僕はお香を焚くのが趣味だ。
友達からは「じじ臭い趣味だな。」と笑われるが気にはしていない。
今日も新しいお香を探しに、隣町まで自転車を漕いできた。お小遣いを握りしめてお気に入りの店に向かったのだが──あいにく臨時休業の貼り紙が出ていた。
他の店にも寄ってみたが、どうにもピンとくる香りは見つからなかった。
あちこち彷徨っているうちにいつの間にか知らない通りに迷い込んでしまった。気がつくと細い路地に入り込み、どちらに進んでいいのかもわからなくなっていた。おまけに雨まで降り出した。
「まずいな……」
濡れながら必死に自転車を漕ぐうちに、一軒の店が目に入った。古びた木の看板には「仏具」と書かれていた。急いで中に入り、店番のおばあさんに事情を話すと快く雨宿りを許してくれた。
おばあさんはさらに温かいお茶と小さなお菓子まで出してくれた。さすがにここまで世話になっては悪いと思い、何か買わせてもらえないかと尋ねた。
いろいろなお香を見せて貰ったが、どれもこれも高級そうな香り。値段も相応に高級であった。
値段を見て困っている僕を見て少し笑いながら
「お金は無理しなくていいよ。手持ちの分で買える物を見せてあげようね。」
そう言って、おばあさんは店の奥から小さな箱を持ってきた。手作りらしい、素朴なお香が入っている。
箱を開けるとふわりと懐かしい香りが漂ってきた。
なぜだろう。嗅いだことがあるはずもないのに、どこか懐かしい気がした。
手持ちのお金を渡しそのお香を受け取った。外を覗くとまだ雨は降り続いている。
「○○ちゃん、まだ雨が降ってるけどね。この道をまっすぐ進めばお家に帰れるよ。」
おばあさんは優しく微笑んで、細い道を指差した。
言われた通りに一心不乱で走り続けた。
気がついた頃には空は晴れていて見慣れた道に戻っていた。
家に着いて、母に今日の出来事を話すと意外な返事が返ってきた。
「雨?今日はずっと晴れてたわよ。」
おかしいな……確かにびしょ濡れになったはずなのに。
少し不安になりながらも今日手に入れたお香を焚いてみた。
煙と共に、あの懐かしい香りが部屋に広がる。
そのとき、母がふらりと現れた。
「あら……懐かしい匂いね。これ、おばあちゃんが好きだったお香の香りにそっくり。」
母の話によれば、僕が生まれる前に亡くなった祖母はお香が大好きでよく焚いていたのだという。
そして一番好きだった香りが今日買って来た物だという。
──そういえばあのおばあさん、僕の名前を一度も聞いていないのに「○○ちゃん」と呼んでいたような気がする。
母に尋ねた。「僕もこのお香作れるかな?」
あの日以来、祖母の仏壇にはあのお香を欠かさず供えるようになった。そして──時折、あの仏具屋を探している。いくら探しても見つかることはなかった。
いつかもう一度あの店に辿り着けたら、僕の作ったお香を贈ろうと思うのだった。
※この作品は、OpenAIのChatGPTと筆者の共同制作により構成・執筆されたホラー短編です。アイディアの整理、表現調整、文章構成はAIのサポートを受けつつ、筆者本人の手で最終的に仕上げています。
今後も「AI×ホラー」の可能性を探る創作活動を続けていきます。
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