NTTは、超音波と特定周波数の振動により、何もない空中に力強く多彩な触り心地を提示できる新技術を考案したと発表した。成果の一部は東京大学との共同研究によるもの。
超音波を肌に集束させ焦点を作ると非接触な触覚が生まれる。この触覚技術はデバイス装着が不要なため、ユーザー負担が低い触覚技術として注目されている。しかし従来の方法では、超音波で提示できる力が弱いこと、そして提示できる感触が単調なものに限られているという2つの大きな課題があった。
従来の研究で、人間は超音波焦点に触れると最大で0.01N程度の弱い力を感じるが、この焦点を肌の上で5Hzで回転させると、感じられる力は20倍(約0.2N)まで増強されることが分かっていた。ただ、その主要因は「5Hzの皮膚振動なのか」、それとも「5Hzの回転そのものなのか」が分かっていなかった。
そこで今回の実験では、一定強度の超音波焦点の位置を皮膚上で5Hzで回転させた刺激と、超音波の強度をゼロから最大値の間で5Hzで変化させた振動刺激を生成し、感じられる力の強さを比較。参加者の左手は超音波刺激、右手にはロボットアームによる押し込み刺激を提示し、それを比較することで力の強度を定量化した。その結果、5Hzの回転刺激は5Hzの振動刺激より6倍強いことが分かり、主要因であると断定できた。
そして、普段人間は皮膚に伝わるさまざまな周波数の感触刺激を統合することで多彩な感触を得ていることに着目し、その中でも触覚受容器が敏感に反応する周波数である5Hz/30Hz/200Hzを選び、合成することで多彩な感触を生み出す超音波触感シンセサイザを考案。
シンセサイザではまず強い力を生み出す刺激として5Hzで回転する焦点を提示し、その回転する焦点の提示力を30Hzと200Hzに変調させ、超音波焦点を肌の上で振動させる。その提示力変調の振幅を調整することで最終的に提示される振動の強さを決定する。
その結果、物体の表面を撫でた際に指に加わる振動を合成で再現できるようになり、「つるつる」、「さらさら」、「ざらざら」といったさまざまな強さの粗さ感を調整できるようになったとしている。
今後はこれらの研究成果をさらに追究し、デバイスを身につけることなくリアルな感触を再現できる触覚インターフェイスやコンテンツの実現を目指す。
🧠 編集部の感想:
この技術は、触覚インターフェースの新たな可能性を切り開くものですね。デバイスなしでリアルな感触を再現できることは、特に仮想現実やリハビリテーション分野において革命的です。未来のユーザー体験がどのように進化するのか、非常に楽しみです。
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