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概要
この記事は、マーケターからプロダクトマネージャー(PM)へのキャリアチェンジを考える人に向けて、マーケター出身のPMとしての強みと弱み、そして効果的なプロダクト開発のアプローチについて述べています。著者は自身の経験を基に、マーケティングの視点を活かしたプロダクト開発の重要性や具体的な方法を探求しています。
要約(箇条書き)
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マーケターからPMへ
- プロダクトの成長にはマーケティングだけでなく、プロダクト自体の改善が重要。
- マーケティングの全体像を理解した上でプロダクトにアプローチすることの意義。
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マーケター出身のPMの強み
- ユーザー目線の徹底度:顧客のニーズを深く理解する力がある。
- データ分析・セグメンテーションの習熟度:ABテストや数値分析の経験が活用できる。
- ブランディング思考・市場理解:市場での差別化ポイントを見出す能力。
- グロース視点:ユーザーのリテンションやグロース施策において、幅広い視野を持つ。
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マーケター出身のPMが陥りやすい弱み
- 技術的バックグラウンドの不足:エンジニアとのコミュニケーションに課題。
- 営業やCSとの連携不足:ユーザーの導入やサポートに関する理解が浅くなりがち。
- 短期指標への偏り:長期的なプロダクトビジョンを欠く傾向。
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プロダクト開発の基本ムーブ
- ユーザー課題の明確化:市場調査を通じてニーズを理解する。
- プロダクトビジョンの策定:ブランドとユーザー層を明確に定義する。
- MVP・プロトタイプ検証:小規模でテストし、フィードバックを得る。
- ローンチ後のグロース施策:ユーザー定着施策やPR戦略を展開。
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実体験の事例紹介
- 200人以上のユーザーインタビューを実施し、UI改善を図った結果、リテンション率向上に成功。
- プレスリリースや内部機能改善を同時に進めて、ユーザーの継続率を高めた事例。
- 開発リソースの過信から課題に直面し、優先度整理の重要性を学んだエピソード。
- まとめ
- マーケター出身のPMはハイブリッド人材であり、ユーザー理解を深めつつ、プロダクトの改善に寄与できる。
- 開発知識や他部門との調整が求められ、短期と長期のバランスを意識する必要がある。
- AIやデータ分析技術の進展により、マーケター出身PMが活躍する機会が増えている。
本記事は僕が運営する「PM x LLM STUDIO」からの転載です。詳細や最新の情報を知りたい方は、ぜひこちらのオリジナル記事もあわせてご覧ください(本は本記事を少し変更しています)。
「マーケターとして働いてきたけど、PM(プロダクトマネージャー)へのキャリアチェンジは実際どうなんだろう?」
「マーケ出身の僕がPMを名乗るとして、どんな強みを生かすべきなんだろう?」
こうした疑問を抱えているマーケターや、すでにマーケ寄りのPM業務をしている方は少なくないと思います。
僕自身、博報堂でのマーケター時代からPMへ転身し、プロダクト開発の世界に足を踏み入れました。その経験を振り返りつつ、マーケター出身のPMだからこそ発揮できる強みや、陥りがちな落とし穴、さらに具体的なプロダクト開発アプローチを掘り下げていきます。
また、僕が副業で携わったtoCスタートアップ(習慣化アプリ)の事例も紹介します。「1プロダクトでユーザーインタビューを200人以上実施」みたいなことをやっていると、自分でも少し酔いそうになる瞬間がありますが、それくらい泥臭い活動がプロダクトを強くする、と僕は本気で思っています。この記事を読んでいただければ、マーケ視点を持つPMがプロダクト全体にどのようなインパクトを与えられるのかが、少しでも具体的にイメージできるはずです。
1. マーケターからPMへの転身
1-1. 僕がPMを目指したきっかけ
僕はキャリアの最初、博報堂で3年半ほどマーケターとして働いていました。クライアントワークを通じて、主にtoC向けのマーケ施策に携わり、広告プランニングからキャンペーン企画、データ分析を駆使した効果測定などを経験しました。
とにかく4P(Product, Price, Place, Promotion)の中でも「プロモーション」を軸とした案件が多かったんですよね。広告費を最適に配分したり、キャンペーンをどう設計するかといった、いわゆる“メディア戦略”寄りの部分です。
ところが、ある時大きな気づきがあったんです。
「いくら広告を打ちまくっても、プロダクト自体がユーザーの課題を十分に解決していなければ、その成長は長続きしない」
ということです。クライアントの売上を一定期間伸ばしても、結局プロダクト側が改善されないままではユーザーからの評価やLTV(ライフタイムバリュー)が伸び悩み、後々失速してしまうケースを目の当たりにしました。
そこで、「マーケティングの本質は本来4P全部を包括するもの」だと実感しながらも、当時の僕は“プロダクト”部分に踏み込む機会が少なく、そこに非常に強いもどかしさを感じていたのです。
1-2. 副業を通じてプロダクトに触れ始める
幸運にも、社内異動のタイミングで博報堂のなかでPdM寄りのポジションを任せてもらえる機会が出てきました。その後、副業としてtoCスタートアップのCOO兼PdMを約2年担当し、さらにリクルートへ転職してHR領域のプロダクトに深く携わることで、「マーケの視点を活かしつつ、プロダクト全体の成長をリードする」という働き方を実践できるようになってきました。
2. マーケター出身のPMが持つ4つの強み
マーケ出身だからこそ、PM業務で活きるスキルや視点があると僕は確信しています。ここでは代表的な4つをピックアップします。
2-1. ユーザー目線の徹底度
マーケティングの要は、「顧客が本当に何を求めているのか」を洞察する力です。データ分析やインタビューを通してインサイトを探るプロセスは、まさにマーケターの得意領域。
PdMになった今でも、ユーザー課題を定義したり新機能のコンセプトを考える時に、マーケ視点で養った“顧客目線”がすごく役立ちます。
たとえばユーザーインタビューを設計する際には、ターゲットがどういう心理でサービスを使っているかを先回りして想定したうえで質問を組み立てられるんです。もう少し具体的に学びたい方は「ユーザーインタビューの目的・設計・やり方・分析まで完全ガイド」も参考にしてみてください。
2-2. データ分析・セグメンテーションの習熟度
マーケティングでは、広告素材やランディングページのABテストが当たり前のように行われます。どのペルソナをどのチャネルでどう攻めると効果的か、絶えず数字を追いかける文化が染みついているわけです。
PdMでも、ユーザー行動データを見ながら改善点を洗い出し、ABテストで検証する場面が頻繁にありますよね。そこでマーケター出身の知見がそのまま活かしやすい。定量指標を捉えて施策を繰り返すPDCAには慣れていますから。
2-3. ブランディング思考・市場理解
プロダクトポジショニングや競合分析をする際には、マーケター時代に培った「市場を俯瞰して差別化ポイントを明確にする」能力が非常に重要。僕も博報堂時代、3C分析(Customer, Competitor, Company)を何度も回しながら、製品コンセプトを言語化する作業を繰り返していました。
この経験は、PdMになってから「自社プロダクトは市場の中でどんな魅力を打ち出すべきか」を考える際にフル活用できています。
2-4. グロース視点
マーケターはユーザー認知獲得からリテンション(継続利用)まで、広い範囲をカバーするのが日常。PMになったとしても、リリース後のユーザー定着やリピート施策に積極的に関われるのは大きな利点です。
プッシュ通知、メールマーケ、SNS施策、オフラインキャンペーンなど、多様な施策を用いてユーザーの継続率を上げる方法をすでにある程度イメージできている。そうした“グロース視点”を持ち込めることが、マーケ出身PMの強みだと思います。
3. マーケター出身のPMが陥りやすい3つの弱み
強みがあれば弱みもあります。僕が実感しているのは主に以下の3つ。
3-1. 技術的バックグラウンドの不足
エンジニアリングの知識が少ないと、開発チームとのコミュニケーションに苦戦しがちです。
たとえば機能仕様を考えたとき、実装難易度が高いのに対してリターンが見合わないケースを見落とし、後からエンジニアに「それは結構大変だけど本当にやる必要ある?」と指摘される事態が起こりやすい。
僕自身、副業スタートアップで初めてPM業務をしたとき、エンジニアからのフィードバックにハッとする場面が多かったですね。そこから少しずつ技術書を読み、フロントの仕組みを触ってみたりして、地道に学習しました。
3-2. 営業やCSなど他部署との連携不足
マーケ出身だと、「ユーザー獲得」に重きを置きがちですが、プロダクト開発においては営業プロセスやCSのオペレーションもとても大事。BtoBだと特に、営業やCSの現場で起こる問題を理解していないと、ユーザー導入やサポートの現実を踏まえた機能設計ができません。
僕はCSメンバーとこまめに情報交換をするようになってから、「実はある大口顧客がこの機能を重視している」なんて現場の声がわかるようになり、開発優先度の判断が一気にスムーズになりました。
3-3. 短期指標に偏りやすい
広告施策の多くはCVRやCPAなど比較的短期の数字で評価されます。そのため、マーケター出身のPMは「売上やインストール数がすぐ上がる施策」に偏ってしまうことがある。
しかし、プロダクトの中長期的な価値を高めるためには、大胆なUI刷新や時間のかかる技術的負債の返済など、長期投資的な取り組みが必要です。そこを蔑ろにすると、結局長期的なグロースができなくなるので、バランスを取る意識が欠かせません。
4. プロダクト開発の基本ムーブ:マーケスキルの活かし方
では、マーケター出身のPMが具体的にどんな動き方をすると、最大限の力を発揮できるのでしょうか?
ここでは(1)ユーザー課題の明確化 → (2)プロダクトビジョン策定 → (3)MVP・プロトタイプ検証 → (4)ローンチ後のグロース施策という4フェーズで整理します。
4-1. ユーザー課題の明確化
マーケターとして培った「顧客を深く知る」能力をフル活用するところです。質的インタビューとアンケート・行動ログ分析を両輪で使い、ターゲットの課題やニーズを浮き彫りにする。
僕はインタビュー前に必ず仮説を立てて、それを検証する形で進めるようにしています。詳しくは「ユーザーインタビュー前に『筋の良い仮説』をチームで設定する具体的な方法やフレーム」もご参考まで。
4-2. プロダクトビジョン策定
マーケのブランディング思考が活きる場面。
「どんなユーザー層に、どんなベネフィットを提供し、どのように差別化するのか」を言語化する際に、広告戦略や競合分析でよく使う手法を応用できます。
開発チームとすり合わせて、実現可能性・技術的制約も踏まえつつビジョンを固めれば、市場ニーズとプロダクトの強みを両立できる筋のいいコンセプトが生まれやすいです。
4-3. MVP・プロトタイプ検証
マーケターはABテストや小規模実験に慣れているので、“MVP思考”にはすぐに馴染めるはず。
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コア機能を絞ってプロトタイプを作る
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テストユーザーに触ってもらい、数字と定性フィードバックを取得する
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うまくいかなければすぐ修正して再テスト
こうしたリーンスタートアップ的な動き方は、PdMとマーケの相性がとても良いです。
4-4. ローンチ後のグロース施策
ローンチして終わりではなく、そこからが本当の勝負。ユーザー定着施策やPR戦略など、マーケの腕の見せどころがあります。
プッシュ通知を最適化したり、メールマーケティングを展開したり、SNS広告を併用して認知拡大とアクティブ率向上を同時に狙う。ユーザーが飽きないように新機能を定期リリースする際のタイミングを図ることも重要です。
5. 副業で習慣化アプリを提供するtoCスタートアップをやっていた時のPdM実体験
ここからは、僕の実体験を3つの事例で紹介します。実際にCOO兼PMとして動いたとき、どのようにマーケター出身の強みを生かし、どんな壁にぶつかったのかを振り返ります。
5-1. 【事例1】200人インタビューで得たUI改善ヒント
習慣化アプリでは「継続する」というユーザー行動が命です。そこで僕は、初期段階からユーザーインタビューを徹底的に行いました。
このプロダクトだけで合計で200人以上に話を聞いたのですが、やってみると色々と面白い発見があります。例えばわかりやすいものを上げると
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「目標設定が大きすぎるとモチベーションが持たない」
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「継続達成度が可視化されると安心感がある」
などなど。
これを踏まえてUIに「達成度チェックリスト」を搭載し、見える化にこだわったところ、アプリのリテンション率が大幅に向上。Storeでの評価も上位5%タイルに入るなど、成果に直結しました。
5-2. 【事例2】ローンチPRとリテンション施策の両輪
ローンチ時は、PR TIMESへのプレスリリースや各種メディア掲載をアレンジ。大きな注目を集めることができた一方、その後の定着施策も急いで準備しました。
プッシュ通知やアプリ内チュートリアルを設計し、継続利用を促す工夫を盛り込んだんです。
結果的に初動の獲得ユーザーがそのまま継続してくれた割合が高まり、マーケの打ち手(外部露出)とPM視点の打ち手(内部機能改善)の両輪がハマるとここまで効果が出るんだ、と改めて実感しました。
5-3. 【事例3】エンジニア・デザイナーとのコミュニケーションギャップ
逆に苦労したのが、開発リソースを考慮せずに要望を盛り込みすぎてしまった点です。
「あれもやりたい、これも足したい」と欲張った結果、エンジニアから「いや、今のリソースでは無理ですよ」と指摘されるシーンが初手2,3回ありました…。
そこから学んだのが、優先度やスコープをちゃんと整理できるフレームワーク(ICEスコアやMoSCoWなど)と、フレームワークで決定し切れない部分を強い信念を持って決める強い意志、そしてその意志を我が儘ではなく事業成功のためにするためのビジョン策定。また僕は実際に自分で一部の実装を試みたりするなかで、「技術的難度」という概念を肌感覚で理解できるようになりました。
6. まとめ:マーケター出身PdMの価値とこれから
マーケター出身のPMは、ユーザー洞察力・データドリブンな施策構築力・ブランディング思考を兼ね備えた“ハイブリッド人材”だと僕は思います。
一方で、開発面の知識や他部署(特に営業・CS)との調整など、新たに学ぶべき領域も少なくありません。さらに、短期KPIばかりを追うのではなく、中長期的な製品ビジョンやロードマップの視点も必要です。
僕は今後、AIやデータ分析技術の進化で、マーケとプロダクト開発の境目はどんどん曖昧になっていくと考えています。今こそマーケター出身のPMが、「ユーザー理解×プロダクト改善」の軸で力を発揮できるチャンスです。
もし「マーケ出身だけどPMを目指したい」あるいは「マーケスキルをどう活かすか迷っている」という方がいたら、ぜひ気軽に声をかけてください。僕もまだまだ学びの途中ですが、一緒に知見をアップデートしていきましょう。DMはこちらへどうぞ → Xアカウント
参考情報
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Eric Ries (2011). The Lean Startup. Crown Business.
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Marty Cagan (2018). INSPIRED: How to Create Tech Products Customers Love. Wiley.
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Geoffrey A. Moore (2014). Crossing the Chasm. Harper Business.
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Gartnerの調査 (2022):「プロダクト開発におけるマーケティングの役割の拡大」
今日から実践できるアクション
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優先度フレームワークの導入
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マーケ視点で機能要望が増えすぎるのを防ぐため、ICEスコア(Impact, Confidence, Ease)やMoSCoW法などを活用し、開発チームと一緒に優先度を決定する。
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ユーザーインタビューの型を整理
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長期視点を意識したOKR運用
Q&A
Q1:技術の知識が足りないのですが、どこから学べばいいですか?
A1:
基礎的なプログラミング学習を始めたり、エンジニアと1on1で対話して開発プロセスを体感するのが近道です。スクラムやアジャイルの進め方を理解すると、チーム全体で共通言語を持ちやすくなります。僕は技術書を50冊以上読み、実際にコードを書いてみて初めて「これは時間がかかるんだな」というリアルな難易度をつかめました。
Q2:マーケターからPMになって、どのようにチームをリードすればいいでしょうか?
A2:
まずはビジョンの明確化が重要です。マーケで培った顧客視点を最大限活かし、「どんなユーザーに、何の価値を提供するのか」をチームにわかりやすく伝えていきましょう。そのうえで、開発や営業、CSとの定期的なコミュニケーションの場を設け、皆が同じ目標へ向かえるように調整役を担うイメージです。
Q3:短期指標と長期戦略のバランスはどう取ればいいですか?
A3:
四半期単位のKPIだけでなく、半年・1年先のOKRやロードマップを設定して、短期と長期を紐付けて管理するのがコツです。短期施策で実績を出すのも大切ですが、「大幅なUI改修や大規模機能開発は、長期的な投資としてどの時期にやるのか」を計画に織り込んでおくと、ブレにくくなります。
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