土曜日, 5月 17, 2025
ホームニュースエンタメニュース丸山隆平、“相当な覚悟”で受けた8年ぶり主演映画で得た気づき 「距離感と思いやりが大事」

丸山隆平、“相当な覚悟”で受けた8年ぶり主演映画で得た気づき 「距離感と思いやりが大事」


 5月16日から公開中の映画『金子差入店』は、刑務所や拘置所に収容された人への差入を代行する「差入屋」を題材にしたヒューマンサスペンスだ。主人公となる差入店の店主・金子真司を演じたのは丸山隆平。『泥棒役者』以来8年ぶりに映画主演を務めた丸山に、久しぶりの映画出演に対する思いや役作り、そして本作の魅力についてたっぷりと語ってもらった。(柚月裕実)

丸山隆平の撮り下ろしカット(複数あり)

「監督の人柄と本に惹かれて、『ぜひ!』と」

ーー映画作品へは8年ぶりの出演ですが、久しぶりに撮影現場に入ってみてどんなことを感じましたか?

丸山隆平(以下、丸山):今回が初の長編映画となった古川(豪)監督が11年間温め続けたオリジナル作品だったので、世に出すために丁寧に作り上げていく空気感、熱量がすごくて。集中力が研ぎ澄まされるような現場で、とても充実した撮影期間でした。スタッフのみなさんが、俳優部がとにかくお芝居だけに集中できるようなシチュエーションを作ってくださったので、とても恵まれた現場で撮影することができました。

ーー今回の出演で、決め手になったのはどんなことでしょうか?

丸山:すべてのタイミングですかね。脚本や監督との出会いもそうですし。スケジュール的なものもありました。オファーをいただいてから急ピッチで進めて、本当に奇跡的なタイミングだったと思います。僕自身は、監督の人柄と本に惹かれて、「ぜひ!」と答えました。

ーー脚本のどんなところに惹かれたのでしょうか?

丸山:「差入屋」という職業自体に馴染みがなかったのと、登場人物の普遍性に惹かれました。あと、身近にはないようなサスペンス的な要素もありながら、実際にそういう方がいることに目をそむけない内容で、見捨てることなく、かつ、綺麗事だけで描くわけでもない。すごく地に足のついた物語だったので、そこに心を動かされました。俳優として、相当ハードルが高いことを求められているのも嬉しかったですし、チームに入れようとしてくださったこと自体も嬉しかったので、相当な覚悟をもってオファーを受けました。

ーー丸山さんが演じる金子は差し入れ屋の店主で、自ら刑務所に入った経験を持つ人物です。役作りはどのようにしていきましたか?

丸山:ひとつは、この作品の脚本を書かれた監督自身がこの作品の中にちりばめられている気がしたので、金子を演じるときに監督をモデルにしました。監督のご家族に対しての愛情がすごく深いんですよね。家族の話をしているときの顔は、監督として、一人の男としての顔とは違う、父の顔みたいな部分があったんです。僕はまだ父でも既婚者でもないので、そういうところを意識しました。あとは、監督自身の若かりし頃の性格も練り込まれてる感じがしたので、そこも要素として参考に。肌感や髪のような見た目に関しても、自分の想像に加えて、古川監督から聞いた話を踏まえながら作り上げていきました。大きいスクリーンで観てもらう映画なので、違和感のないエイジングのかけ方を心がけましたね。日常のなかに金子を同居させて、常に「こういうとき、真司はどうするかな?」ということを考えながら。少しずつ彼を自分のなかに入れ込んで、違和感なく表現できるように、寝かせは出現させ、寝かせは出現させ……みたいなことを繰り返していました。

ーー監督とは何度も会って、個人的な生い立ちの話もされたそうですね。

丸山:まずはお互いのパーソナルなところを知ろうと。結果的に、食事や飲みの席を重ねたことが僕にとって役づくりのためのすごくいい栄養分になりました。僕は舞台のときも、作演される方とは何度もご飯に行ってその方のことを知ろうとするのですが、ものづくりをされる方は“表現者”なので、その人を知ることってやっぱり面白いんですよね。そういう方ほど、普遍性も意識的に自分なりの切り取り方をされるので。日常会話で「いや~、実は昔ちょっとやんちゃしてまして……」みたいノリがあるじゃないですか。「あ、そうなんすね? 意外に」というようなノリから、お互いの人となりを話すことになりました。

ーー反対に、丸山さんが自身の話をしたことで、それが作品の内容や演出に反映されたことは?

丸山:僕の認識の中ではないんですけど、監督が演出される際に「丸山さん、こういうこと話されてたじゃないですか」みたいなことをヒントとして出してくれて。「あ! そういう感情か」っていう会話を重ねたことがありました。2人の共通言語として、お芝居のヒントとしてはありましたね。

ーー共演者の方々についても聞かせてください。北村匠海さん、寺尾聰さんとは、ミュージシャンもしながら俳優のお仕事もされていると言う共通点があります。お芝居で向き合うなかで、通ずるものや何か感じたことはありましたか?

丸山:お二方だけに限らず、みなさんやっぱりお芝居に対してのアプローチの仕方とか、今までそれぞれが戦ってきた武器みたいなものがあるじゃないですか。名刀・村正なのか妖刀なのか、それぞれの特殊能力みたいなものがある。北村さんは、底知れない構築の仕方みたいなものを感じました。実際に対峙しているときと映像で観たときの印象が全然違うんですよね。試写で作品を観たときに、「あ、こういうふうになるのか!」と驚きました。ただの見せ方じゃない、マジックを見せられているような感覚でした。寺尾さんはもう存在しているだけで……っていう部分もあるんですけど、やっぱりいろんな時代を耐えしのぎ、勝ち上がってきたが故の奥行き、人としての大きさを感じましたね。例えば、カットはかかるんだけど、セリフ以外のところで、役としてのセリフを一言言ってくださるシーンがあったんです。僕は背中でその言葉を聞くんですけど、もう何回もガーッ!て来ました。「真司はこういうふうに思ってたんだ」っていうヒントみたいなものを添えてくださいました。

ーーそこも見どころのひとつに。

丸山:見どころを挙げればキリがないので、いろんなシチュエーションで観ていただきたいです。恋人とでも家族とでも、兄弟とでもいい。一緒に観に行く関係性の人とどういう形でこの映画を共有するのか。観てくださる人それぞれの見どころとして刺されば、作り手としてこれ以上の喜びはないですね。


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ーー丸山さん自身は完成した映画を観てどんな感想を持ちましたか?

丸山:とにかく情報量が多い。今は映画を倍速で観たりする方もいると思うんですけど、それだとたぶん追いつかないやろなって。だから、速度を変えられない映画館で観るのがいいなと思うんです。お芝居や物語以外のところも、細部まで丁寧で厚みのあるものになっているんですよね。最後まで、メッセージや思いが詰まっていると思いました。今だからっていうメッセージも強くある。暗いだけじゃなくて、何を大事にするべきか。希望みたいなものもありながら、いろんな側面で考えられる映画になっていると思います。

ーー作品に熱量がありましたね。

丸山:熱量、そうですね。余韻もあって考えさせられる。やっぱり映画の魅力って“余白”ですよね。分かりやすい作品もそれはそれでめちゃくちゃいいんですけど、「さあ君はどうするんだい?」みたいなほうが、僕の好きな先輩方、先人たちが作ってきた“映画”なんですよね。そういう余韻や余白のある映画だなって。「ああ、いい作品に参加させてもらったぜ、イェーイ!」みたいな(笑)。

ーー(笑)。公開が発表されたタイミングで「自分自身がこれまで歩んできた人生を見つめ直すという貴重な作品にもなりました」とコメントされていましたが、丸山さんがこの映画を通して見つけた大事なものがあれば教えてください。

丸山:家族や会社もそうですし、特にグループは家族以上に一緒にいるので。あと改めて思ったのは、たとえ肉親であれ、家族のように一緒にいる人間であれ、距離感と思いやりが大事なんだな、ということですね。自分が傷つかないための距離感っていうのももちろん社会としては大事だと思うし。“踏み込まなくていい”距離感もあると思うんです。相手を大事にするからこその思いやりを持った距離感が大事なのかなって。

ーーなるほど。

丸山:『新世紀エヴァンゲリオン』の影響で知ったんですけど、哲学者アルトゥール·ショーペンハウアーの「ヤマアラシのジレンマ」っていう言葉が好きで。ヤマアラシって、寒いところにいるから身を寄せ合わなきゃいけないけど、寄せすぎるとお互いを傷つけちゃうんですよね。「ショーペンハウアーよう言うた!」みたいな感じなんですけど(笑)。そういうことを改めて感じました。「金子家」っていう中でもそうだし、「ご近所」もそう。あと、金子差入店の人間としては、クライアントとの距離感についても、思いやりがある距離感なのか、職業としての距離感なのかで、全然違うんですよね。人との関係性と距離感と思いやりみたいなところは、生きている人間としては、国籍も関係なく同じなんじゃないかなと改めて感じました。家族だからこそ話せないことってあるじゃないですか。でも話さなきゃいけないこと、逃げていたこともある。そういうことに対して、逃げちゃいけないなって改めて身につまされる部分もあって。この作品が仕上がったあと、家族にちょっと行動を起こしてみたりはしました。具体的に言うと結構グロテスクなので言いませんけど(笑)。

ーーありがとうございます。最後に映画をご覧になる方にメッセージをお願いします。

丸山:僕を知ってくださってる方は、今までとちょっと違うようなテイストの作品に奮闘しているようにも見えると思います。あと、この作品自体に興味持ってくださる方は、それぞれ受け取り方や感じ方が違うと思うので、ほんとに一人ひとりどういうふうに感じたのかを聞いてまわりたいぐらいです。この作品を通して、ちょっとしたことですけど舵を切ってみたり、自分の人生の中にも影響はあったので、みなさんがどんなふうにこの作品を持ち帰るのか、どういうふうにこの作品が届くのか、とても楽しみです。配信の世の中ではありますけれども、お時間が許すのであれば、劇場に行って豊かな時間を過ごして、何か希望を持って帰っていただければなと思います。あとサスペンスとしても楽しめるから、気軽な気持ちで劇場に来ちゃえば? ムビチケも買っちゃえば? ファンの方は記念に!

■公開情報
『金子差入店』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
出演:丸山隆平、真木よう子、三浦綺羅、川口真奈、北村匠海、村川絵梨、甲本雅裕、根岸季衣、岸谷五朗、名取裕子、寺尾聰
監督・脚本:古川豪
主題歌:SUPER BEAVER「まなざし」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作プロダクション:KADOKAWA
製作:「金子差入店」製作委員会
配給:ショウゲート
©2025 「金子差入店」製作委員会
公式サイト:kanekosashiireten.jp

公式X(旧Twitter)@kaneko_movie



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編集部の感想:
丸山隆平さんが8年ぶりに主演した『金子差入店』、距離感と思いやりの重要性を深く考えさせられる映画ですね。サスペンスの要素がありながら普遍的なテーマを扱っていることで、観る人にそれぞれの背景を反映させる余白があるのが魅力的です。彼自身の成長や気づきも感じられ、作品に対する熱い思いが伝わってきます。

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