土曜日, 5月 24, 2025
ホームマーケティングポイエーシスが日本の農業を変える(野生の思考があなたの中にありますか!)黒木陽一

ポイエーシスが日本の農業を変える(野生の思考があなたの中にありますか!)黒木陽一

🧠 概要:

概要

黒木陽一氏の「ポイエーシスが日本の農業を変える」では、九州の菊池市と南阿蘇村の就農者との対話を通じて、日本の農業における「ポイエーシス」に基づく新たなアプローチを探求しています。特に、農業の労働概念と自然との共生について、伝統的な視点と現代の問題を結びつける考察が行われています。

要約の箇条書き

  • 対話のドキュメント: 2月から5月の間に、菊池市と南阿蘇村の就農者と豊富な対話を行った。
  • 新たな農業の在り方: 日本の農業と文化、自然との関係を再評価することが求められている。
  • 就農者の目的:
    • 「お腹いっぱい食べられる世界」の実現
    • 自己愛に基づくコミュニティの形成
    • 自然と人が調和する社会の構築
  • 労働の概念の違い: 菊池市の就農者の労働概念は、単なる「労苦」ではなく、ポイエーシス(創造すること)を重視している。
  • ポイエーシスの重要性: 自然の本質を引き出す営為として、農業における実践に活かされるべきと主張。
  • 文化的背景: 日本の職人的文化にポイエーシスの要素が見られるが、企業文化にはその理解が不足している。
  • 今後の方向性:
    • 地域の美(用の美)を再評価
    • 自然物との対話を通じた理解を深める
    • 地産地消を超えた市場の重要性を認識する
  • 結論: 日本の農業と文化における新たなエコシステムの形成が期待されており、今後の議論が必要である。

ポイエーシスが日本の農業を変える(野生の思考があなたの中にありますか!)黒木陽一

黒木陽一

 今年2月から5月まで九州熊本の菊池市・南阿蘇村の就農者の方々と、webで4回、リアル2回、公開イベントで1回と対話を重ねて参りました。貴重な就農者の生の声を聞きながら、対話の中で感じたのは、日本文化、美意識、自然と人間との関係の在り方でした。 ”新しい農業の在り方、食文化,そして生活者視点から,新しい未來へと繋がるエコシステム体系”が実現できないかと考えて、4月19日には、公開イベントでのweb対話をしました。 その間に、菊池市の就農者リーダーやサブリーダーがわざわざ東京の弊社まで来社いただき、半日対話して今後の農業の在り方、菊池市の未來を論議しました。今回は,この4ヶ月間の菊池市の就農者の方々との接点を通して、今の日本において、注目されている農業をどのように捉えたらよいのかを考えてみました。

1. 菊池市の就農者の小目的(自分の欲求に基づく目的)には、【圧倒的な凄み】があります。
【お腹いっぱい食べられる世界の実現】・・・今を読み解く。現状を知る。

公開イベントでの対話は、センスメイキングや知識創造経営をベースにした就農者との対話だけでなく、①実際の農場で働く姿②生活実態の台所、居間③1番くつろげる場所を写真撮影していただきながらエスノグラフィー的にして、皆さんと同時にヒアリングしました。とにかく、イキイキしている。詩人谷川俊太郎さんのいう真実味がある言葉が次々と出てきます。弊社では、数多くエスノグラフィーを実施してきましたが、菊池市の就農者の言葉の一つひとつが、私には突き刺さりました。今まで経験したことのないことです。【代表的な3つの目的】⭕️裕福や貧困関係なく、【お腹いっぱい食べられる】世界になって欲しい。(吉田さん夫妻)・心地よいのは、天気・気候のよい日の畑作業、畑で食べるお昼ご飯。

picture_pc_5abd005dfd2ed07ddf0bd874efc0d吉田夫妻の農園

⭕️ありのままの自分を愛せる人で、満ち溢れた社会を作りたい。(迫田さん,神話の研究をしながら農業へ)

picture_pc_7ab50eadea27218202c97028aa09a迫田さんの農園

⭕️自然と人の営みが調和的。搾取的な社会構造ではない。(一次産業と,テクノロジーと自然が調和している)→親より優秀な子供の足を引っ張らない。

(實取さん、就農者リーダー就農歴13年)

picture_pc_cda22d38e187e01c11b6e9b80ee24實取さんの農園

どうですか、全く経験したことのないような真実味があり、迫力がありますね。言葉を超えてこの背後には、それぞれの強い思いがあるように私には思えるのです。体感知からの思い・・・土を耕し、毎日田畑を全身で自然と対峙しているようです。公開イベント時にはオブザーバーとして東京でご覧になった方々からも、自然と対峙している就農者の言葉,表情に、感激したという反響がありました。

2.菊池市の就農者の「労働の概念」は、東京とは違う  ポイエーシスが存在する

 毎回話をしていて、「労働の概念」が、少し違うのではないと思いました。フランス語で労働はtravail「労苦」という意味もあり、厭わしい時間を耐えなければならないというニュアンスが含まれます。 西欧の「労働概念」には,神によって科せられた「罰」というユダヤ キリスト教の特有の考え方があります。

ー「労働の概念」のコラムー ジャン ピエール・ヴェルナン(1914〜2007年)というフランスの歴史家は、ギリシャ神話の分析をすると、古代ギリシャには、労働にtravailに相当する言葉がなかったことを発見します。 古代ギリシャ人は、働くことを「プラクシス」と「ポイエーシス」という二つの言葉で表現した。・プラクシスとは、行為する人間が自分自身の目的の為に事物を「使用する」という意味で使い、

・ポイエーシスとは、事物をそれ自体の目的の為、あるいは使用する人の目的の為に「つくりだす」という意味があります。

コラム

 例えば、菊池市の就農者リーダー13年の實取氏が、私に話してくれた「自然の景観」「阿蘇の地下水の保全のため10000年以上前からやっている野焼き」「外輪山の麓 カルデラ」、「2000年前、弥生時代からの米作り」は、就農者が米作りや農産物を作る為に変形して使うのではなくて、そのものの中に既に存在する形を外に出すと考えます。それは、「菊池市・阿蘇の自然が,望んでいることを実現する」という概念で、菊池市の就農者の背後にある強い思いは、ポイエーシスではないかと思います。

3.ポイエーシスが、日本独自のエコシステム体系生態系を生かす農と食を繋いでいく

(未來の菊池市のコンセプトワークへの仮説①)

「ポイエーシス」が,労働の概念から消えていったことを発見したのは、哲学者ハイデガー(1889〜1976年,「存在と時間」1927年)です。

ハイデガーは,やはり古代ギリシャ語から「ポイエーシス」と合わせて「テクネー」という対立概念を取り出しました。 テクネーは,今でいうテクノロジーです。テクネーは,対象物に入っている事物の本質を挑発的に外に取り出しています。これに対して、自然な過程を通して外に表れるようにするのが、「ポイエーシス」です。この自然の過程については4.以降に論考します。

ーーテクネー事例ーー4月26日ETV特集で、「田んぼ✖️未來」あきらめきれない未來 コメ農家という番組で茨城県龍ケ崎市の中で横田農場の横田修一(2013年天皇杯受賞)さんが話していた、国や県、つくば大学,メーカーが奨励しているAI機によるスマート農法は,まさにテクネー的技術ではないかと思います。 しかし、それは泥にハマって動けない「無人田植え機」だと横田修一さんは、苦笑していました。 横田さんがいう農業とは、「マニュアルがない、画一化できない」「徹底したコンピュータ管理しても,原因がわからないことが多い栽培技術」

この横田さんと菊池市の実取さんはとても考え方が似ています。

コラム

4.日本に生きている「野生の思考」を生かす
(未來の菊池市のコンセプトワークへの仮説②)

ここからは、わたしのでも何回も取り上げてきた文化人類学の大家レヴィ-ストロースが、5回も来日して日本文化の核心に触れた考え方を、日本の農業に活かそうかと考えています。

 日本の職人的労働の概念には、ポイエーシスの要素があると思います。ところが、日本企業にはその概念が薄れて、未だに売り上げと利益重視型が目立ち、ブルーシットジョブと、リスクをなるべく負わないコンプライアンス過多、新しい挑戦はしない、経路依存症が目立ちます。 それでは、農業の未來を語るストーリーは,作れない。まさに農業を金融商品として捉えていて、米コストは上昇。株の投機筋のマーケティングでしょう。(昨今の令和の米騒動、更迭された江藤農水相の発言、JAのトップの発言にも、未来への構想力のないことが目立ちます)

方向①)用の美

柳宗悦が「民藝」と呼んだ領域を生かす。九州にはこの民藝としての,器や用具などがかなりあります。芸術家ではない、地域に根ざし職人が自然物の中に隠れている本来の機能を受動的に取り入れて、それを生かす庶民感覚は、ポイエーシスとなり、再検討したいものです。

方向②)自然物に働きかけるメッセージを聴き取り、特殊なコードによって理解する、内側から外側への取り出す営為。

禅的要素があります。自分を見つめる場や時間の提示が必要です。

方向③)人間の自然化の展開里山は、本来プラクシスで作られていません。日本人にとって水田による稲作,田んぼは、土地を平らかにならさないといけないから、自然破壊とも言えますが、人間の目的の為に,完全に自然を改変し尽くしたり制圧するのではなく、ポイエーシスの「はたらき」を借りて、自然の持つ自発性を生かしながら,最適の環境を作りだそうとする努力が重ねられていたわけです。「人間の自然化」よりも「自然の人間化」現在のくまモンは、動物の精霊が人間の世界に入ってきて、トーテム(象徴)になる。ポケモンは、151匹を分類し、その内部を炎,水,エスパー,くさなどの属性で分類する、「自然を人間化」する事例になります。同様に、菊池市の中に、日本文化の底にある「自然の人間化」を深く埋め込む。

方向④)共同体内部だけは,地産地消になりますが、産物を持ち寄る中間地帯に社会の異質な要素を取り入れる【市場】が重要!

中世の市のようか概念でしょうか! レヴィストロースが、日本で注目したのは、野菜から海産物までありとあらゆる自然物のある市場です。感覚のディヴィジョニズムとしての美的ハーモニーが必要となります。男女の出会い、結婚の発生する場、新しいコミュニティの場が面白いと考えます。

5.まとめとして

現在日経新聞では、コメ・クライシスとして毎日のように特集を組んでいます。1 .いくらでも言い値が通る(5月20日)2.JA「金額では勝てない」JAと商社の買取り競争(5月21日)3.「年収1000万円」若モノつなぐ(5月22日)このような実態を毎日見るたびに,農業の根源、人間の生き方,自然との関係,日本文化を考えながら、菊池市の就農者の方々と対話重ねて,本質的なテーマを掘り下げて,未来を見据えたいと思い、今回書いてみました。細かい戦術はこれから数多く出てくるでしょう。まずは、第一弾であります。最後までお読みいただきありがとうございました。黒木陽一

#農業 #就農 #レヴィストロース #マーケティング #センスメイキング #九州 #里山 #エスノグラフィー #コメ騒動

黒木陽一

黒木マーケティング室(KMI)は、「センスメイキング理論」を基本指針とし、クライアント自身がイノベーション活性化を行うためのご支援をするコンサルティングファームです。黒木マーケティング室:https://www.kmi.co.jp/



続きをみる


Views: 0

RELATED ARTICLES

返事を書く

あなたのコメントを入力してください。
ここにあなたの名前を入力してください

- Advertisment -

インモビ転職