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概要
この記事では、Antônio Carlos Jobimが作曲したボサノバの名曲「Once I Loved (O Amor Em Paz)」について解説されています。この曲は、その哀愁漂うメロディとシンプルな歌詞によって、ジャズやボサノバのセッションで定番の一曲となっています。様々なアーティストによるバージョンも取り上げられ、曲の魅力や表現の幅についても考察されています。
要約ポイント
- 曲の紹介: 「Once I Loved」はJobim作のボサノバ曲で、英語詞が付けられている。
- メロディの特徴: 覚えやすく、哀愁のあるメロディが特徴で、ゆったりしたテンポが似合う。
- Jobimの背景: ジャズの巨匠で、ピアノを主に演奏することが多い点が強調されている。
- João Gilbertoとの比較: ギター奏法の確立に寄与し、ボサノバのスタイルに影響を与えた。
- Astrud Gilbertoの影響: 独特な歌唱法がボサノバのスタイルの模範とされ、多くのアーティストに影響を与えた。
- 歌詞の内容: 過去の愛と別れの思い出を描写する簡潔な言葉で構成されている。
- 異なるバージョン: 様々なアーティストによる録音が紹介され、各自のスタイルの違いが楽しめる。
- バージョン例: Ella Fitzgerald、Dianne Reevesなどのカバーが紹介され、アレンジの幅広さが強調された。
この記事は、名曲の深い理解とその多様性を求める音楽ファンにとって貴重な情報源となっています。
ジャズ/ボサノバ・セッションの定番曲。Antônio Carlos Jobimが作った曲に英詞を付けたもの。覚えやすい、哀愁のあるメロディです。歌詞の内容からするとゆったりしたテンポが似合います。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Antônio Carlos Jobim
1963年録音、名曲名演揃いのアルバムから。ジャケット写真などから勘違いしている人も多いですが、彼の第一楽器はピアノのようです。もちろんギターも弾けるし、フルートも得意ですが。後述のJoão Gilbertoとイメージがごっちゃになっているのかもしれません。ここでも優雅なストリングスをバックに淡々としたピアノ演奏が聴けます。
こちらは1967年録音のFrank Sinatraとの共演盤。ボサノバを歌うシナトラはいつも通り(門外漢という感じで)可もなく不可もなくという出来。
ポイント2:João Gilberto
1961年録音。こちらの方が早いタイミングでの録音だったようです。サンバの様々な打楽器のパターンを一本のギターで再現する「ボサノバ・ギター」奏法を確立させた人。ポルトガル語で朴訥に歌うスタイルも本来のボサノバ(新しい傾向)のもの。
ポイント3:Astrud Gilberto
1965年録音。囁くようなヘタウマ唱法で世界を席巻したAstrud Gilberto。夫のJoãoのお供で渡米して、英語が使えたことから録音に参加して、彼女のスタイルが米国では人気になりました。当時の米国のポピュラー歌手と比べると「クール」というか感情移入の少ない歌い方で、なんだか異国情緒があったのだと思います。
こういう発声や歌い方が「ボサノバっぽい」として参考にする人が日本でも多いですね。声量が無く声域が狭くても、マイクを上手く使えばこういうスタイルは真似出来るので。いわゆる「歌ウマ」さんとは異なるスタイル。
この曲でいうと、時の経過がどうもアッサリ歌われていて、ストーリーをあまり感じないのがもったいないとも思うのですが、どうなんでしょう?
ポイント4:歌詞のポイント
Once I loved
And I gave so much love to this love
You were the world to me
かつて愛したことの記憶。
「You were the world」は「あなたは私にとってのすべて(だった)」という感じ。
Once I cried at the thought
I was foolish and proud
And let you say goodbye
かつて泣いてしまったことの記憶。
自分の愚かさとプライドのせいで相手に「さよなら」を言わせてしまった。
Then one day from my infinite sadness
You came and brought me love again
でも、その深い悲しみを知ってか、相手は戻ってきてくれたようです。
Now I know, that no matter, whatever befalls
I’ll never let you go
もうあなたを放しはしない、と。
I will hold you close
Make you stay
Because love is the saddest thing
When it goes away
二度とこの愛を失いたくない、と。
という時の流れ、ふたりの関係の流れがシンプルな言葉で綴られています。なんか都合よく、単純に物語が進行してしまっていますが、英詞としての深みは無いなぁ。これがボサノバのリズムにのって歌われるから、なんとか聴けるものになるのかもしれません。
A 16小節を2回、B 12小節 という構成です。Aパートは高音から入っていって最後が低音で終わり、Bパートは終始低音が続く、という曲の終盤に掛けての盛り上げが難しいメロディ構成です。だから呟くように歌うボサノバならではというスタイルが合うのかもしれませんが。
ポイント5:様々なバリュエーションを聴いてみましょう
Ella Fitzgerald, Joe Pass、1974年録音
バラードにして歌い上げることでストーリーを語るスタイル。
Dianne Reeves、2008年録音
歌ウマさんの彼女は後テーマをオクターブ上で歌うことで最後の盛り上がりを作っています。
Woong San、2010年録音
息多めの囁くような唱法でも声に厚みがあるので、安定して聴こえます。歌というよりはセリフに聴こえる箇所も。
Chrissie Hynde、2019年録音
The Pretendersのクリッシー姉さんもソロでは様々なスタイルで歌っています。
Cedar Walton、1992年録音
Joe Henderson、1994年録音
メロディアスで味のあるソロを吹いています。
Pat Martino、2006年録音
こういう曲のインストってBGMっぽくなりがちですが、リズムにのったソロパートはスピード感があって素敵です。
The Tony Williams Lifetime (John McLaughlin, Jack Bruce, Larry Young)、1970年録音
珍品。謎の長いイントロの後、Tony Williams自身がヘタウマな歌を歌っています。ジャズというよりは電子音を使った実験作で、なぜこの曲をカバーしたのか謎です。
Jack Bruceもこの時期はジャズミュージシャンと共演したり、ハードロックに戻ってきたり、謎のムーブを繰り返していました。Carla Bleyと組んでいたことも。
◼️歌詞
Once I loved
And I gave so much love to this love
You were the world to me
Once I cried at the thought
I was foolish and proud
And let you say goodbye
Then one day from my infinite sadness
You came and brought me love again
Now I know, that no matter, whatever befalls
I’ll never let you go
I will hold you close
Make you stay
Because love is the saddest thing
When it goes away
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ポルトガル語歌詞
Eu amei
E amei ai de mim muito mais
Do que devia amar
E chorei
Ao sentir que iria sofrer
E me desesperar
Foi então
Que da minha infinita tristeza
Aconteceu você
A razão de viver
E de amar em paz
E não sofrer mais
Nunca mais
Porque o amor
É a coisa mais triste
Quando se desfaz
O amor é a coisa mais triste
Quando se defazv
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