず、当時の世界でありふれた出来事だったのかどうかは分かりません

このレペノマムスだけが例外的に恐竜ハントの名手だった可能性もあります。

それでも現代にはグズリやラーテルのように、自分より大きなシカやハイエナを積極的に攻撃する哺乳類がいます。

レペノマムスはそうした大物を狙った捕食行動を取る哺乳類の先駆者だったのかもしれません。

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参考文献

Fossil: Mammal attacks dinosaur
https://nature.ca/en/about-the-museum/media-centre/fossil-mammal-attacks-dinosaur/

It Turns Out An Ancient Creature Actually Preyed Upon Dinosaurs
https://www.sciencealert.com/it-turns-out-an-ancient-creature-actually-preyed-upon-dinosaurs

Final moments of dinosaur and mammal’s epic ‘mortal combat’ battle preserved by volcanic eruption
https://www.livescience.com/planet-earth/fossils/final-moments-of-dinosaur-and-mammals-epic-mortal-combat-battle-preserved-by-volcanic-eruption

元論文

An extraordinary fossil captures the struggle for existence during the Mesozoic
https://www.nature.com/articles/s41598-023-37545-8

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。
他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。
趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部



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🧠 編集部の感想:
哺乳類が恐竜を捕食する瞬間を捉えた化石の発見は、進化の過程における新たな光を当てる驚くべき証拠です。恐竜が支配する時代に、哺乳類がその脅威となり得たことを示しており、自然界の厳しい生存競争の一端を感じさせます。さらに、化石が非常に良好に保存されている点は、科学者たちにとって貴重な研究資料となるでしょう。

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