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概要
この記事では、マーケティングにおけるセグメンテーションとターゲティングの考え方に焦点を当て、商品の機能を基にターゲット層を定める実践的な方法について解説しています。具体的には、ロボット掃除機「ルンバi5」の例を用いて、商品機能からターゲット像を描き出し、それをもとに市場分析を行う方法を示しています。
要約
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目的と背景:
- マーケティングの実務を学ぶ過程を記録する「マーケティング奮闘記」の一部として執筆。
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STPモデル:
- マーケティングのSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)の中のST(セグメンテーションとターゲティング)の考え方を解説。
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機能を基にしたターゲティング:
- 商品の機能から、どのような人がその機能を欲しがるかを時系列で考える方法。
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ルンバi5の機能例:
- 3段階クリーニングシステムを例に、ターゲットを具体化するプロセスを示す。
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ターゲット像の定義:
- 次のようなターゲット像を具体的に挙げる:
- ハウスダストのアレルギーを持つ人
- ハイハイする赤ちゃんがいる家庭
- ペットを飼っている人
- 潔癖症の人
- 次のようなターゲット像を具体的に挙げる:
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市場規模の推定:
- 具体的なターゲットから市場規模を調べ、戦略的に選定。
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ターゲット選定の重要性:
- 一つのターゲットを決めることでメッセージを明確にし、効果的な宣伝ができることを強調。
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マーケティングのフレキシビリティ:
- 初期商品機能が決まっていない場合も、セグメンテーションとターゲティングを行いながら進める必要があることを説明。
- ターゲット絞り込みの誤解:
- ターゲットを絞るのではなく、一つに決めてマーケティングを進める重要性を強調。商品の魅力を伝えるための戦略。
このように、機能を基にしたセグメンテーションとターゲティングの考え方が、実際的かつ戦略的なマーケティングの鍵となることが示されています。
機能からターゲットを考えよ
マーケティングのSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)のうち、STの話です。順番が前後しましたが、Pは前回までに解説してきましたので、今回でSTPが完了する感じですね。
セグメンテーションとターゲティングですが、教科書的にはセグメンテーションで市場を区分してから、ターゲティングで具体的な商品のターゲットを決めるという流れになりますが、実践的には一緒に考えてしまう方がやりやすいです。
その時に考えるカギになるのが商品の機能です。商品の機能を欲しがっている人を考えることで、セグメンテーションとターゲティングを行います。商品の機能に基づいているので、ロジカルで他の人が聞いても納得できるものになります。
例えば、ルンバに代表される「ロボット掃除機」で考えていきましょう。「ルンバi5」の企画担当で、商品を4Pで振り返り、技術担当と企画の方向性について検討しており、前モデルから進化する機能が決まっていたとします。
ルンバi5を例として扱う
ルンバi5の機能を見てみると、下記の機能が書かれています。(本当はたくさんありますが、ここでは例として下記を見ていきます)
3段階クリーニングシステム(1)エッジクリーニングブラシ(2)2本のゴム製デュアルアクションブラシ
(3)パワーリフト吸引
https://www.yodobashi.com/product/100000001007825264/
もう少し詳しく各機能を調べてみました。(1)エッジクリーニングブラシは、部屋の隅まで掃除できるブラシ。(2)2本のゴム製デュアルアクションブラシは、吸い込み口のブラシに毛が絡まりにくいというものです。(3)パワーリフト吸引は、前モデルから吸引力がアップしたというものです。この情報をもとに商品の機能を欲しがっている人を考えていきます。一つずつ行きましょう。できるだけ具体的に考えておくとよいです。(1)エッジクリーニングまず、部屋の隅まで掃除できる機能を欲しがる人はどんな人でしょうか。・ハウスダストのアレルギーに困っていて、ほこりをすべて取りたい人・ハイハイする赤ちゃんがいて、部屋の隅までゴミを取りたい人・部屋の隅の汚れまで気になる潔癖症の人(2)2本のゴム製デュアルアクションブラシ次に吸い込み口のブラシに毛が絡まりにくい機能を欲しがる人はどんな人でしょうか。・髪の毛が長くて、掃除機のブラシに絡まると手入れに時間がかかる人・室内で犬や猫を飼っていて、抜け毛のゴミが多い人(3)パワーリフト吸引最後に前モデルからがアップした吸引力が欲しい人はどんな人でしょうか。・前モデルのルンバの吸引力では満足できず、クイックルワイパーや他の掃除機を併用していた人
もちろん上記以外にも出てくると思いますが、一旦例なのでこのくらいで。
では上記の内容をまとめてみましょう。
ハウスダストのアレルギーに困っている人のイメージ
①ハウスダストのアレルギーに困っていて、ほこりをすべて取るために、クイックルワイパーや他の掃除機を併用している人②ハイハイする赤ちゃんがいて、部屋の隅までゴミを取りたい、髪の長いお母さん③室内で犬や猫を飼っていて、抜け毛のゴミが多く、クイックルワイパーや他の掃除機を併用している人④部屋の隅の汚れまで気になる潔癖症の人で、クイックルワイパーや他の掃除機を併用している人大きく4つのターゲット像が浮かんできました。これでセグメンテーションができました。市場には少なくとも4つのターゲットが存在しています。全ての機能に対して行うとこのターゲットは増えるかもしれません。共通するターゲットの整理なども必要になるでしょう。
出てきたターゲットから一つに決める
この中から一つのターゲットに決めていきます。
具体的に考えたので、各ターゲットの人数(=市場規模)が調べればおおよそわかりますし、わからない場合でもフェルミ推定で想定できます。つまりは、市場が大きいターゲットを選ぶことができますね。また、すでに自社で展開している商品との相性で決めたり、販促する上でやりやすいターゲットにするなど、自社の状況に合わせて選ぶ場合もあります。
なお、実際の新商品の開発では機能が最初から決まっているわけではないので、機能の検討とセグメンテーション・ターゲティングを行ったり来たりしながら考えていくことになります。
ちなみに、ターゲットを一つに決めると「市場を狭めるのではないか」という声が出てくることがあります。しかし、販促で商品の良さを伝えるにあたっては、メッセージを明確にしないといけません。例えば、②にお母さんに向けたメッセージと③のペットを飼っている人に向けたメッセージは内容が異なりますし、伝える媒体も変わります。全方位に様々なメッセージ、媒体で宣伝ができるなら良いですが、限られた費用で最大の効果を出すには、まずは決めたターゲットに合わせたメッセージ、媒体で伝えます。
もし、それで商品が売れなかった場合は、別のターゲットに切り替え、またメッセージと媒体を変えます。そのためにもセグメンテーションでターゲットの候補を出しているのです。ターゲットは絞るのではなく、決めているだけなのです。
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