
プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社の米ローンスター・ファンズは、今後数週間に35億ドル(約5000億円)を投資家に還元する計画だ。事情に詳しい関係者が明らかにした。
ローンスターは3月に特殊化学品メーカーのAOCを日本ペイントホールディングスに43億5000万ドルで売却した。これにより約18億ドルの現金を得たと、関係者は匿名を条件に話した。同売却でローンスターは投資額に対して3倍以上のリターンを獲得したという。
ポルトガルの銀行ノボ・バンコへの投資も功を奏している。関係者によると、同行から数週間内に11億ドルの配当金を受け取る予定だ。ローンスターはノボ・バンコの上場を計画しており、同行を通じてさらなる利益を得る可能性がある。ノボ・バンコのマーク・ボーク最高経営責任者(CEO)は今週、新規株式公開(IPO)に向けた目論見書の作成が「かなり進んでいる」とし、早ければ6月にも上場が実現する可能性があると述べた。
関係者によれば、投資家に還元される35億ドルのうち、残りは船舶修復サービスおよび海洋・重複合加工を手掛けるタイタン・アクイジション・ホールディングスなどへの投資から得られた。ローンスターはタイタンを2023年にカーライル・グループとステレックス・キャピタル・マネジメントから買収した。2年前に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用から脱却したGTTコミュニケーションズも分配金に寄与した。
キャッシュリターンへの注目は高まっており、PE投資会社には厳しいディールメーキングの環境の中で成果を出すよう圧力が強まっている。ファンドのパフォーマンスを評価する最も重要な指標とされるのは、投資家にどれだけ資金が還元されているかを示す指標のDPI(実現倍率)だ。
2019年に資本投下を開始したローンスターの「ファンドXI」は、DPIベースで0.9倍のリターンを創出。17年に投資を開始した先行ビークルは1.35倍のリターンを出している。関係者が明らかにした。
ゴールドマン・サックス・グループのリポートによれば、業界全体で2019年以降に組成されたファンドのリターンは平均0.1倍にとどまっており、2015-18年のファンドでは運用開始から4年目の時点で0.6倍となっている。ローンスターの広報担当者はリターンに関するコメントを控えた。
ドナルド・クインティンCEOは「当社の投資戦略は、資産に富み、景気サイクルを通じてキャッシュフローと収益が好調な企業に焦点を当てている。そうした企業には業務改善、再編、合併・買収(M&A)を通じて価値を高める機会があると考える」とブルームバーグ・ニュースに語った。同氏は2010年にローンスター入りし、昨年4月にCEOに就任した。
原題:Lone Star Is Set to Return $3.5 Billion to Investors in Weeks(抜粋)
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