中国・復旦大学の研究チームは、グラフェンなどの2次元(2D)材料を活用し、世界最速の不揮発性メモリ技術「PoX(破暁)」を開発した。書き込み速度は400ps(ピコ秒)と、従来のNANDフラッシュメモリと比べて100倍以上高速で、550万回以上の書き換えに耐える高い耐久性も実現した。

 AIの進歩が急速に進む中、1ns未満の速度を備えた不揮発性メモリが求められている。最速のメモリであるSRAMは1ns未満を実現できるが、データは揮発性であり、エネルギー効率やストレージ密度が低い。一方、主流の不揮発性メモリは大容量と不揮発性、低コストを実現できるが、速度が遅いという課題がある。

 ボトルネックを克服するために相変化メモリ、抵抗スイッチングメモリ、強誘電体メモリ、磁気RAMなどが開発されているが、それぞれ熱擾乱、統計的なゆらぎ、CMOSプロセスの劣化、微細化の難しさといった問題が残されている。

 そこで研究チームは再びフラッシュメモリの課題に目を向けた。フラッシュメモリでは、制御ゲートに高い電圧を加えると、電子が絶縁体を通過できるようになり、電荷蓄積膜に入って“データ”として記録される(この現象をFNトンネリングと呼ぶ)。

 従来のシリコンベースのフラッシュでは、このFNトンネリングの効率は障壁の高さによって性能が制限され、10~100μs程度だった。最近登場した2D半導体では、この有効障壁の高さを減らすことで、FNトンネリング速度を引き上げることができたが、それでも動作速度は10~20ns程度と不十分で、電圧も約15Vと高い。

 もう1つの手法はチャネルの水平電界を利用してキャリアを高エネルギー状態まで加速させることで注入効率を高める「ホットキャリア」を用いるものだが、シリコンでは加速効率が限定されていたため、数十ns程度までしかサポートできなかった。

 今回の研究では、チャネル厚変調の分布効果を発見し、2D材料の原子レベルの薄さの特性を利用したディラックバンド構造などを用いて、“2Dで強化されたホットキャリア注入”を実現。0.2μmの短いチャネルを持つグラフェンデバイスにおいて、5Vという低いプログラム電圧で、400psという速度を達成できたという。

 現在、研究チームはPoXとCMOSを組み合わせ、キロビット(Kb)級のチップのテープアウトを成功させたという。3~5年以内に数十MB級レベルにまで引き上げ、企業に技術をライセンスをして産業化を目指すとしている。

投稿された論文による技術の仕組み解説



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