🧠 あらすじと概要:
記事の要約とあらすじを以下にまとめます。
### あらすじ
『レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い』は、20世紀初頭のアメリカを舞台に、ウィリアム・ラドロー大佐とその3人の息子たちの物語を描いています。ウィリアムは南北戦争と先住民虐殺の経験から、モンタナの平原で牧場暮らしを選びます。彼の息子たち、特に次男トリスタンは、兄弟間の愛憎劇や第一次世界大戦の影響を受けながら、複雑な人間関係と自身のアイデンティティに悩むことになります。
### 記事の要約
著者は映画のタイトルに初めは懐疑的だったものの、ブラッド・ピットの魅力やモンタナの自然美に引かれ、この作品を推奨しています。物語は兄弟の葛藤や愛に焦点を当てており、特に次男トリスタンを「美しい獣」として描写しています。パワフルなキャストや景色が映画の魅力を引き立てており、観客は文化や思想の違いを理解しながら物語を楽しむことが求められています。自然の中での人間の生と死についての考察が深められ、鑑賞後の感情や視点の変化が期待される作品です。
ブラッド・ピットが好きな人には、100%推せますし、自然を愛する人にもいいでしょう。
文明暮らしで心がマヒした人にも、ぜひ見てほしい作品です。
ロッキー山脈の見えるモンタナの大自然!
アメリカ版の大河ドラマ
1994年の映像なので画像が荒めですが、とにかく絶景です。
平原も丘も川も、雄大な大自然の美しさに息を呑みます。
私は、大自然に弱いです。
ブラピが山に登る『セブン・イヤーズ・イン・チベット』も大好きです。
時は20世紀初め、第一次世界大戦が始まり、悪名高い禁酒法の敷かれた激動のアメリカで、戦争と愛に翻弄されていくラドロー家を描いた大河ロマンです。
あらすじ(冒頭だけ)
元大佐のウィリアム・ラドローは、南北戦争と先住民虐殺に加担した苦い経験から、白人社会から離れたモンタナの平原で牧場暮らしを始めます。
ラドロー家には、アメリカ先住民のスタッブと混血のデッカー一家が仕え、3人の息子が育ちます。
ある日、ハーバード大を出た三男サミュエルが、婚約者スザンナを家に連れて帰ることで、兄弟間の愛憎劇に発展。
2人の兄も、スザンナに思いを寄せます。(兄ちゃんら、やめてあげて!)
第一次世界大戦が始まると、三男サミュエルは英国兵士に志願すると言い出し、弟を守ろうとする兄も含めて、3兄弟で戦場に行くことに。果たして、戦場で何が起きるのか?家に戻る者には何が待ち構えているのか?
先の展開が読めそうで読めない展開が待ち受けています。
映画の魅力を表現できていない、残念なタイトルとヴィジュアル。モンタナの自然美とブラピのイケメン美の共演。
兄弟3人の生き様の対比が、見どころです。
キャストは、アンソニ・ーホプキンスとイケメン絶頂期のブラッド・ピット
ブラッド・ピットとアンソニー・ホプキンスを中心に、見応えのあるキャストが揃っています。
ブラッド・ピット:次男トリスタン
大河ドラマ主演は、ラドロー家次男のトリスタン。私が見た中で、最も美しいブラッド・ピットかもしれません。引き締まった肉体とたなびくブロンドヘアー、まるで野を駆ける美しい雄馬の如し!この時の彼は30歳。『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992年)に似た役だけど、もう少しワイルドセクシーさが加わった感じ?『ジョー・ブラックをよろしく』(1998年)が稚拙に見えるほど、魅力的です。
あまりにサラサラに輝くロングヘアーに、モンタナの香りはしないけど、見てるだけで楽しいから、その美しさはありがたく受け取っておこうw
アンソニー・ホプキンス:父ウィリアムス
『ジョー・ブラックをよろしく』でも共演する、アンソニー・ホプキンス。レクター博士とは雰囲気の違う、威厳たっぷりの渋カッコいい父として登場します。私があの家に嫁いだなら、ドキドキしちゃうと思う。
逆にレクター博士風に佇んでいたら、怖くて眠れない。
長男アルフレッド:エイダン・クイン
どことなく父役のアンソニー・ホプキンスにも目元が似ていて、イケメンのお兄ちゃん。
都会的で議員姿もお似合いです。
三男サミュエル:ヘンリー・トーマス
『ET』のエリオットだって!
言われてみれば、確かに。面影がある。
スザンナ:ジュリア・オーモンド
3兄弟から愛されるスザンナは、自然豊かな景色に溶け込む、健康的で知的で、ちょうどいい感じの美人です。
『トゥルーナイト』(ショーン・コネリー、リチャード・ギアのアーサー王関連話)でもヒロインを演じています。
ストーリーテラーは、一家に仕える先住民、
主役の名は「トリスタンとイゾルデ」から。
冒頭は、ラドロー家に仕えたアメリカ先住民のスタッブの語りと回想で始まります。(アメリカ先住民は、文字ではなく口頭伝承の文化をもつ。)濃い顔のアップが色々出てきて、誰が誰だか分からなくなるのでご注意。
大河ドラマらしく、子役が出てきて、トリスタンが大人になるまでをサクッと解説しているパートです。
主人公トリスタンの名は、死によって結ばれる悲恋の物語『トリスタンとイゾルデ』に由来しています。
リヒャルト・ワーグナーのオペラとしても、有名ですね。
この作品のストーリーを一言で言うと
「待たせすぎた男と、待てなかった女の生んだ悲劇」です。
↓↓ ここからは、ネタバレありの考察です。 ↓↓
考察①
ネイティブアメリカンの自然観、死生観
「戦士は良い死に方を求める」トリスタンは、幼い時からスタッブに狩りを教わり、ネイティブアメリカンの風習や考え方を受け継いでいます。
見た目は白人ですが、心はネイティブアメリカンなんですね。
これを理解していないと、彼の行動を理解することはできません。
父のウィリアムは、大佐として戦争や先住民虐殺に加担してしまった経験から、白人社会と距離をとり、ネイティブアメリカンと共に自然の中で暮らすことを選んだ人です。
ウィリアムは経験によって、トリスタンは生まれながらに、ネイティブアメリカンの思想が流れているのです。
そのため、父も彼に仕える先住民の人々も、ラドロー家の3兄弟の中で、白人社会に取り込まれず、真っ直ぐに生きるトリスタンを誰よりも愛しています。
そして、ラドロー家にやってきたスザンナも、そんなトリスタンに心を奪われていくのです。
観客にも想像力が必要
異文化遭遇が少ない日本人には、この作品の根底にある思想や、登場人物の行動が理解しにくいかもしれません。
「トリスタンが身勝手だ、スザンナの貞操観念がおかしい」というコメントは、アメリカの内包する歴史や文化を知らなかったり、一部の人間が敷いたルールを疑念なく正しい社会だと思い込む人の、浅はかな感想です。
トリスタンは白人社会の人間ではないので、彼らのルールを守る理由はないんですね。また、そもそも人もほぼいない場所に、若い女性が1人来れば、若い男性たちが取り合うのは自然の摂理です。人よりも家畜の数の方が圧倒的に多い、荒涼としたモンタナの平原。
そこに暮らす家族や男女の在り方は、自分の価値観と同じでしょうか?
考察②
熊=生と死をつかさどる自然
様々な動物が出てきますが、その中でも、熊は特別な存在です。
トリスタンと熊が相見えるシーンが3度出てきますが、最後まで見ると、熊はトリスタンが同化していく「生と死をつかさどる自然」の象徴だとわかります。
『ゴールデンカムイ』(漫画・アニメ・実写映画)を読んだり観たりした人なら、アイヌと熊の関係をイメージするといいと思います。熊の存在を適当にスルーして観てると、映画の結末に、結構ビックリします。ちなみに、私は、トリスタンと熊の関係が、ミュージカル『エリザベート』に出てくるエリザベートとトート(死の化身)に似てると思いました。
絶世の美女と謳われ暗殺されたオーストリア=ハンガリー帝国皇妃エリザベートを元にした話で、少女時代の瀕死の事故をきっかけに黄泉の帝王トートに愛され、悲劇が起きる度に二人は近づき、最後は二人が結ばれるストーリーです。
考察③
トリスタンを美しい獣だと理解すると、ストーリーが見えてくる。
時には人間の振る舞いに深く傷つき、時には荒ぶって襲いかかる、孤高の存在。
彼に近づきすぎた人間は、命を落とします。
ブラピ扮するトリスタンを「美しい獣=自然の化身(=熊)」と考えると、語りべの言葉がスッと入ってくると思いませんか?
私は、父と三兄弟の4人の対比が、とても面白いと感じました。
白人度0%、野性度(ネイティブインディアンの自然観)100%のスタッブを基準として、5人を比較してみましょう。
父ウィリアム:白人度20%野生度80%
元騎兵隊大佐だが、白人社会の利己的で非人道的な在り方に反発して、距離をとって暮らす。先住民虐殺への償いの意味もあって、先住民やその混血の一家を養い、彼らの子に教育を施し、守る。
次男トリスタンを最も愛し、三男サミュエルが戦場に行くのを無意味だと反対、長男アルフレッドが議員に担がれているのも周囲の白人に利用されてるだけだと話す。
長男アルフレッド:白人度60%野性度40%
長男としての責任感が強く、三男に付き添って出兵するが、戦地で足に重傷を負う。街で身を立て、議員になることを父に報告するも、喜ばれずにがっかりする。
社会的な道徳やルールを守って出世するが、最後は白人のご都合主義だと気づき、家族を守る行動に出る。
次男トリスタン:白人度10%野性度90%
幼い時からスタッブ達と狩りをし、熊にも挑み、サバイバル能力が高い次男坊。自然や動物を愛し、ネイティブアメリカンの教えを受け継ぎ、彼らが差別されると命懸けで反抗する。愛する家族が殺されると、インディアンの狩猟法で、復讐を果たす。戦地で弟を守りきれなかった罪悪感と自分の中の凶暴性に苛まれ、世界各地を放浪する旅に出る。
禁酒法が執行される中、酒を密売するなど、しばしば白人社会のルールを無視するため、議会や警察から目の敵にされる。
三男サミュエル:白人度70%野性度30%
ハーバード大での環境に感化されて、政治的発言をするようになる。
スザンナの結婚相手に相応しいと思われたいがため、英国兵士に志願し、案の定、兄のいない隙に戦場に出向いて命を落とす。
スザンナ:白人度40%野性度60%
知的で情熱的なサミュエルの婚約者として現れるが、トリスタンに惹かれる。
モンタナの牧場暮らしには馴染んだが、アルフレッドとの結婚後も、戻ってきたトリスタンへの想いに苛まれる。
自然の中に身を置けば、
世界は180度ちがって見える。
人の自然観も死生観も、身を置く環境によって大きく異なります。
今の私たちの社会は、自然と共存した美しい存在でしょうか?
そんなことを感じながら、モンタナの雄大な自然に想いを馳せ、このドラマを見てほしいです。
Views: 0