かつて「家事」といえば、毎日のルーティンをこなすだけの、どこか義務的なイメージがつきものでした。しかし、いまや家事に対する価値観は大きく変化しつつあるようです。
「べき論」からの解放
家事の意識改革
「花王株式会社」が運営する生活情報サイト「My Kao くらしラボ」が、先月公開した調査によると、家事に対する義務感は希薄化し、家族で分担したり、家電に頼ったりするスタイルが浸透してきているのだとか。情報感度の高い日本のMZ世代にとって、これは見逃せない変化といえるかもしれません。
さて、今回の調査で特筆すべきは、家事に対する「べき論」からの解放です。「家事は手間ヒマがかかっても、きっちりやるべきだと思う」という考えに、10年前と比べて男女ともに10%以上減少が見られました。
背景には、共働き世帯の増加やリモートワークの普及など、ライフスタイルの多様化があるのでしょう。内閣府の「男女共同参画社会に関する世論調査」(令和6年)でも、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考えに反対する人が65%に達しており、従来の性別役割分担の意識も薄れつつあるようです。
©花王株式会社
家事はもっとクリエイティブに
義務感から解放されたいっぽうで、家事に対するポジティブな変化も生まれています。同調査によれば、家事にやりがいや喜びを感じる男性が増加傾向にあるのだとか。特に20~40代では、自分は家事に向いていると感じる男性の割合が女性を上回る結果も出ています。
「結婚したとき、料理以外は妻より経験値が高かった。『タスク』と思ってやっているが、ひとり暮らしの時からの掃除のやり方があり、きれいになると『爽快感』がある」
という30代男性のコメントからも、家事をクリエイティブな活動として捉える価値観が垣間見えます。
©花王株式会社
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家電と外部サービス。賢く頼るのがスマート
時間や手間を省くために、家電や外部サービスを賢く利用するのも、いまどきの家事スタイルの特徴のようです。調査によると、洗濯乾燥機やロボット掃除機などの家事家電は、若い世代ほど積極的に導入する傾向にあるようです。
また、家事代行サービスやネットスーパーなどの外部サービスも、上手に活用することで、家事の負担を軽減できるでしょう。浮いた時間を自分の趣味やスキルアップに充てるなど、有効活用できるのは魅力的ですよね。
夫婦でシェア。家事分担の新常識
家事分担のあり方も、従来の「押し付け合い」から「協力し合い」へと変化しています。花王の調査によると、この10年で女性の家事時間は短縮傾向にあるいっぽうで、男性の家事時間は増加傾向にあるのだとか。
「料理は得意だし好き、やったら意外とおもしろい。掃除と洗濯は嫌いだし不得意、妻の指示に従っている。食器洗いは自分が担当、妻にはせめて食器は水につけておいて欲しい」(30代男性)
というコメントにもあるように、得意な家事を担当したり、お互いをサポートしたりする姿勢が、より良い夫婦関係を築く秘訣なのかもしれません。
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時短だけじゃない。心のゆとりを生む家事術
家事は、単なる作業ではありません。家族とのコミュニケーションを深めたり、自分の暮らしを豊かにしたりするための大切な要素。
たとえば、休日に家族みんなで料理をしたり、部屋の模様替えをしたりするのも、立派な家事といえるでしょう。家事はもっと自由で、もっとクリエイティブでいい。そんなふうに捉えることで、日々の暮らしがより豊かになるはずです。
『調査概要』
「生活者の意識と行動に関するインターネット調査」
◎2024年5月/首都圏在住20~60代男女既婚男女 各500人「生活者の暮らしに関わる意識と行動調査」
◎2014年9月、 2024年9月 /インターネット調査/首都圏在住20~60代既婚男女/2014年 1,796人 2024年 1,811人「健康と美容に関する意識実態調査」
◎2021年6~8月/オンラインインタビュー調査/首都圏在住40~50代有職女性/10人「ミレニアル世代の家事調査」
◎2019年4〜8月/家庭訪問調査/20~30代既婚男女/ 8世帯
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