5月のIGN Firstでは『ELDEN RING NIGHTREIGN』について様々な情報をお届けしている。この記事では、本作のディレクターを務めた石崎淳也氏へのインタビューをお届けしよう。
――以前のインタビューでは、最初に『ELDEN RING NIGHTREIGN』の企画を宮崎(英高)さんにピッチして、ゴーサインをもらったと話されていました。最初の企画と最終的なゲーム内容は結構違うのでしょうか?
構想自体は概ね当初の予定通りに実現できています。ただ、開発を進めるなかで、スタッフからの提案、疑問、懸念など、いろいろ刺激的な意見を通してさらにブラッシュアップされていきました。
――ネットワークテストを経て、ユーザーからのフィードバックはどのようにゲームに反映されたのでしょうか。
主にゲームバランスに関する話にはなるのですが、難易度調整が非常に難しいゲームになっています。ユーザーが実際にどのように感じているのかというフィードバックのおかげで、よりうまく調整できました。
また、今回は新しいゲームデザインやゲームルールが多いので、「ここは伝わっていない」とか「ここがわかりにくい」といった部分は皆さんの意見を通して改善できたと感じています。
――今作で初めてディレクターを経験した感想をお聞かせください。ゲームディレクションについて、宮崎さんからのアドバイスもあったのでしょうか。
いざディレクターの立場になったら、もうやるしかない、という気持ちでした。自分から提案したアイディアではあったんですが、それを最後までやりきるのは覚悟が必要でした。面白いと思ったものをしっかりと実践する上で、自分のなかでより真剣度が高まったと思います。
アドバイスとしては、宮崎に関わらずですが、「ディレクターをやるからにはタイトルのすべてを決めることになるので、遠慮するべきではない」ということは言っていただきました。それを肝に銘じて、いちスタッフとしての自分だったら「こんなもんでいいかな」とOKを出すところを、「それでいいわけがない」と、自分を簡単に許さないという姿勢で挑みました。
――「NIGHTREIGN」はソロプレイ、または3人でプレイするゲームになっていますが、ふたりだけでプレイするオプションがない理由についてお聞かせください。
結論から言いますと、本当にすっぽり抜け落ちてしまって申し訳ないです。元々、3人で協力するゲームにしようとしていました。ただし、やはりソウルベースのゲームなのでソロでやりたい人もいるだろうし、私自身もそういう気分になることがあると思いました。なので、ゲームルールもソロが可能であることを意識して取り組んでいました。それが無事に達成できたというところで一息ついていたら、ふたりでプレイするモードが抜けていたというのが正直なところです。申し訳ありません。今後のアップデートでなんとかできないか検討しています。
――ソロでプレイする場合、難易度はどのように変化するのでしょうか。ほかにも、ソロプレイのときにしか起きないこともあるのでしょうか。
本作は3人のマルチプレイ体験をベースにしてはいますが、そもそもソロで活躍することは最初から許していますし、それも攻略の選択肢のひとつとして定義しています。なので、基本的にひとりで戦うことは元々できるゲームです。そのうえで、もちろんゲームバランスとしてひとり向けの調整は行っています。例えば理不尽な袋叩きに遭う、といったことがないようにしています。
マルチと違って、ソロプレイだと救助がないのが大きな違いになっています。特にボス戦において、ボスの攻撃手段を学習する機会がどうしても少なくなってしまうので、そこをカバーするためにゲーム中に自己救助できるものがあるんですけど、それがより手に入りやすいようにしています。これによって、ソロプレイでもボスの攻撃パターンを学習する機会を増やしているとともに、ひとりでもなんとか乗り越えられるバランスにしています。
――「NIGHTREIGN」のストーリーについてお聞かせください。『ELDEN RING』の物語とどのように繋がるのでしょうか。
「NIGHTREIGN」は『ELDEN RING」と根っこの部分が同じであって、舞台が別ものであるという形になっています。「夜の王」が現れたという話なんですけど、「夜の王」は災害のような存在とし描いています。現実でも同じですけど、災害は誰かの意図もなく突然現れて、いろいろなものを奪い去っていく、あるいは壊していく。そういうものが脅威として現れたわけですが、本作の舞台であるリムベルドにおいては予言されていた実態です。なので、それに対抗する人たちが集められています。それがプレイヤーキャラクターの「夜渡り」であるという設定になっています。
――プレイヤーは「記憶の断片」を入手することで各キャラクターのストーリーを体験することになりますが、このようなストーリーテリングを採用した理由について教えてください。
先程も説明した舞台設定の通り、「夜渡り」は主体的な目的をもってこの場にきているというよりかは、集められた人たちです。しかし、彼らは「夜の王」を倒す以外にもそれぞれ別の目的や悩みがありまして、それらを紐解いていくという形になっています。
このようにしたのは、キャラメイクではなくて長く同じキャラクターたちでプレイするということで、よりそのキャラクターたちに愛着をもってほしくて、彼らで「夜の王」を倒すべきだというモチベーションを後押しするようなものとして導入しています。
――本作はPVE(協力プレイ)のゲームとして開発されていると思いますが、フロム・ソフトウェアのRPG作品には古くからPVP(対戦)の要素も含まれてきました。本作でも、例えば仲間と一緒に別のプレイヤーたちのゲームに侵入するといったPVP要素を実装しようとは思わなかったのでしょうか。
PVPはもともとやるつもりがなくて、そのまま入れませんでした。というのも、「NIGHTREIGN」ではプレイヤーキャラクターにそれぞれ特徴的なアクションをもたせることで、探索やバトルにおいてプレイの幅をもたせたいというのがありました。そうなると特徴的なアクション設計をしていく必要があり、それを対人でも良いバランスにするのはかなり大変になると予測できていました。それならどこを優先するべきかは明らかだったので、「NIGHTREIGN」では協力プレイで、それぞれがしっかりと戦って生き延びていく楽しさを実現することを重視しました。
――「NIGHTREIGN」のゲームバランスについてお聞かせください。『ELDEN RING』本編のようなシングルプレイをベースとしつつPVP要素もあるゲームとは、また違ったバランス調整が必要だったのでしょうか。
過去作まではプレイヤーはひとりが基本で、それに対してステージやエネミーをデザインしていったのに対して、「NIGHTREIGN」では基本的にプレイヤーが複数います。複数のプレイヤーを前提としたバランスにしつつ、それでいてプレイヤーひとりであっても破綻しないということを意識しつつ、新しいチャレンジを盛り込んでいきました。
新しいチャレンジとしてわかりやすいのは、みなさんがネットワークテストでも体験できたグラディウス戦ですね。複数戦と1対1が目まぐるしく入れ替わるということが大きな流れとして新しいものになっていると思っています。
――ボスは『ELDEN RING』本編よりもさらに難易度が高くなった印象を受けました。プレイヤーはよりダメージを受けるし、ボスが以前よりも硬いですね。これはプレイヤー側が3人のチームで挑むことによる調整でしょうか?
3日目にボスと対峙するというゲームルール上、過去作のボス戦と比べて、どうしても試行回数と試行時間が非常にタイトになってしまうというところはあります。
ボス側のアクション自体は熾烈ではあるんですけど、理解できるものであるということは過去作以上に重視しています。一見、非常におそろしく強く感じるとは思うのですが、いつも通りある程度戦っていくといつのまにか乗り越えられる脅威になっているかと思います。
――フロム・ソフトウェアの過去作の多くでは周回要素が重要ですが、「NIGHTREIGN」にもあるのでしょうか。
クリア後の寄り込みについて、クリアまでに至る道で遺物を集めたり衣装を集めたりすることができるのですが、クリア後に引き続きできます。クリア後に解禁される要素も少しあるので、それらを集めたりするのも楽しめると思いますし、そもそもにしてエンディングに至るまで結構な手ごたえがあるので、それ自体も満足できるものになっていると思います。
それと――クリア後ではなくクリアするまでにできることですけど――個々のキャラクターのシナリオを追いかけることができます。タイミングの制限などが一切ないので、クリア後にまとめて進めてもいいですし、クリアを目指す間に気分を変えたいときに進めていくことも自由にできます。
――「NIGHTREIGN」を買い切りではなく、基本無料タイトルにすることも検討したのでしょうか。 また、マルチプレイゲームが激戦区になっている現代において、この価格にした理由についてもお聞かせいただけますか。
最初、基本無料プレイはアイディアとしてはありました。しかし、我々の得意とすること、良さをしっかり発揮できるにはどうすべきか、検討した結論としては現在の形の方が適切であるだろうと判断し開発初期からその前提でしっかり作り切っていきました。
――最後になりますが、「NIGHTREIGN」で達成できたことで、特に誇りに思っているのはどのあたりでしょうか。
最初に構成していた芯の部分をしっかりと実現できたことですね。マルチプレイであることと、広大なフィールドでなんとか生き残るといったゲームを構築して、実際に最後のボスに勝ち抜くというゲームの流れです。絶対に面白くなるだろうという確信はあったんですけど、実際にかなりイメージに近い形で実現できましたし、超えている部分すらある、というくらいには手ごたえの真剣なゲーム体験が達成できたことはかなり誇りに思っています。奇跡に近い部分もあると個人的には感じているくらいですね。手強いゲームを乗り越えることを求めている方々には非常に満足していただけるものになっていると思います。
――ありがとうございました。
『ELDEN RING NIGHTREIGN』についてもっと詳しく知りたい人は新クラス「鉄の目」と「無頼漢」のインプレッション記事、ストーリーテリングについての紹介、ゲームマップがどのように変化するのかについての記事、それから大ボス「夜の魔、リブラ」のプレイ映像も確認してほしい。
🧠 編集部の感想:
『ELDEN RING NIGHTREIGN』のディレクターインタビューを読んで、ゲームバランスやストーリーの工夫が印象的でした。特に、プレイヤーのフィードバックを反映させる姿勢に感心しました。タイトルの方向性をしっかりと示し、プレイヤー体験を重視した開発理念が感じられます。
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