🔸内容:
映画評:『断崖』(1941年/アメリカ映画)
監督:アルフレッド・ヒッチコック
『断崖』は、サスペンススリラーとしては評価が低い作品です。主演には、当時人気の美男美女俳優ケイリー・グラントとジョーン・フォンテインが起用されていますが、豪華な配役がかえって裏目に出てしまいました。
作品の概要
物語は、富豪の令嬢リナ(ジョーン・フォンテイン)が、プレイボーイのジョン(ケイリー・グラント)に一目惚れして結婚するところから始まります。しかし、ジョンが無一文であることを知り、次第に彼の不審な行動が気になります。彼女は、ジョンが裏で何かを企んでいるのではないかという疑念を抱くようになり…というストーリーです。
批判のポイント
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リナのキャラクター:
- リナがジョンを無条件に信じ続ける様子が愚かに見え、説得力に欠けることが指摘されています。彼女の疑念はすべて誤解だという解決方法も、観る者に納得感を与えられませんでした。
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ラストシーンの不自然さ:
- 最後には、すべての疑念が解消されてハッピーエンドを迎えるものの、その展開が強引であり、視聴者の期待を裏切る形となっています。ヒッチコック自身もこの結末に不満を持っていたようです。
評価と背景
映画は興行的にも成功し、ジョーン・フォンテインはアカデミー賞主演女優賞を受賞しましたが、その受賞は何らかの裏事情があったのではないかという懸念も残ります。批評家の評価は比較的高いですが、それは「ヒッチコック作品」としての期待や、彼の映画技術によるものかもしれません。このような批評は、映画業界のスター主義や商業主義にも起因していると考えられます。
全体的に見て、アクションや緊張感に欠ける展開が多く、ヒッチコックの名作と呼ぶには厳しい作品と言えるでしょう。ファンとしては、時には厳しい評価をすることも「愛ゆえ」と認識したいものです。
🧠 編集部の見解:
映画『断崖』についての考察
ヒッチコックの『断崖』は、映画史に名を刻む名監督の作品でありながら、何とも評価が難しい作品と言わざるを得ません。ケイリー・グラントとジョーン・フォンテインという美男美女の共演を期待しがちなこの映画が、なぜ「失敗作」として語られるのか。その理由を考えてみたいと思います。
作品の概要とキャラクターの設定
物語は、富豪令嬢リナが固定観念に捉われ、プレイボーイのジョンと結婚することから始まります。結婚後にどうやら彼が一文無しであることを知り、不安が募ります。不審な行動が続く中で、リナが彼に命を狙われているのではないかと懸念する展開が繰り広げられます。このサスペンスフルなプロットは、ヒッチコック特有の緊張感を醸し出していますが、登場人物の動機や感情があまりにも不自然に感じる部分が多く、観る者を困惑させる原因となっています。
感じたこと
特に感じたのは、リナのキャラクターの描き方です。彼女が一途であることは悪いことではありませんが、描写によっては「バカっぽい」という印象が強く、彼女に感情移入ができませんでした。それに対して、ジョンのキャラクターは、最後まで彼を信じ続けるという解決策に至るための「存在」が希薄に感じられました。
あまりの不自然さ
物語の結末も非常に無理があるように感じました。ジョンの行動が全て誤解でまとめられ、リナの疑念が解消されるというラストの展開には、もはやリアリティを感じません。「それで良し」とする展開が、サスペンスを高めるための演出なのか、ただのご都合主義なのか、評価が分かれるところです。
社会的影響とヒッチコックのジレンマ
ヒッチコックは、アメリカ映画界のスター主義の影響を受けたと言われています。主演二人が「悪役」を演じることができなかったため、物語が無理な方向にシフトしてしまったのかもしれません。評論家たちが異常に高評価を付けるのも、業界の力関係が影響しているように思えます。
背景と豆知識
ヒッチコック自身もこの作品の結末には満足しておらず、本来の意図がスタジオの方針によって変えられたという話が最近の研究でも注目されています。映画の制作過程における「商業性」や「スターの安全性」が、アートとしての表現を狭めることになった一例かもしれません。
まとめ
『断崖』は、観る心構えによって評価が分かれる作品です。一方で、これがヒッチコックの実験的試みだったのであれば、その結果は評価に値するのかもしれません。しかし、自分なりに思うことは、ストーリーの整合性が取れていなければ、いかに豪華なキャストでも作品としての完成度には欠ける。ヒッチコックファンであっても、この作品を「名作」とすることには、少し躊躇せざるを得ません。
映画を観ることの楽しみは、ストーリーを通じて何を感じ取るかだと思いますが、時には失敗作に触れることで、監督の苦悩や制作の裏側を感じることができるのもまた一興かもしれません。あなたはどう思いますか?
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映画『断崖』についての評判は、大きく2点で批判されています。1つは、主人公リナがプレイボーイのジョンを信じ続ける姿に説得力が欠け、愚かであるとされている点。もう1つは、全てが誤解で終わる結末が無理に感じられ、サスペンスとしての緊張感が損なわれている点です。ヒッチコック自身も別の終わり方を考えていたとのこと。全体的に、この作品は多くの点で失敗作と評価されています。
キーワード: 失敗作
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