日曜日, 7月 27, 2025
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ホームレビュー映画君はエンダーパールでどう"戦う"か? 『マインクラフト/ザ・ムービー』雪野

君はエンダーパールでどう"戦う"か? 『マインクラフト/ザ・ムービー』雪野

🧠 あらすじと概要:

あらすじ

『マインクラフト/ザ・ムービー』は、人気のゲーム「マインクラフト」を実写化した作品で、異世界オーバーワールドでの冒険が描かれます。主人公たちは多様なモンスターと戦いながら、仲間との絆を深め、自分たちの使命を果たすために奮闘します。冒険には多くのギャグやアクションが盛り込まれ、子供向けのコメディタッチで進行していきます。

記事の要約

映画の感想として、著者は『マインクラフト/ザ・ムービー』に対して物足りなさを感じていることを明かしています。特に、アクションシーンが平面的であり、ゲームの魅力を活かした戦闘がない点を惜しむ声が強く挙げられています。アイテムの活用やギャグに対する翻訳の工夫も求められ、特にアメリカンジョークの多さが日本の観客には響きにくいとして批判されています。一方で、ナタリーというキャラクターの存在や、映像の作り込みについては高評価が寄せられています。全体として、この映画は子供向けとして楽しむことはできるものの、比較される大作に対しては甘さがあるとの意見が述べられています。次回作への期待感も示されています。

君はエンダーパールでどう"戦う"か? 『マインクラフト/ザ・ムービー』雪野

雪野

公開直後の4月末に観ていた『マインクラフト/ザ・ムービー』。

同じゲーム実写化の枠で言えば”おとなもこどもも、おねーさんも”楽しめる見事な大傑作に仕上がっていたマリオの映画と比較するとどうも物足りず。

チキンジョッキーで大興奮するアメリカ本国の熱狂ほどには乗り切れなかった(あれも一部の悪ふざけだとは思うが)。

公開開始から一ヶ月以上が経過したので思いっきり内容に触れながら「もっとこうした方が好きになれるのに」と感じた部分を書き記しておく。

惜しかった点

そもそもこの映画について私は勘違いをしていた。『マインクラフト/ザ・ムービー』はあくまでキッズ向けのコメディ作品であって、アクション映画ではないのだ。

件のマリオや『レディ・プレイヤー1』、あろうことか『マトリックス』的な仮想現実ならではの物理法則に基づくアクションであったり、あるいは漫画『亜人』『DEATH 』にみられる「フィクション世界の仕組みを逆手にとって使い切るヒリついた作劇」的なものはほとんど存在しない。

しがたってこれからの指摘は野暮というのも理解しているし、私が好きなオタク的胸熱映像に専念していては成し遂げられないほどに、この映画には届けなければならない観客が多すぎる。つまり大衆向け&子供向け作品としてはこれで正解なのだが、それでもなお「あぁせっかくこんなにいい題材を使えるならこんな映像も見たかった」という思いは拭いきれない。

立体的なアクションが少ない

この映画では敵軍団「ピグリン」との戦闘シーンをクライマックスに据えていて、見事なスタジオセットとCG作画によって大規模な多対多のバトルが繰り広げられる。

主人公勢もそこそこの事前準備をしてこの戦いに臨んでおり、さぞ盛り上がる活劇が繰り広げられるのだろうと思っていたら、なんやかんやとやり合っているうちに終了してしまった。

確かに使う武器含めてマイクラ的ガジェットはいくつも登場し、走りながらアイアンゴーレムを製造しまくるナタリーとかは「なるほど」と思わせる良さがあったんだけども、肝心のぶつかり合い自体がなんとも味気ないというか、どうも斬り合いを違う角度から写しているだけの平面的な戦闘が多かったように思うのだ。それでは見た目がマイクラなだけで普通に現実世界で戦ってるのとやってることが変わらないのでは?と。

ブロックを置いたり掘ったりできるのがマインクラフトの魅力なのだから、このオーバーワールド世界の物理法則を最大限に生かした立体的な戦闘をもっともっと盛りだくさんにしてほしかった。

たとえば(雑コラでなんとか説明してみると)

四方から突進してくるピグリンという逃げ場なしの状況に、ギャレットはブロックを真下方向に積み上げて回避!そこから横一筋にブロックを置き逃げ道を敷いて戦場から一時退却!

くらいの、初心者っぽい慌て方で不恰好にブロックをとにかく置いて逃げるみたいなのがあってもいいし(下から弓矢を喰らって置いた足場が崩れていく、くらいのルールの逸脱は行ってもよいと思う)、

ピグリンを斬ったのも束の間、別方向から別のピグリンが!階段上にブロックを設置しピグリンを阻み、さらにそれを登って頂上からジャンプ!空中で前転しながら背後から首をはね着地!

みたいな、どこのリ◯◯イ兵長だよみたいな回転斬りを見せてくれてもいいし、

高所のバトルで揉み合いになり、ピグリンと相討ちのように落下!絶体絶命!しかしギャレットは走馬灯の中にスティーブとの会話を思い出した───「覚えておけギャレット、ボートに乗ってれば落下ダメージは無効化されちまうんだ」  これだ!落下中すんでのところでインベントリから地面にボートを設置!うまく乗ってダメージを受けず生還!

みたいなゲームの変な仕様を知り尽くした猛者ムーブを見てみたい気もする。

まぁ本編に出てきた水バケツ衝撃吸収に比べて最後の例はやりすぎにしても、せっかく手に入れた箱庭世界で戦うチャンスにあって、マインクラフト物理ならではのブロックの置き方や動き方を使って縦横無尽に戦ってほしかったなと思ってしまうオタクが私であった。

アイテムをもっと活かしてほしい

定番のツルハシや剣はもちろん、この映画には数々のゲーム内アイテムが登場し主人公たちの冒険を手助けする。

しかしどうも、実際にこのアイテムを手にして生き延びねばならないとしたら、もう少し使い方を試行錯誤するものではないか?とも思うのだ。

劇中で登場したアイテムのうち、特にバトルでもっともゲームチェンジャーたりえるのではないかと感じたのが「エンダーパール」。

リンク先Wiki

強い敵Mob「エンダーマン」を倒すとたまにドロップする玉で、空中に投げるとワープするという機能がある。

ギャレットが適当に投げて使ってしまうというギャグシーンのほか、(たしか)最後にキューブのある塔へとヘンリーが登るのに使っていたような。

せっかくアクションに発展しそうな「瞬間移動」という機能なのだから、ヘンリーにはなんとか頑張って充分量のエンダーマンを狩っていただいて、1スタック分くらいは確保しておいてほしかった。その前にエンダーマンの悩ましい目線で脳みそが溶けるかもしれないが。

これを使うとすれば(また雑コラで失礼するが)、

迫るピグリン!ヘンリーは咄嗟のエンダーパール投擲で背後にまわり首をとる!

なんてのは容易に想像つくし、なんならもっと策略をこらして

迫るピグリンに対し、ヘンリーは咄嗟にTNTを大量設置し火打石で点火した!スティーブ「おいヘンリー!何やってんだ!」ギャレット「まさか…あいつらと死ぬ気か…!」ナタリー「やめてえええ!」

しかしヘンリーは不敵の笑み!「ハハッ安心してよ、僕はこんなところでくたばるつもりはない!まだやり残した発明だって山ほどあるんだから!」

ヘンリーは矢にエンダーパールをくくりつけて思いっきり弓を引いた。「君たちに授業をしよう。」ピュンと放たれ飛んでいく矢を見つめながら、迫るピグリンにつぶやく。

「僕らの世界のアインシュタインって偉い学者でさえ、宇宙には不可能もあると認めた。でもここ─Overworld─なら可能(でき)るんだ。そう…”光速度を超える“ってやつもね。」

その刹那、遠くの山頂に着弾したパールの矢のもとに、ヘンリーが瞬間移動する!
「アインシュタインは、これで論文の書き直しだ。」

ドカーーーーーン!!!!!

ピグリン軍団ガスト気球大破・轟沈1,700匹中破4,500匹

未帰還ガスト22,800匹

圧倒的じゃないか、我が軍は……。

という具合に、おそらく自爆からの即時戦線離脱に対する対策はこの時点のピグリン軍にはないだろうからかなり有効な戦術になるのではあるまいか。

まぁエンダーパールを持っていなかったとしても「うまくいけば珍しいものが見れるよ ミスター・スポック ”転送”だ」とのセリフと共に爆散すれば事前に寝ておいた安全な拠点ベッドの上に「来ちゃった」できるので、経験値を捨ててもよいのであれば緊急退避としては有効だ(しかし外来の人間がこのオーバーワールドで命を落とした場合にゲーム内でリスポーンできるかどうかはわからない。もし『トロン:レガシー』と同じシステムで仮想空間の中であってもユーザー(プレイヤー)は生身で存在している可能性を捨てきれない場合、この”転送”自爆はリスキーである(し、このマイクラ映画の登場人物自体も死ねない世界で相当に激ヤバなハードコアワールドを今まで生き延びてきたことになる))。

桜井画門『亜人』8巻より引用

邪推はさておき、劇中のスティーブらの進行レベルで入手できるアイテムでももっとテクニカルかつトリッキーに使えそうなものがいくつもあるので、そういったものをぜひ活用して生存率を上げていただきたい所存だ。

まぁ、あまりにも小ネタや裏技的なものを取り入れすぎると、子供世代を中心にはじめてマインクラフトに触れたような初心者にとってはゲームの神秘性を損いかねない。

再三取り上げる水バケツ落下溶岩チキントラップくらいがちょうどいい塩梅で、それ以上のPvPスキルやバグを利用したハック的な部分まで手を出してしまうとこの世界を冒険するハラハラドキドキ感がなくなってしまうだろう。そういう心の大切な部分を破壊するのはもっと大人になってからで充分。アンダーテールやれば花とか骨がちゃんとメタ暴力で殴りかかってくれるから……。

余談だがたくさんのひみつ道具が登場するドラえもんを観ていてもそれに似たことを想像してしまう。主人公組は小学生とロボットだから殺伐とした使い方はしないだろうが、たとえばひみつ道具が当たり前となった未来世界で殺し屋家業を営むプロフェッショナルはどのようにしてそれらを活用するのだろうか。タイムパトロールによる時間を超えた取り締まりによって”犯罪発生以前”に犯罪者は捕まってしまう『マイノリティ・リポート』的な世界になっているのかもしれないが、どこでもドア的テレポート機構を展開・収納しながら空間を駆け回る戦闘スタイルがあったらかっこいい。

ギャグの翻訳をなんとかできなかったか

ここまで散々くだらない話をしてきたが、次は普通に映画としての話。気になったのはあまりにも多いアメリカンギャグのシーンだ。

アメリカンジョーク、にもなっていない、日本文化圏で過ごす我々にとっては笑いどころがどこなのかさっぱりわからない(が、ここは笑わせようとしてるんだろうなという雰囲気だけは伝わってくる)ギャグの連発が物語のスピード感をガクンと落としていてもったいないと感じた。

予告編でも取り上げられている

ギャレット「ヴァヤ・コン・ディアス…「あばよ兄弟」って意味」
ナタリー「違うよ?」

というくだりも、ラストもラスト、晴れて友人となったスティーブとの別れにおいてもなおギャレットが変なスパニッシュでカッコつける、というギャグ自体は理解できるのだが、それがラストシーン付近のムードをぶった斬ってまで聴きたい内容に達していない

翻訳をもっと踏み込んだものに変えて日本語でも通用するギャグにすればよいのだがしかし、どこまでオリジナル映画のセリフ・設定を変えることが許されるかというトピックは邦訳においてしばしば問題となる(一例としては『ロード・オブ・ザ・リング』の字幕問題)。

個人的にはそれでもなお、特に今回のような子供向けポップコーンムービーであれば観客の文化圏に合わせたギャグにイチから書き直してしまってもいいのではと思ってしまうほどに、あまりにもギャグが空回りしていたと感じた。

しかし興味深いことに、私の観た上映会では上記のシーンで劇場にいた子供たちは「クスクス」と笑っていて、本編を通してもかなりウケたギャグのひとつだったと記憶している。子供からしたら「ファニーな見た目のおじさんがなんか喋って「違うよ?」とテンポよく突っ込まれる」というだけで笑いの閾値を満たしてしまうということなのかもしれない。

思い返せば自分たちもハードゲイだの、SMプレイの格好で「ア゛―――ッ!!!」と叫ぶお姉さんだの、フランケンシュタインが「い゛ーよ゛」とサムズアップする様子だのでゲラゲラ笑っていたので、大人たちがその意味を考え出す以前の段階として、面白い格好の大人がリズミカルになにかをするだけで笑えるのだとしたら、私が映画マイクラにギャグがどうのこうの言う筋合いはないわけである。アメリカの子供向け映画なのだから、別に日本人の大人は子供を連れてくればそこでお役目終了、あとは貴重な休日をポップコーンと共に2時間潰すだけでいい。

好きだった点

決してダメダメな映画というわけではなく、ファンなら(百歩譲って配信でなら)観ておけば話題に乗れて損はしないくらいの面白さはあった。キッズ向けとはいえ眠くなるようなもったりさや子供騙しのイライラ要素は全くなかったし、好きな点もある。

ナタリーがかわいい

公式サイトより

この映画においてスクリーンの方向を見続ける理由の半分くらいは彼女の可愛さにあると言っていい。エマ・マイヤーズ演じる姉・ナタリーは母親代わりとして弟・ヘンリーを不器用ながら支え、うまくいかない時も明るく振る舞う頑張り屋さん。マイクラ世界に来てもどこか肝が座っているというか、おバカばっかりの一同の中における数少ない大人キャラなのだ。積極的に話を転がす物分かりの良さがありつつ女の子っぽい振る舞いを見せるシーンももちろんあったりして、とにかく存在そのものが爽快。

アメリカ映画でよくある「現実的で小うるさく『そうやってママの代わりをやろうとするな!』と弟に突っぱねられうじうじする姉」とか「臆病またはすぐ怪我をして脚本上で登場人物たちのトラブルを巻き起こすために存在する女キャラ」みたいな残念な配置ではなく、しっかりと観客の冒険心に寄り添う形で存在してくれるのが好印象だ。

生見愛瑠さんの吹替も、プロの声優と比較すれば若干のあどけなさが残るもののそれがむしろナタリーの思春期感にうまくハマっていたように思う。女優が声を当てているとき特有の生っぽさというか、ジブリ作品の声のリアリティみたいなものに近い。

ただ現実世界そのままの格好で来てしまっているのでスカートで戦闘や探索を行わなければならず、少々アクションには不向きだよなと思ったりもした。この格好で走り回ったりしていたので本人は気にしていないのだろうが、決して動きやすい服装とはいえない。

映像はすごい

ゲームの世界を再現しつつも実写にうまく落とし込んだ映像の作り込みはかなりよくできていると感じた。観始めた当初は羊の顔がアメリカのおもちゃみたいでやだなと思ったが、絶妙な質感のブロック世界の中に没入し続けると次第に気にならなくなっていく。

ソンビは気持ち悪いクリーパーはかわいい

思い返せば、べつにマインクラフトはキャラの可愛さで売っているゲームではなかった。もう10年以上の付き合いで麻痺してしまい、ドットが立体になったデザインのモブたちにどこか愛らしさすら覚えているのだが、フラットな視点に立てば、どちらかといえば無機質でかわいさ方向のデフォルメは少ないのがマイクラ世界のデザインだと思う。

初めてプレイする友人にマインクラフトをやらせると、誰もが必ず「羊の顔が怖い」と言うし、「クモが怖い」「シルバーフィッシュがキモい」「主人公がおっさんでやだ」と口にするのを聞いた経験が何度もあるので、そのエッセンスを実写に落とし込むとなればこういうテイストで間違っていないのだろう。いや、もう少し可愛くしてもらってもいいと思うんだけど…まぁアメリカの映画だからしょうがないのかな。日本のスタジオがやったらこうはならないはず。

キャラは置いておくとして、背景美術(CGではなくセットを組んだシーンも多いらしい)や小道具類のそれっぽさはピカイチ。ゲームらしさを残しつつ実写化するというテーマをきちんと実現できているデザインだと感じた。

まとめ

まだ上映中の映画館もあるらしい。2025年上映のキッズ向け映画として間違いなく名前の残る作品だと思う。

しかしやはり最近はビッグIPをもとにした優秀な作品が多いため、比較するとところどころに甘さというか「もっと頑張れたのでは…」的なもったいなさが見えるのは事実だ。

ただ、そういうもんと割り切って楽しんでね、という姿勢の提示はしっかり行われているから「金返せ!」と不満を感じるほどではない(お子様向けアメリカンギャグ映画をやりますよ、というテイストの開示が初っ端から全開で行われるのでこちらも「野暮なことは言わないでおこう」となる)。

オタク的早口でここがすごい!と興奮するような材料はないが、ファミリー層がイオンシネマの午前中の回を観てフードコートへ行き併設のマックスバリュに寄って食材を買って帰る理由としてはこれで十分なはず。GWのシアター集客用作品としては問題ない出来に仕上がっているのではないだろうか。

次回作も制作が決まっているようなので、どのように話が転がっていくのか期待しながら待ちたい。

雪野

98年生。趣味は散歩と考え事。音楽レーベル「yogisha recordings」やってます。



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