古代のエリート女性の全身ミイラが発掘されました。
ペルー文化省は最近、古代アンデス文明のカラル遺跡で、約5000年前の女性のミイラを発見したと報告。
女性はさまざまな副葬品とともに埋葬されていたことから、地位の高い人物だったことが示唆されています。
この発見は、古代ペルーでは男性だけでなく、女性も権力者まで上り詰めることができたことを示す貴重な手がかりとなりそうです。
目次
- 南米最古の文明のひとつ
- 5000年前のエリート女性を発見!
南米最古の文明のひとつ
今回ミイラが発見されたのは、南米ペルー西部に位置するカラル遺跡の聖地アスペロという場所です。
アスペロは、カラル文明の一部として知られ、太平洋沿岸からわずか0.7キロメートルほどの場所にあります。
カラル文明は、紀元前3000年から紀元前1800年ごろに栄えた南米最古級の文明のひとつであり、ピラミッドや神殿を擁する都市を築いたことで知られています。
2009年には、ユネスコ世界遺産にも登録されました。

当時のカラル文明は、農業だけでなく漁業や交易にも積極的で、周辺地域との文化交流も盛んだったと考えられています。
その中でも聖地アスペロは、沿岸部に位置する漁業と交易の拠点として重要な役割を果たしていました。
今回発見された女性は、まさにそのカラル文明が栄えていた時代に生きた人物とみられています。
彼女の遺体は、植物繊維の束や綿の布、網などで丁寧に包まれた状態で保存されており、遺跡の発掘チームにとって大きな驚きとなりました。
5000年前のエリート女性を発見!
この女性がエリートだったと推定される理由は、彼女とともに埋葬されていた数々の副葬品にあります。
墓からはコンゴウインコの羽で刺繍されたパネルや、緑と茶色のビーズをあしらったオオハシのクチバシ、アマゾン地域産の巻き貝、30個ものサツマイモ、そして漁網などが発見されました。
これらの副葬品は、当時すでに広範な交易ネットワークが存在していたこと、そして彼女がそれに関与できるほど高い社会的地位を持っていたことを示しています。
さらに特筆すべきなのは、遺体の保存状態です。
この地域では通常、乾燥した気候の影響で骨だけが残ることがほとんどですが、今回発見された女性は皮膚、髪、爪までもが極めて良好に保存されていました。
これにより、当時の葬送儀礼において、特別な保存措置が取られた可能性が指摘されています。

これらの点から見ても、彼女が一般の人々とは一線を画す存在だったことは明らかです。
またカラル文明では、男性だけでなく女性も高い地位に就くことができたという事例が、近年の発掘調査で次々に明らかになってきています。
今回の発見は、その流れを裏付ける貴重な証拠のひとつとなりました。
5000年も前の女性のミイラが、今私たちの目の前に姿を現すのは驚くべきことです。
このエリート女性の遺体分析を含めた更なる調査で、歴史の闇に埋もれたペルーの背景が浮かび上がるかもしれません。
参考文献
5,000-year-old burial of elite woman with inlaid toucan’s beak found in Peru
https://www.livescience.com/archaeology/5-000-year-old-burial-of-elite-woman-with-inlaid-toucans-beak-found-in-peru
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部