自作PCの分野では、古くなったパーツや故障したパーツを換装することがよくありますが、その多くはデスクトップPCで、ノートPCのパーツ交換はあまり行われません。一方インドでは、古いノートPCの部品や電子廃棄物などを組み合わせて作る「フランケンシュタインマシン」というリサイクルノートPCの市場が発展していますが、そこにはグローバル市場を巻き込んだ大きな問題も潜んでいると、IT系ニュースサイトのThe Vergeが報じました。

The rise of ‘Frankenstein’ laptops in New Delhi’s repair markets | The Verge
https://www.theverge.com/tech/639126/india-frankenstein-laptops

歴史的にリサイクル精神が旺盛なインドでは、街のあちこちにエンジニアが作業場を構え、古いノートPCや電子廃棄物から回収したマザーボード、画面、バッテリーをつなぎ合わせて作った再生ノートPCを販売しています。

首都・ニューデリーのネルー・プレイスにある工房兼ノートPCショップのオーナーのマノハル・シン氏は、「この店では、大学生やフリーランサーの労働者が新品のマシンに7万ルピー(約11万円)を費やす代わりに、1万ルピー(約1万7000円)で高性能なマシンを手に入れることができます。多くの人にとって、この金額の差は仕事や勉強ができるかどうかに直結します」と話しました。


フランケンシュタインの怪物のように、複数のブランドのデバイスから回収した部品で組み上げた安価な端末は学生やギグワーカー、中小企業に重宝されており、成長が著しいインドのデジタル経済から取り残された人にとっての命綱になっているとのこと。

シン氏は、工学部の学生が店を訪れた時のことを振り返って、「その学生は何カ月も貯金していたのに、授業に使うノートPCを新調できませんでした。そこで、私が予備のパーツを使ってマシンを組み立ててあげたところ、彼は目に涙を浮かべて帰っていきました。その時初めて、この仕事の大切さを実感しました」と述懐しました。

再生ノートPCを扱う店の多くは小規模な工房ですが、世界的なデジタル製品市場が直面している大きな争いの最前線に立っています。それは、多くのグローバルメーカーが、人々に新しい端末を買わせるためにスペアパーツを入手しづらくしたり、独自規格のネジを使ったり、ソフトウェアロックを導入したりして意図的にPCの修理を困難にしているという問題です。

このような慣行をめぐる欧米での戦いに触発され、インド政府は修理する権利の法整備に向けた取り組みを始めていますが、議論は遅々として進まず、修理業者らは宙に浮いた立場に置かれているため、非公式な取引や電子廃棄物市場を通じて部品を調達せざるを得ない状況が続いています。

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廃棄物管理に取り組む非営利団体・Toxics Linkの副理事長のサティシュ・シンハ氏は、「古いラジオからお下がりの携帯電話まで、インドには昔から続く修理文化が根付いています。しかし、グローバル企業は計画的陳腐化を進め、修理を困難にし、その代わりに新しい機器の買うよう強要しています」と話しました。

修理業者が非公式なサプライチェーンを頼るようになった結果、インドには電子廃棄物の巨大市場が生まれました。ニューデリーにあるインド最大の電子廃棄物集積地のシーランプ市場もそのひとつで、敷地内には毎日約3万トンの電子廃棄物が運び込まれ、約5万人の非公式労働者が電子廃棄物の解体や使える部品の回収に従事しています。


このような電子廃棄物処理場では、適切な安全対策が講じられていないことが少なくないため、回収業者や作業員は鉛や水銀、カドミウムといった有害物質にさらされながら仕事をすることを余儀なくされているのが実情です。

しかも、こうした問題を抱えているにもかかわらず「フランケンシュタイン市場」は成長を続けており、インド経済の発展に伴って、非公式なパーツで作られた再生ノートPCの需要はますます高まっています。

18歳のスクラップ業者のファルーク・アハメド氏は取材に対し、「ひどいせきが止まりませんが、どうしようもありません。この仕事で家族を養っていかなくてはいけませんから」と話しました。

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