by Shujianyang
中国が2021年から運用している宇宙ステーション「天宮」で、これまで見つかったことがない細菌が見つかり、宇宙ステーションの名称にちなんで「Niallia tiangongensis(ニアリア・ティアンゴンエンシス)」と名付けられました。
Niallia tiangongensis sp. nov., isolated from the China Space Station | Microbiology Society
https://www.microbiologyresearch.org/content/journal/ijsem/10.1099/ijsem.0.006693
Unknown strain of bacteria found on China’s Tiangong Space Station — and it’s developing resistance to space | Live Science
https://www.livescience.com/space/space-exploration/unknown-strain-of-bacteria-found-on-chinas-tiangong-space-station
New species of space-adapted bacteria discovered on China’s Tiangong space station | Space
https://www.space.com/space-exploration/human-spaceflight/new-species-of-space-adapted-bacteria-discovered-on-chinas-tiangong-space-station
N. tiangongensisは、有人宇宙船「神舟15号」が天宮に人民解放軍の宇宙飛行士3人を送り届けた際に、乗組員が宇宙ステーションの表面から採取したサンプルで見つかったものです。
サンプルの分析により、天宮で見つかった細菌は地球の土壌や下水などに生息し、免疫不全患者に感染すると敗血症を引き起こすNiallia circulans(ニアリア・サーキュランス)の近縁種であることがわかりました。そして、さらに詳細な観察やゲノム分析により、これまで発見されたことがない新種であることが確かめられました。
N. tiangongensisでは、2つのタンパク質に構造的および機能的な差異が見つかっており、これが酸化ストレスへの反応性を高めたり、放射線による損傷の修復を促進したり、身を守るバイオフィルムを形成したりして、宇宙環境での生存を助けている可能性があると、科学者は指摘しています。
分析にあたった神州宇宙生物科技集団と北京宇宙船システム工学研究所の研究者らは、論文に「宇宙ステーションで見つかった菌株は、ゼラチンを加水分解する独自の能力を示しており、栄養が制限された環境でゼラチンを基質として利用できる可能性を示唆しています」と記しました。
N. tiangongensisが人間に危害を及ぼすかどうかはまだ不明ですが、今後の研究によりこれらの細菌が宇宙でどのように生き残ってきたかや、宇宙に適応した細菌のリスクから宇宙飛行士を守る方法などについて理解が深まるだろうと期待されています。
宇宙ステーションは、常に高レベルの放射線にさらされたクリーンな環境ですが、生物学的な実験のために持ち込まれる動植物や、宇宙ステーションに出入りする乗組員は多くの微生物を持っているため、完全な無菌状態ではありません。
2021年には、国際宇宙ステーション(ISS)のエアフィルターで見つかった4種類の細菌のうち3種類が、未知の新種だったことが報告されました。
国際宇宙ステーションから未知の細菌が発見される – GIGAZINE
また、新種の細菌ではありませんが、ISSで行われた日本の研究プロジェクトのたんぽぽ計画では、放射性耐性菌が長期にわたって宇宙空間で生存できることが実証され、地球の生命の起源を宇宙とするパンスペルミア説についての重要な洞察をもたらしました。
微生物は宇宙空間でも長時間生存可能と判明、「生命は宇宙からやってきた」説の有力な根拠となるか – GIGAZINE
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🧠 編集部の感想:
新種の微生物「Niallia tiangongensis」が中国の宇宙ステーションで発見されたというのは、宇宙環境での生命の可能性を再確認させる興味深いニュースです。これらの微生物が宇宙でどのように適応し、生存できるのかといった研究が進むことで、宇宙探査の新たな視点が得られるでしょう。今後の調査が待たれます。
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