毎年3月頃になると、北極の海氷域はその年で最大面積に達することがわかっています。

ところが今年の年間最大面積は、過去40年以上の観測史の中で最も小さかったことが、国立極地研究所およびJAXA(宇宙航空研究開発機)の研究で明らかになりました。

地球温暖化が進む中、北極にかつてない異変が起き始めているのかもしれません。

目次

  • 北極の海氷面積、史上最少を記録
  • なぜ史上最少に?北極の氷が溶けると何が起こる?

北極の海氷面積、史上最少を記録

2025年3月20日、北極の海氷域面積はその年の最大である1379万平方キロメートルに達していたと報告されました。

しかし、これは衛星観測が開始された1970年代以降で最も小さい冬季の海氷面積(年間最大面積)だったのです。

従来の最小記録は2017年3月5日の1392万平方キロメートルでしたが、今回の記録はそれをさらに13万平方キロメートルも下回る結果となりました。

北極の海氷域面積は例年、10月から拡大しはじめて3月にピークに達し、つづく4月から9月にかけて減少するという季節変動を繰り返しています。

しかし今冬(2024年12月〜2025年2月)は、この月ごとの海氷域面積がいずれの月も過去最小を更新していたのです。

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Credit: 国立極地研究所 – 北極の冬季海氷域面積が衛星観測史上最小を記録(2025)

こちらのグラフは、1979年から2025年までの47年間における「北極海氷域面積の年間最大値の変化」を示したものです。

これを見ると、海氷域面積は右肩下がりにどんどん小さくなっていることがわかります。

さらにこの影響は北極だけにとどまりません。

南極を含む全球の海氷域面積においても、年々縮小しており、史上最小記録を更新しているのです。

極地の変化は、地球全体の気候システムに影響を及ぼすため、非常に重要な指標となります。

なぜ史上最少に?北極の氷が溶けると何が起こる?

今回の記録的な海氷減少の要因として挙げられるのは、2024年12月から2025年2月にかけて北極圏周辺で続いた高温傾向です。

米国環境予測センター(NCEP)と米国国立大気研究センター(NCAR)が提供するデータによれば、この期間の気温は平年よりも明らかに高く、氷が形成されにくい状況が続いていました。

また、気温だけでなく、大気や海洋の循環変動、気圧配置の偏りなど複合的な要因が影響している可能性もあります。

特に、北極の気温上昇は他の地域の温暖化よりも速く進む「北極温暖化増幅(Arctic Amplification)」と呼ばれる現象が関係しているとみられています。

極地の氷が溶けてしまうと、太陽光を反射できる氷が消えて、暗い海面が露出してしまうことで、地球が太陽光をより吸収しやすくなり、温暖化に拍車がかかります。

加えて、氷が溶けることで海面上昇が起こり、沿岸都市の浸水リスクや島国の水没リスクが高まります。

さらには猛暑や寒波、台風やハリケーンの大型化などの異常気象を引き起こす危険性があるのです。

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Credit: canva

このような状況に対応するため、観測体制の強化が進められています。

JAXAは、2025年度に水循環変動観測衛星「しずく」の後継機となる人工衛星「GOSAT-GW」を打ち上げる予定です。

この衛星には、さらに高性能な「マイクロ波放射計3(AMSR3)」が搭載され、より精度の高い極域観測が可能になると期待されています。

かつては厚く広がっていた北極の氷が、わずか数十年で急速に縮小しているという現実は、私たちが思っている以上に深刻かもしれません。

遠く離れた北極で起きていることが、私たちの日常や未来にどう関わってくるのか。

その答えを知るためにも、こうした科学的観測とその継続的な発信が、ますます重要になっていくのです。

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参考文献

北極の冬季海氷域面積が衛星観測史上最小を記録
https://www.nipr.ac.jp/info2025/20250418.html

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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