トランプ大統領がApple製品を関税から除外したのはAppleのティム・クックCEOが商務長官をはじめとする政府高官に直接働きかけたから – GIGAZINE

by Budiey

2025年4月、トランプ政権は中国からの輸入品に対する大規模な関税強化を進める中で、一部電子機器に対する関税の適用除外を発表しました。この決定の背景には、iPhoneやMacなどを中国で生産するAppleのティム・クックCEOによる働きかけがあったと報じられています。

How Apple’s Tim Cook navigated out of Trump’s tariffs on China — for now – The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/business/2025/04/17/apple-iphone-tariff-exemption-trump/

Report: How Tim Cook helped Apple avoid Trump’s tariffs – 9to5Mac
https://9to5mac.com/2025/04/17/tim-cook-trump-tariffs/

Cook call helped Trump introduce tariff exemptions helping Apple
https://appleinsider.com/articles/25/04/17/a-call-from-tim-cook-helped-convince-trump-to-introduce-tariff-exemptions

アメリカ日刊紙のThe Washington Postによれば、クックCEOはハワード・ラトニック商務長官に直接電話をかけ、関税がiPhone価格に与える影響について懸念を伝えたとのこと。クックCEOはホワイトハウスの他の高官とも連絡を取り、状況の深刻さを説明したとされています。

The Washington Postは「クックCEOが他の企業経営者と異なり、トランプ大統領やその政策を公に批判しなかった点」に注目し、他のCEOがテレビなどで政権批判を展開する中、クックCEOが沈黙と直接交渉という静かなアプローチを貫いたことが功を奏したとしています。

by iphonedigital

また、クックCEOは以前からトランプ大統領と一対一の夕食会を開くなどして個人的な関係を築いており、大統領就任式に対して100万ドル(約1億4500万円)以上の寄付を行っていたことも報じられています。こうした政治的接近も含めて、クックCEOのロビー活動は戦略的かつ巧妙であったとThe Washington Postは評しています。

1.5億円超をAppleのティム・クックCEOがトランプの大統領就任式に寄付 – GIGAZINE

この一連の対応により、トランプ政権はAppleが中国で製造する電子製品を関税の対象から一時的に除外する措置を取りました。ただし、政権内ではピーター・ナヴァロ補佐官が一時除外に強く反対していたことも明らかになっており、クックCEOの働きかけが大きな影響を持っていたことが示唆されます。

by Palazzo Chigi

関税の除外は一時的措置であり、今後の半導体関連の調査次第で状況が変わる可能性はありますが、今回の判断によりAppleの株価は一時的に上昇し、他のテック企業も同様の恩恵を受けています。トランプ政権はこの措置が特定企業への優遇ではないと主張し、「戦略的かつ精緻な対中政策の一環」としていますが、この特例措置がAppleだけに有利に働いているという批判もあります。実際、新たに設定された7つの関税品目は、Appleの製品にほぼ完全に合致するものであり、他の企業が同様の救済を得ることは難しい状況です。

こうした政治的ロビー活動が中小企業やイノベーションに与える悪影響については、専門家から懸念の声も上がっています。

アメリカン・エンタープライズ研究所の経済学者であるマイケル・ストレイン氏は、「企業が関税の影響から逃れるために、技術革新ではなく政治ロビー活動に時間と資源を費やすようになることが問題だ」と述べています。さらに、元バイデン政権の通商担当官で経済コンサルタントであるアレックス・ジャクェズ氏は、「混乱を抜け出す唯一の方法が『金を払う』ことになっているのは異常であり、一方で中小企業や資金力の乏しい製造業者は同様の待遇を得るすべがなく、やがて倒れていく」と批判しています。