夏は涼しく、冬は暖かく。首もとに装着して、心地よい冷温感が得られるソニーのウェアラブルサーモデバイスに新しい「REON POCKET PRO(レオンポケット プロ)」が加わりました。パワフルな冷却効果が長続きする、REON POCKETシリーズのハイエンドモデルを発売に先駆けてさっそく試しました。従来モデルとの違いや、PROをおすすめしたいユーザーについて、筆者の体験に基づくインプレッションを交えながら解説します。
風ではなく肌に触れて直接「冷やす」「温める」
REON POCKET(レオンポケット)は後頭部側の首もとに装着して、接触する体表面を冷やしたり、温めることで冷温感を得るウェアラブルデバイスです。ハンディファンやファン付きウェアのように風を巻き起こして冷温感を伝えるデバイスではありませんが、その効果をわかりやすく伝えるために筆者もレオンポケットのことを“着るエアコン”に例えたりもします。
レオンポケットは電圧をかけることで発熱/吸熱(冷却)する「ペルチェ素子」という電子部品を内蔵しています。冷感を生み出す際には、このペルチェ素子を組み込んだ部位を肌にあてて、反対側から発する熱を逃がします。
ペルチェ素子に電圧をかけ続けると本体の内部に熱がこもってくるので、これを逃がすためレオンポケットには放熱ファンが組み込まれています。このファンはパワフルでありながらとても薄型なので、レオンポケットの本体もスリムでコンパクトです。衣服の下に装着していても目立たないうえ、ファンの動作音がとても静かなので、周りに奇異な目で見られる心配がありません。
クラウドファンディングによる提供を経て、2020年に第1号機が商品化されたレオンポケットはその後も毎年進化を重ねてきました。レオンポケットを開発するソニーサーモテクノロジーが2024年4月に発売した「REON POCKET 5」がこれまでの最新モデル。そして今回5月20日に発売されるREON POCKET PROは上位モデルに位置付けられ、REON POCKET 5と併売されます。
新しいREON POCKET PROは専用の外付けセンサー「REON POCKET TAG」の有無が異なる2つの商品パッケージを展開します。価格はオープンですが、本体+ネックバンド+タグが揃うキット「RNPK-P1T」の市場想定価格は29,700円前後です。
5月時点では、オンラインのソニーストアで販売されている従来モデルREON POCKET 5(本体+ネックバンド+タグ)の直販価格は19,800円です。
どちらのモデルも、レオンポケットにタグを組み合わせると、複数のセンサーにより気温/湿度、衣服の内部も含む使用環境をリアルタイムにセンシングしながら、より適切な冷温感が得られます。2023年発売のREON POCKET 4から採用する専用アクセサリーですが、ぜひ試してみることをおすすめします。
タグには直射日光を検知する機能があります。エアコンをかけて室温を心地よい具合に設定しているはずなのに、窓の近くにいるとものすごく暑く感じる場合があります。まずは直射日光を避けることが先決ですが、レオンポケットとタグのコンビがあれば快適に過ごせる環境が広がります。
このタグは常時1台のレオンポケットとペアリングして使うデバイスですが、従来のレオンポケットと新しいPROとの間で使い回せます。レオンポケットの買い替えまたは買い足しを検討している方は、PROの本体とネックバンドだけのセット「RNPK-P1」も選べます。こちらの市場想定価格は27,500円前後です。
併売される従来の「5」と新しい「PRO」の違い
REON POCKET PRO(プロ)の特徴を明確にするため、現行モデルのREON POCKET 5(ファイブ)との「違い」を比べてみます。ただ、2つの製品はそれぞれの持ち味があり、おすすめする対象ユーザー像も違うことを、あらかじめお断りしておきます。
プロの特徴をひとことでいえば「よりパワフルなレオンポケット」です。その代わりに本体サイズも大きめなので、筆者はより軽くコンパクトなレオンポケットが欲しい方にはファイブをおすすめします。ユーザーが目的に応じて選べるレオンポケットのバリエーションが広がったことが今年のビッグニュースなのです。
以上を踏まえて、プロとファイブの違いをまとめると大きく3点になります。
【1】冷温部面積は約2倍:フィット感が向上
1つは冷温部の面積が2倍になりました。首もとの「ぴったりフィット感」がものすごく向上しています。本体が「く」の字の形状になっていて、肌に触れる側の上下に冷温効果を生むペルチェ素子を1基ずつ独立配置しています。2つのペルチェ素子は本機専用に設計されたモジュールです。ペルチェ素子の冷却強度はファイブと変わっていないものの、互い違いに強弱を付けながら動かすことで冷温感が長続きします。ソニーサーモテクノロジーではこの新しい構造を「DUALサーモモジュール」と呼んでいます。
レオンポケットでは冷感モードで動いている時に、皮膚に触れている箇所の温度を計測しながら、20℃を下回って冷たくなりすぎないように吸熱効果を常時調節しています。加えて、人の皮膚は冷温感に慣れてしまうことで、冷たさ/温かさを感じなくなるものです。そのためプロではDUALサーモモジュールを1基ずつ交互に動かしながら「慣れ」を防ぎ、冷温効果を長続きさせる技術を採り入れています。
【2】強力な放熱ファンを搭載:冷たさ長持ち
駆動時に熱を帯びてくるペルチェ素子を冷却するため、本体には1基の放熱ファンを搭載しています。プロの放熱ファンを大きくしたことで、ファイブに対して風量は約2倍になりました。これが2つめの大きな違いです。
放熱ファンの最適化とともに、ペルチェ素子の熱をより効率よく逃がすため「く」の字に成型した板型のベイパーチャンバーも搭載しています。本体のボトム側から給気して、トップから排気/排熱する構造は現行モデルのファイブから変えていません。ファンの強化に伴ってヒートシンクも大型化しています。
襟つきのジャケットやシャツを羽織った状態でも排気孔が詰まらないよう、スリットの先端を延長する「エアフローパーツ」は、着脱交換可能な2サイズのパーツを同梱しています。
要所の最適化を図ったことで、プロの動作時ノイズはファイブ比で約50%も低くなりました。筆者は最初にプロを試した時に、あまりに静かなので電源を入れ忘れたかと思ったほどです。オフィスやカフェで使用しても、おそらくはファンノイズで周囲に迷惑をかけることはなさそうです。
【3】大型バッテリー内蔵:連続動作時間が拡大
そして3つめとして、内蔵バッテリーのグレードアップを図ったことが連続動作時間の飛躍につながりました。冷却レベルが最も穏やかな「レベル1」でプロは約34時間(ファイブは約17時間)、全5段階で2番目に強力な「レベル4」でプロは約10時間(ファイブは約7.5時間)の連続動作に対応します。
安全のため、冷温いずれのモードでも連続使用を一時停止(COOLが15時間、WARMは8時間)する仕様ですが、スタンドアロン動作で「より長く使えるレオンポケット」は、暑さ/寒さが厳しい時期にも長時間の屋外作業に従事する方にとって頼もしいウェアラブルデバイスです。
プロの強力冷感を体験! 装着感は?
筆者は発売に先駆けて、5月初旬ごろからREON POCKET PROの実機を体験してきました。5月の東京は晴天の日には最高気温が25℃を超えたり、雨の日には風も強く吹き、少し厚手のコートがないと肌寒くなったり、気候がめまぐるしく入れ替わりました。REON POCKET TAGを揃えて、アプリから「SMART COOL←→WARM」モードを選ぶと、冷感/温感ともにアプリから設定した「温度の好み」に合わせて常時“いい感じ”に自動調節してくれるので頼りになりました。
REON POCKET TAGが計測した周辺温度に合わせて、COOL/WARMモードを、自動でオンまたはオフする機能があります。周辺温度がそれぞれの中間(暑くも寒くもない)だった場合、動作を一時停止して省エネモードに入るので、バッテリーを無駄に消費する心配が減ります。
動作音がとても静かなことと、バッテリーが従来サイズのレオンポケットよりも格段に長持ちすることは、2週間ほど試してみて実感がありました。特に動作音がとても静かなので、公共の場でも周りを気にせずに使えるのがよいです。
気になる「プロの装着感」も報告します。
REON POCKET PROはパッケージに同梱する専用ネックバンドを装着して使うウェアラブルデバイスです。従来のレオンポケット専用ネックバンドは本体をトレイに乗せて固定するような形状でした。プロの専用ネックバンドは本体に直接着脱します。
バンドの中軸にはフレキシブルに曲がるワイヤーフレームがあり、その周囲をメカニカルフレキシブルチューブで覆い、さらにその上を肌触りのよいシリコンで被覆しています。先端部が鎖骨に触れて痛みが出ないようにバンドサポーターも装着しています。
「く」の字形状の本体と、首や肩のラインに沿ってフィットするバンドが相まって、REON POCKET PROは身体とかなり密着しました。冷温効果が最大化されるだけでなく、本体とバンドのセットで250g前後になる重さの負担がほぼ感じられなくなります。ただし、バンドを曲げ伸ばししながらベストフィットを得るためには、使い始めの頃にちょっとしたコツをつかむ必要があります。筆者は「鎖骨の手前でバンドの向きを変える」ところがポイントだと思うのですが、なかなか言葉だけで説明しづらいものがあります。レオンポケット公式サイトのサポートページに、専用ネックバンドの取り回しを紹介するムービーが公開されているので参考にしてください。
モバイルアプリだけでなく本体ボタンからも操作可能
レオンポケットは設定や操作に専用のモバイルアプリ「REON POCKET」を使います。さらにREON POCKET PROは本体側面に操作ボタンがあります。電源のほか、冷感/温感モードの切り替え、冷温強度のアップダウンなど基本操作がアプリなしで行なえます。厚手の手袋などを装着したままでも押し込める物理ボタンです。
レオンポケットはアプリからスマート動作モードを選択すれば、基本的にはユーザーが好む温度設定に合わせて最適な冷温バランスに自動調節してくれます。着脱時に電源のオンとオフを自動で切り替えるAUTO START/STOP機能もあります。それでもやはり、スマホを取り出さずにボタンで操作できるのは快適でした。
プロとファイブは同じアプリを使います。プロじゃないと使えない機能は特にありません。プロの発売に伴って実施されたアプリのアップデートから、ペルチェ素子を停止させて放熱ファンだけを動かす「ファン操作」と、ユーザーの好みに合わせて冷感/温感/オフを繰り返し動作させながら、バッテリーの消費も抑える「MY MODE操作」の機能一式が(ゴルフモードも)省略されました。
なお、アプリのアップデート後もファイブについては以下の機能が残ります。いいかえれば、これらが「ファイブじゃないと使えない機能」です。
・本体のボタン操作による「クイック起動」時のふるまいをアプリから設定する機能
・冷却レベルをマニュアルで設定後、自動的に冷却の強さを上下する「WAVE MODE」
・COOLモードの「レベル5+」(PROはレベル5でも十分な冷却パフォーマンスが得られるため)
夏本番に向けて、暑さ対策の一つに
レオンポケット本体のほか、専用ケース「RNPC-P1」も同日に発売されます。価格はオープンで、市場想定価格は3,300円前後。このケースにはタグ、充電用のUSBケーブルにエアフローパーツなど一式を格納できます。使わない時に本体を保護しながら持ち歩けて、必要なパーツもすぐ取り出せることもあって、レオンポケットをバッグの中に入れて持ち歩く時に必携のアイテムです。
ソニーサーモテクノロジーでは、レオンポケットを気温35℃以上の環境下で長い時間使うことを推奨していませんが、一方で近年、日本の猛暑は過酷さを増すばかり。短い時間でも、真夏に屋外を歩いているだけで体調を崩しかねません。服装による調整、水分補給など対策を立てながら、2025年の猛暑を乗り越えるためにREON POCKET PROを役立てるとよさそうです。
これからさらに暑い日が続いた時に「プロのパワフルな冷却力」がどれくらい本領発揮するかについては、あらためて夏本番に近い環境から体験レポートをお届けしたいと思います。
🧠 編集部の感想:
ソニーの新しい「REON POCKET PRO」が登場し、冷感パワーが2倍になったのは非常に魅力的です。肌に直接触れることで、従来のファン式と異なる快適さを提供する点が新しい試みとして評価できます。これからの暑い季節に向けて、実際の効果が楽しみです。
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