月曜日, 5月 12, 2025
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動物園の母ザルが「わが子の亡骸」を食べてしまう!


サルの母親は私たちと同じように、子供に対して深い愛情を抱きます。

その証拠に母ザルたちは死んだわが子を手放すことなく、何日も持ち歩く事例も実際報告されています。

そして、伊ピサ大学(University of Pisa)の研究でも、霊長類研究チームによりチェコの動物園で、子供の亡骸を運ぶ母ザルを発見したという報告がありました。

まさに母親の愛と哀しみを物語る瞬間を目撃したわけですが、このケースではその後非常に予想外の事態が起こります。

なんと母ザルが子供の亡骸を食べてしまったのです。

このようなケースは過去にほぼ前例がありません。

なぜ母ザルは愛すべき子供を食べてしまったのでしょうか?

研究の詳細は、2023年6月27日付で科学雑誌『Primates』に掲載されています。

目次

  • 2日間持ち歩いた後、わが子を食べ始めてしまう
  • 愛すべき子供を食べた理由とは?

2日間持ち歩いた後、わが子を食べ始めてしまう

事が起こったのは2020年8月、チェコにあるドヴール・クラーロヴェー・サファリパーク(Dvůr Králové safari park)でのことでした。

マンドリル属の一種であるドリルのメス「クマシ(Kumasi)」が同月24日、動物園内でオスの子を出産しました。

飼育員も子供は元気に生まれたと思っていましたが、その8日後に突如として死んでしまいます。

死因の特定のために飼育員たちが亡骸を運び出そうとしましたが、母親のクマシは子供を渡そうとせず、囲いの中を逃げまわりました。

それから2日間にわたり、クマシはわが子を片時も離さずに持ち歩くようになります。

死んだわが子を撫でるクマシ
死んだわが子を撫でるクマシ / Credit: Elisabetta Palagi et al., Primates(2023)

飼育員は「おそらく子供が死んだことを受け入れられなかったのでしょう」と指摘します。

それを示すように、クマシは子供の顔を自らに引き寄せて食い入るように目線を送り続けました。

クマシの行動を研究したピサ大学の霊長類学者エリザベッタ・パラギ(Elisabetta Palagi)氏によると「サルの母親はよく、目の動きを感知するために死んだ子供の顔をのぞき込む」といいます。

というのも、子供から何らかのフィードバックがあれば生きていることが分かるからです。

またクマシは子供の体をつねったり毛繕いをして、反応が返ってこないか確かめていました。

他の仲間が近寄ってきても子供を手放すことは決してなかったようです。

子供の亡骸を持っているのがクマシ
子供の亡骸を持っているのがクマシ / Credit: Elisabetta Palagi et al., Primates(2023)

ところが2日目が終わる頃に異変が起きました。

クマシは子供から何の反応も返ってこないことに落ち着きを失くし、わが子を乱暴に引きずったり、木の上から投げ落とすようになります。

子供の亡骸を投げ落としたり引きずる様子
子供の亡骸を投げ落としたり引きずる様子 / Credit: Elisabetta Palagi et al., Primates(2023)

そして子供が死んだことを認めたのか、クマシはわが子の亡骸を食べ始めたのです。

結局、飼育員が亡骸を運び出すまでに全身のほとんどを口にしたといいます。

他の仲間はそれを見守るだけで、子供を食べることはありませんでした。

これまでに母ザルが子供の亡骸を食べた事例が何回記録されたかは不明ですが、極めて稀なことに違いありません。

パラギ氏も「科学的な文献では逸話レベルの報告しか見たことがなく、今回の共食いケースはこれまでで最も詳細に報告された記録になりました」と話します。

では、なぜクマシはわが子を食べてしまったのでしょうか?

※ 次ページでは、実際の共食い映像を掲載しています。閲覧には注意してください。

愛すべき子供を食べた理由とは?

私たち人間からすれば恐ろしい蛮行に思えますが、研究者らは「クマシには死んだわが子を食べるだけの正当な理由があった」と考えています。

パラギ氏はこう説明します。

「霊長類の母親にとって、子供の妊娠と出産には膨大なエネルギーを投資しなければなりません。

ここでの共食い行動はおそらく、出産後の母親のエネルギー回復を助ける適応的な進化であり、それによって再び出産できる可能性が高まるのでしょう」

つまり、新たな命を育むためにわが子をただ捨て去るのではなく、体に取り込んで貴重な栄養源に変えていたというわけです。

さらにパラギ氏は「クマシが他の仲間と亡骸を共有しなかったことが、母体のエネルギー回復の仮説を強く裏付けている」と付け加えました。

子供の亡骸を食べるクマシ
子供の亡骸を食べるクマシ / Credit: Elisabetta Palagi et al., Primates(2023)

それから研究者らは、クマシが亡骸を食べられたのは子供の年齢も関係しているかもしれないと考えています。

パラギ氏は「赤ちゃんが生まれて間もないほど、母の子に対する愛情がまだ十分に強くなっていない可能性がある」と指摘します。

出産から8日しか経っていなかったことが、クマシに共食いを許したのかもしれません。

もう少し子供が大きく成長していて、母子の絆がより強くなっていれば、共食いは起きなかったとも予想されます。

しかしクマシの共食いは「わが子の命を無駄にはしない」という一つの愛の形だったとも考えられるでしょう。

全ての画像を見る

参考文献

Zoo monkey eats her baby’s corpse after carrying it around for days
https://www.livescience.com/animals/monkeys/zoo-monkey-eats-her-babys-corpse-after-carrying-it-around-for-days

Monkey In Zoo Eats Baby’s Corpse In Rare Example Of Primate Cannibalism
https://www.iflscience.com/monkey-in-zoo-eats-babys-corpse-in-rare-example-of-primate-cannibalism-69642

元論文

Record of thanatology and cannibalism in drills (Mandrillus leucophaeus)
https://link.springer.com/article/10.1007/s10329-023-01075-8

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。
他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。
趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

フラッグシティパートナーズ海外不動産投資セミナー 【DMM FX】入金

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