土曜日, 5月 17, 2025
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住友金属鉱山【5713】EV化の停滞電池に採用される材料の品種転換で苦戦する理由妄想する決算

🧠 概要:

概要

住友金属鉱山は、非鉄金属の大手企業であり、その事業内容は資源事業、製錬事業、材料事業の三つに分類されます。EV(電気自動車)市場の動向や品種転換の影響を受け、特に材料事業が苦戦しています。最近の決算では、売上は増加したものの利益が大幅に減少しており、ニッケル製錬と電池材料の需要環境が課題とされています。

要約の箇条書き

  • 企業概要

    • 住友金属鉱山株式会社は非鉄金属の大手企業で、様々な非鉄金属を扱う。
  • 事業セグメント

    • 主要な事業は資源事業、製錬事業、材料事業の三つで構成される。
  • 事業内容

    • 資源事業では銅や金の探査・製造を行う。
    • 製錬事業は銅やニッケルの製錬を担当。
    • 材料事業は電池材料や触媒の製造販売を行う。
  • 業績の推移

    • 2022年に過去最高利益2810億円を記録。その後、市況変動により利益が減少。
  • 影響要因

    • 市況変動、特に銅とニッケルの価格変動が業績に大きく影響。
    • EV化やニッケル市況の悪化が材料事業の前年対比での大幅減益に繋がった。
  • 需要拡大の見込み

    • 銅やニッケル、電池材料はEV市場の成長と連動して需要が拡大する見込み。
  • 今後の戦略

    • 成長市場に向けた銅鉱山権益の獲得や正極材製造能力の増強を進めている。
  • 直近の業績

    • 2025年3月期の売上高は1.5兆円を超えたが、純利益は減少し、ニッケル市場の停滞が影響。
  • 収益改善手法
    • コスト削減や効率化に取り組む一方で、ニッケル製錬は構造改革が求められている。

以上の内容から、住友金属鉱山はEV市場の変化に強く影響されており、今後の市場動向が業績に重要なポイントとなることが示されています。

住友金属鉱山【5713】EV化の停滞電池に採用される材料の品種転換で苦戦する理由妄想する決算

日経平均に採用されている銘柄を全て取り上げているこの、今回取り上げるのは住友金属鉱山株式会社です。

非鉄金属の大手企業です。ちなみに鉄以外の金属はまとめて非鉄金属と呼ばれます。

主な非鉄金属としては、銅やアルミニウム、亜鉛や鉛、ニッケル、マグネシウムなどがありますが、鉄以外の全ての金属ですから約4000種類もの非鉄金属があります。

事業内容

それでは早速事業内容から見ていきましょう。

住友金属鉱山の事業セグメントは以下の3つです。

①資源事業:銅や金を主力に国内外で多数の鉱山権益を保有しており、国内外で非鉄金属の探査、開発、生産、販売を行う企業

②製錬事業:銅やニッケルの製錬・販売を主力とする事業

ちなみに製錬とは鉱石から不純物を取り除き、純度の高い金属に加工する過程を指し、住友金属鉱山はニッケルの製錬では世界トップクラスの技術力を保有しています。

③材料事業:電池材料、紛体材料、結晶材料などの製造、加工販売、自動車排ガス処理触媒、化学触媒、石油精製脱硫触媒などの製造販売

リチウムイオン電池向けの正極材に強みがあり、EV市況に左右されやすい事業

主力の非鉄金属としては(1)銅(2)ニッケル(3)金となっており、ニッケルでは世界でも上位です。
この3つの非鉄金属を中心に、資源開発から、精錬、材料化まで一貫して事業を展開する企業となっています。

2023年3月期~2025年3月期のセグメント別税引前利益の推移は以下の通りです。①資源:764億円→528億円→1018億円②精錬:1179億円→622億円→▲71億円

③材料:173億円→▲72億円→▲542億円

毎期変動が大きい事が分かります。
資源事業は主力の金や銅の相場変動の影響を極めて受けやすいですし、製錬事業もニッケル市況や、製錬の過程で電力を大量に使いますからエネルギーコストなどにも左右されます。

そして材料事業は主力製品の正極材が活用されるEV市況の影響によって左右されやすいです。

市場環境の変化による影響を受けやすい事業が多く、業績が変動しやすくなっています。

業績の推移

実際に2020年3月期~2024年3月期までの業績の推移を見ていくと、銅相場とニッケル相場が高騰した2022年3月期は純利益が2810億円と過去最高益を達成しています。2023年3月期は銅相場が下落した事で減益となりましたが、円安が大きく進んだ事とニッケル相場がさらに上昇した影響などで純利益は1606億円と堅調な業績を維持しました。

ですが2024年3月期は銅に加えてニッケル相場も落ち着きを取り戻し大幅減益となっています。

相場変動に業績が左右されている事が分かりますね。

ちなみに2026年3月期の主要な要素の相場上昇による影響は以下が見込まれています。・銅(トン��たり100ドルの変化):34億円・ニッケル(ポンド当たり10セント):16億円・金(トロイオンス当たり10ドル):3億円

・ドル円(1円):+13億円

相場変動は業績へ大きな影響がありますので、こういった影響が大きい要素の相場変動に注目です。

今後の取り組み

そして住友金属は今後の成長に向けて銅(Cu)やニッケル(Ni)、そして正極材を中心とする材料事業の拡大に向けて取り組みを進めています。

この3製品は成長市場となっていますから拡大を進めています。

まず、銅は金属の中で銀の次に電気を通しますが、銀と比べて圧倒的に安価ですし、加工性や耐食性にも優れていますから電力用途に使われています。

銅は電気がある所にはほぼ必ず使われており、今後の電力需要拡大や脱炭素などグリーン化、再エネやEV普及など電力を活用する場所が増えると共に、銅の需要の拡大も見込まれています。

銅の供給量は増加傾向ですが、それでも今後銅の供給不足が懸念されるような状況となっています。

そしてニッケルや正極材も需要が拡大しており、特にEV化による拡大が見込まれています。正極材もニッケルを使用しますし、それ以外でもEVのニッケル使用量は圧倒的に多いです。

内燃機関の自動車がニッケルを使用しないのに対して、EVでは27.5キロも使用します。

ちなみに銅もEVでの利用量が内燃機関の自動車の約4倍ですから、EV化の進捗というのは住友金属鉱山にとっても特に重要です。

今後の成長に向けて銅鉱山権益の獲得や正極材の生産能力の増強などを積極的に進めていますから、EV市場の動向には特に注目です。

という事で、銅やニッケル、金それに加えて為替相場やEV化の動向に注目です。

直近の業績

それでは続いて直近の2025年3月期の業績を詳しく見ていきましょう。

売上高:1兆5933億円(+10.2%)純利益:165億円(▲71.9%)

増収ながらも減益となっており利益面が苦戦しています。

利益の変動要因を見ていくと、銅の市況変化の影響が+190億円、ニッケルが▲152億円、金が+131億円、為替が+294億円など市況が悪化したニッケルを除き市況の変化は好影響がでています。

銅では生成系AI関連の通信量増大やそれに伴うデータセンター建設需要を背景に需要が底堅く推移した影響が出たとしています。金は地政学リスクの高まりによる影響などがあり、上昇基調だったとしています。

そして為替も円安に推移した事で好調となっています。

インフレによる採掘コスト増加などコスト上昇による影響は▲223億円ほどありましたが、それでも事業面はプラスの影響の方が大きく出ています。

それでも大幅な減益となった要因は▲1127億円もの大型の減損による影響です。

セグメント別の利益を見てみると以下の通りで、製錬セグメントと材料セグメントが大型の減損で大きく業績が悪化しています。
()内は前期比

①資源:1018億円(+490億円)②精錬:▲71億円(▲693億円)

③材料:▲542億円(▲470億円)

そもそもニッケルは唯一市況が悪化していましたが、これは中国やインドネシアの生産が増加している一方でEV化が停滞した事で供給過多となり市況が低迷した事が影響しています。

そして、ニッケル市況の低迷が続く事が見込まれる中でフィリピンのニッケル製錬子会社のコーラルベイニッケル社が512億円もの大型の減損を出した事で製錬事業は低迷しています。

ニッケルの市況悪化と大型減損で製錬事業は苦戦したという事ですね。

そしてEV化の停滞は正極材を主力とする材料事業へも影響を与えており業績は停滞しました。

さらに、この正極材はNCA(ニッケル・コバルト・アルミ)からNMC(ニッケル・マンガン・コバルト)系への急速な品種転換が進んでいます。

コバルト価格が高騰する中で、NMC系はニッケルとマンガンの比率を調整する事でコバルトの含有量を調整できるためコスト面で柔軟性を持っています。

さらに、NMC系は発熱しにくいため熱暴走のリスクが低いなど安全性のメリットもあるため、安全性を重視する多くの自動車メーカーは電池の品質向上を求めてNMC系がEVの標準となりつつあります。

一方でNCAはエネルギー密度が高いためテスラ社が採用しており、その電池を提供するパナソニック向けに住友金属鉱山は強みを持っていました。
なので現有設備がNCA向けとなっており、NMC系への対応のために生産プロセスの変更が不可欠な状況だとしており、それによって材料事業でも▲573億円もの大型の減損を計上しています。

今後もNMC系への転換の中で生産量が低下する事が見込まれており、事業の拡大が難しい状況となっています。

EV化の停滞による影響や品種転換と悪影響を強く受けた事で苦戦していた事が分かります。

そんな中で徹底したコスト削減や効率化を進めており、それによる収益性改善を進めています。

苦戦するニッケル製錬に関しても構造改革を進めるとしていますので、現在の住友金属鉱山にとっては収益性の改善がどこまで進むかも注目の状況となっています。

2025年3月期は減損という一時要因が大きかったので、2026年3月期はその反動による業績改善は期待されますが事業自体は一定の停滞が続く可能性が高そうです。

そんな中で通期予想も減収ながらも、一時要因の反動で増益となる事を見込んでいます。

電池材料の売上が苦戦する事に加えて、銅系事業やニッケル系事業でも市況停滞による影響や、為替も円高への推移を見込んでいます。

業績は市況による影響を受けますので、それによって左右されますから市況次第の側面もありますのでその動向には注目です。



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