トランプ米大統領が最重要政策課題の一つとして推進する大型減税案に対し、米国債市場の投資家が拒否反応を示しつつある。
米30年債利回りは21日の取引で一時5.1%と、20年ぶり高水準目前まで上昇。これに伴い米株価とドルも下げた。トランプ氏とジョンソン下院議長は同日午後、現行案に反対する共和党の保守強硬派議員とホワイトハウスで会談したが、妥結に至っていない。
関連記事:トランプ氏、税制法案巡り共和党強硬派と会談-反対意見解消されず
投資家にとって米資産の魅力が世界的に低下しつつある状況で、減税案が成立すれば既に大きく膨らんでいる米財政赤字が今後数年間にわたって一段と悪化するとの懸念がある。
DWSアメリカズの債券責任者、ジョージ・カトランボーン氏は「誤解してはならないのは、予算案の条件については債券市場が独自の判断を下すということだ」とし、「大統領も議会も赤字を有為に削減するつもりはないように見受けられる」と話した。
ムーディーズ・レーティングスが16日に米国の信用格付けを最上位から1段階引き下げて以降、米国債への投資家のセンチメントは悪化。21日の20年債入札が低調な結果となり、投資家心理は一段の痛手を被った。
関連記事:米国債売り加速、財政赤字拡大懸念で20年債入札不調-米国株も続落
数週間にわたる債券売りはさらに加速し、連邦債務残高の拡大につながる税制改革法案の議会審議に対し、投資家の幻滅が一層深まっていることが浮き彫りとなった。
米国債相場の下落は、現行案に反対する保守強硬派の共和党下院議員を勢いづけることにもなった。こうした議員の一部は、ホワイトハウスで行われた会談に先立ち、SNSへの投稿で債券の急落とそれが発するメッセージを強調した。
財政規律重視のタカ派リーダー格であるロイ議員はX(旧ツイッター)への投稿で「ひどい国債入札結果」に言及。デービッドソン議員は利回り上昇を指摘した。
全体として、債券投資家は長期債購入のためにこれまでより多くの見返りを求めている。それは米国に限定されず、今週は日本や英国の30年債利回りも大幅に上昇している。
JPモルガン・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、プリヤ・ミスラ氏は「債券市場は当局に対し、財政の持続可能性の問題をあまりにも長く無視することはできないと警告を発している」と論評。「債券市場だけでなく、その懸念がリスク志向全体に影響を及ぼし、株式やクレジット市場も注目している」と語った。
「債券自警団」覚醒
いわゆる「債券自警団」の覚醒は、政府に圧力をかけて歳出削減を促すには、借り入れコストを引き上げるしか手段がないと、十分な数の投資家が判断したことを意味している。このような動きは1993年のクリントン政権初期の米国や、金融危機後の欧州で見られた。
ガルダ・キャピタル・パートナーズのティム・マグヌスン最高投資責任者(CIO)は「市場はいずれにせよこの問題に規律をもたらすだろう」と話す。その上で、メディケア(高齢者・障害者向け医療保険制度)、メディケイド(低所得者向け医療保険)など社会保障の給付金制度改革に取り組まない限り、状況は大きく変わらないと指摘した。
4-5%で推移している現行の米国債利回りは金融危機以前の水準に近い。米国は過去にもこれよりはるかに高い金利を支払っていた時期があるものの、現在の連邦債務残高と財政赤字は桁違いに膨らんでおり、それが決定的な違いとなっている。
米議会予算局(CBO)によれば、米国の公的債務残高は国内総生産(GDP)比100%前後に上り、2024年度は利払い費だけで約8800億ドル(約126兆円)と、国防予算を上回った経緯がある。
投資家の間で高まる懸念は、長年にわたりドルを世界の主要な準備通貨として活用してきた米国に試練を突きつけるものだ。この状況はまた、米国の債務は持続不可能な軌道にあると、ベッセント財務長官が今月の議会証言で示した最悪のシナリオを裏付けてもいる。
ベッセント氏は、いつの時点で金融市場が「反旗を翻す」のかタイミングを「見極めるのは非常に難しい」と述べ、債券自警団の影響力を認識していることも示唆していた。
原題:Bond Market Warns Trump, Congress on Dangers of Swelling Deficit(抜粋)
🧠 編集部の感想:
トランプ大統領の減税案が米国債市場に否定的な影響を与え、利回りが上昇していることは深刻な警告です。財政赤字拡大の懸念が高まる中、投資家たちは米国資産からの離脱を始めているようです。これにより、政府は財政の持続可能性を真剣に考える必要があると感じました。
Views: 0